誤報-2

 死体が転がり出た事で番組は放送中止となり、別の番組が急遽差し替えられる事になった。

 そして、すぐに警視庁本部から刑事が派遣されてきた。

「はい。ごくろうさん。ごくろうさん」

 警視庁捜査一課命捜班・第一班の班長である一川ひとつかわ警部が先に臨場した刑事達に挨拶しながら現場に入る。

「新年あけましておめでとうございます」

 長四郎はお辞儀しながら、新年の挨拶をする。

「明けましておめでとう。長さんも新年早々大変やったね」

 一川警部は長四郎にそう声を掛けながら、倒れているご遺体に手を合わせる。

「ホントですよ」燐が真っ先に答えた。

「ラモちゃんもおっとるとね。はぁ~ トラブルメーカーは健在やねぇ~」

「どう意味です?」燐が一川警部に詰め寄るのだが、長四郎が間に入り「一川さん。スタッフが客を帰そうとしたので、体調不良で病院送りの人以外は留まるよう指示しておいたので」と事件が起きてからの経過報告をした。

「ありがとう。時期に絢ちゃんもくるけん」

「絢ちゃんも可哀想だな」

 長四郎はこれから来る一川警部の絢巡査長の身を案じる。

「で、こん人は誰なの?」

「それなんですがね。どうも、ここの局のプロデューサーっていうのは分かったんですけどね」

「なんか含みのある言い方やね」

「一川さん、知っていますか?」

「ニュースの目玉って番組」燐は長四郎の台詞を奪う。

「知っとうよ。バカにせんといて」

「それは申し訳ございません。じゃ、話を続けますね。このプロデューサーさん、今話題のテレビ局スキャンダルの渦中にあった人とのことで」

「今話題のテレビ局スキャンダル?」

「一川さん、知らないんですか? 局アナをホステスみたいに食事会へアテンダントしていたっていうアレですよ」

「ああ、ネットニュースで見たばい。あれ、ホントなの?」

「らしいですよ。この番組のスタッフから聞きましたから」

「へぇ~ そこまで調べとうとは感心やね」

「ありがとうございます」褒められている長四郎ではなく横に突っ立ている燐がお礼の言葉を述べる。

「長さんはこん事件をどう推理しとうと?」

「どうって言われても・・・・・・」

「私はネットニュースが事件の発端となったと踏んでいます」

「あそ」

 一川警部は素っ気ない返事をしてその場から去っていった。

「何、あの人ぉ~」

「ラモちゃん。正月休み返上して臨場してんだ。不機嫌にもなるよ」

 長四郎は一川警部に同情しながら、燐を宥める。

「これからどうする?」

「どうするも何も、帰るよ」

「帰らないし。捜査するし」

「頑張れよ」

 長四郎は燐を鼓舞しスタジオを出ようとするが、抵抗する間もなく首根っこを掴まれ引きずられながら捜査に駆り出されるのだった。

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