御祭-14

 長四郎、燐、明野巡査の三人は変蛇内高校に戻った。

「ねぇ、なんで行って帰ってくるの? 疲れるし。無駄足だし。バカなの?」

 燐は辛辣な言葉を長四郎にぶつける。

「そうです。私はバカなんです。なので、関わらなくて結構です」

「どうして、そうひねくれた事しか言えない訳?」

「それはなぁ、中学時代の担任の先生から「君は、天邪鬼」って言われた男だからな!!」

「うわぁ~ 面倒くさい生徒だったんだぁ~ 担任の先生可哀想」

 燐のその一言に「お前が言うな」と心の中で思う長四郎と明野巡査。

「あの喧嘩ばかりしないで、捜査しないと」

 明野巡査の発言を受け「良いこと言うねぇ~ 泉ちゃんに三千点」と長四郎は明野巡査に三千点を与えた。

「何が、三千点なの?」意味が分からず、燐に助けを求める。

「大丈夫。私も分かっていないから」

 女子二人からの冷ややかな視線を受けた長四郎は、咳払いをして気を取り直す。

「良いか? お二人さん。これから俺の言った通りの事を調べて欲しい」

「調べて欲しい事?」

「そう。ラモちゃんは、学校に国巳君が来ていないかの捜索。泉ちゃんは、あのロッカー周辺で国巳に繋がりそうな物を捜して」

「国巳に繋がりそうな物って・・・・・・」

「言い方が曖昧なんだよ。こう、具体的なのをさ」

 困り顔の明野巡査を見て燐が助け舟を出す。

「そんなもんは自分で答えを見つけろ。というしかないな」

「何、それ」

「だって、事件解決に繋がる物が分からないんだから。どう言ったって、意味のないもんだよ」

「そ、そうかも知れないけど。てか、あんたは何するの?」

「俺? 俺は、あそこに居るから」

 長四郎は灯りの点いた体育館を指さした。

「体育館? なんか、あるの?」

「ラモちゃんこそバカなんじゃない?」

「何を!?」

 今にも殴りかかろうとする燐を羽交い締めにして、明野巡査は止める。

「ラモちゃん。落ち着いて」

「落ち着いてます」

「取り敢えず、俺は保護者会に潜入するから。後は、宜しく!!」

 長四郎は燐達から逃げるように体育館へと入って行った。

「何なの? あいつ。マジで今度絞めあげてやるからな!!」燐は自身の掌に拳をパンッと叩き付ける。

「ラモちゃん。腐っていないで行動するよ!!」

「はい!!!」

 燐は明野巡査に𠮟咤され、気合を入れて長四郎から言われた事を実行し始める。

 明野巡査はホッバーを使う生徒が利用していたとされるロッカーのある廊下へと場所を移した。

「事件に繋がりそうな物・・・・・・」

 明野巡査は何度もこの言葉を呟きながら、長四郎に言われた事件に繋がりそうな物を目を見開いて捜す。

 だが、そういっても簡単に見つかるものでもなく長四郎が指示したことに意味はあるのか? そんな疑念に駆られる明野巡査。

「泉ちゃ~ん」

 燐が呼ぶ声がし、振り向くと10m程離れた距離に居る燐は防犯カメラを指さしていた。

「これ、これに映っているんじゃない?」

「え? 何が?」

「だからさ、国巳」

「でも、ホッバーを利用している生徒だったら、映っているから。国巳君が映っていてもホッバーとは無関係って事になるでしょ?」

「そうかもだけど。でも、ホッバーの開発者かもしれないんだよ。だからさ、ここに入れられた物を本人が受け取りに来てるかもだし。映っている頻度も多いんじゃないかな?」

「それもそうね。職員室に先生居るかな?」

「行ってみよう」

 そう言う燐に続いて職員室へと向かった。

「失礼しまぁ~す」

 明野巡査は職員室を覗くように顔を出す。

 すると、暇そうにしていた浜屋が椅子から立ち上がり「何でしょうか?」と用件を聞いてくる。

「あの、私、駅前の交番に勤務している泉と申します」と警察手帳を提示し、「お願いがあありまして。防犯カメラの映像を見せて頂けないでしょうか」そう用件を伝える。

「防犯カメラ映像ですか? これまた、なんで」

「事件を解決する為でしょ」明野巡査の後ろに立つ燐が言った。

「羅猛! お前、何してるんだ! もしかして、ご迷惑を?」

「いえ、迷惑なんて」明野巡査はすぐに首を横に振って否定する。

「学校一の問題児ですから、そんなはずはないです」と浜屋は折れない。

「本当に、寧ろ私の方が助けられているくらいで」

 少し恥ずかしそうに言う明野巡査を訝しい目で見る浜屋。

「なんでも、良いから。早く見せてよ。先生」

「なんでも良くない。お前は普段の生活からしてだなぁ~」

「あの!!」

 明野巡査が急に声を荒げるので浜屋はビックリしたような顔をする。

「早く見せて頂けませんでしょうか?」引きつった笑顔で頼みと「こ、校長に確認してきますぅ~」と浜屋は大急ぎで職員室を出ていった。

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