行方-15
長四郎は再度、池袋駅へと訪れ情報収集をして次に向かったのはサンシャインシティビルにあるハローワークであった。
受付を済ませて、ベンチシートに座って呼ばれるのを待っていると五分程で呼ばれた。
「どうも、宜しくお願いします」
長四郎は担当者に挨拶し、席に座る。
「どうも、担当させて頂きます
音納は名刺を長四郎に渡し、「今日はお仕事を探されているということで宜しいでしょうか?」と本題を尋ねてきた。
「はい。そうです」長四郎は素直に答えた。
「どのような職種をご希望ですか?」
「そうですねぇ~ 配達系の仕事で」
こう答えるのには、理由があった。
ハローワークを訪れる前、池袋駅でホームレスからイヴ・ウィンガードが斡旋していた仕事の情報がないかを聞き込みしていた。その時、興味深い情報が聞けた。
「ここ最近、見かける奴が減った」そう話してくれたのは
「見かける奴が減った? どういう事ですか?」
「冬になるとよぉ、寒いからここら辺に寝床を作るんだよ。で、良い寝床を確保するのに争奪戦みたいなのが起きるんだが、今年はそういった事は無くてな。そう顔ぶれが変わるわけでもないから見かける顔が居ねぇんだ」
「そうですか。考えられる理由ってありますか?」
「あるな。サンシャインに職安があるんだが、そこで割のいい仕事があるって言っていたガキが居たんだけどな」
「そのガキも見なくなった」長四郎の問いにうんと頷く鉾さん。
「多分、仕事に着いたんじゃないかなと思うんだけど」
「鉾さんはその仕事しないんですか?」
「しないね。何させらるのか分からんし、こういう世界に居るとな。分かるんだよ。危ない仕事かどうかってな」
「鉾さん。その仕事内容について教えてくれませんか?」
「俺はそこまで知らねぇんだ。あいつに聞けば分かるんじゃないか?」
「あいつというのは?」
「ポムって奴が東口の方に居るから。そいつに聞けば分かるよ」
「色々とありがとうございました」
長四郎は謝礼の金を鉾さんに渡して、ポムと呼ばれるホームレスを探すため東口の方に移動した。
東口周辺に居るホームレスに片っ端から声を掛け、十人目の手前九人目でポムと出会うことができた。
「ポムさんですか?」
「そうだが? あんたは?」
「探偵をしております。熱海と申します」
「探偵が何の用?」
「とある事件を追っていまして。職安で斡旋している好条件の仕事について知っていると鉾さんから聞きまして。お話、聞かせて貰えませんか?」
「そういうことなら、良いよ」ポムは快く承諾してくれた。
「その仕事内容ってどういった物なんですか?」
「表向きは配送業って事になっているが、運び屋だな」
「運び屋。って事は、麻薬ですかね?」
「流石は探偵さん。その通りだよ。麻薬の運び屋をさせられるんだが、その任に付いたものは殺される」
「何でそのこと知っているんですか?」
「新聞は色んな方法で目を通せるからな。そこで、知るんだ」
「成程。で、職安でなんて言えばその仕事紹介してもらえますかね?」
「なんて言えばは間違っている。担当者が大事なんだ。その仕事に就くにはその担当者から紹介してもらうしかない」
「担当者名って分かります?」
「音納だ。で、そいつにこう言え配送業で仕事を探しているってな」
「配送業の仕事ですね。あ~ 今、どこも求人していませんね」音納は申し訳なさそうに伝えると「そうですか。参ったな。早急に仕事を見つけないとヤバいんですよね」長四郎は迫真の困った顔をする。因みに、このフレーズもポムさんから教えられた事の一つだ。
「でしたら、特別に紹介できない事もないですよ。但し、何があっても私の名前を出さないというのが条件ですが」
「宜しくお願いします」長四郎は深々と頭を下げて頼むその顔は、ラッキーという言葉が顔に書かれた笑みを浮かべていた。
「でしたら、今晩から仕事はございますので、時間になったらここに来てください」
音納はメモ用紙に、時間と集合場所を書き記し長四郎に手渡した。
「ありがとうございました!」
長四郎は恩に着るという演技をして、そそくさとハローワークを後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます