能力-6
絢巡査長は所轄署の刑事達を率いて都帝大学の校門を潜り抜けた。
「では、共有した写真を片っ端から生徒や職員に見せて目撃情報を得てください」
『はい!!!』所轄署刑事達の野太い声が校内を駆け巡る。
そして、刑事達は自分の仕事に取り掛かる。
その頃、長四郎達三人は水川教授が転落した舞台の上に立っていた。
「ここで何するの?」燐は目的を質問する。
「そうだなぁ~何しようか?」
「何も考えずにここに来たの?」
「うんっ!!」
長四郎の即答に燐は後ずさりしながら聞いた事を後悔する。
「長さんはさ、超能力で殺されたそう思うとうと?」
「そんな訳ないでしょう。あの話聞いてガバガバだなと思いませんでしたか? 一川さん」
「まぁ、思ったけど」
「それじゃあ、ここにそのトリックがあるから調べに来たって事?」
「ラモちゃん、それは違うよ。だって、ほら。科捜研の女が」
長四郎は上を指すと、上の歩道で科捜研の女性職員が事件の痕跡がないか調べていた。
「じゃあ、私達は何を?」
「うん? 何だろうね?」長四郎は相も変わらず、適当な返事する。
そんな態度の長四郎に苛立ちを隠せない燐。
すると、上で調査していた女性職員が「あった!!!」そう声を上げた。
「何か発見したようだ」
長四郎は嬉しそうに燐を見た。
女性職員が何かを発見してから5分が経った頃、女性職員は長四郎達が居る舞台に降りてきて報告した。
「科捜研の
「やっぱり」最初に反応したのは長四郎だった。
「これを見てください」木崎はタブレット端末の写真アプリで歩道の柵を撮影した写真を見せる。
暗くてよく分かっていなかったが、写真では柵が大きく歪んでいた。
「詳しくはもう少し検証をしてみないと分かりませんが、この歪んでいる部分に紐を括り付けられ身体は宙吊りなっていたのではないかと」
「じゃあ、超能力なんて噓なんだ」燐がボソッと言った事に、紀坂は目を輝かせ食いついた。
「超能力というのはどういうことですか?」
「サイキック木馬が自分が超能力で殺して、ここに転送して来たって言っていたんで」
「それは本当なんですか? 一川警部!!」
「ま、まぁ」
一川警部は紀坂のテンションにタジタジになりながら、返答する。
そこから紀坂の質問攻めに苦しむ一川警部。
「ねぇ、あの人変わっていない?」燐が長四郎にそう話しかける長四郎は返事もせずに舞台から飛び降り最前列の席に座り、舞台を見る。
「ちょっと、私の話は無視!?」
燐も後を追うように舞台から飛び降りると長四郎は「あ、パンツ見えた」とだけ言った。
勿論、燐に蹴りを浴びせられる長四郎だった。
「変態っ!!」
「ふっ、男は皆、変態よ。女子高生」
「なっ!?」悪びれる様子もない長四郎にもう一発お見舞いしてやろうかと思っていると長四郎は立ち上がり「ラモちゃんはどこに座っていた?」と質問した。
「え~っと、ここ」
燐は指をさして教えると長四郎は燐が座っていた席に座り舞台を見始めた。
「ラモちゃん、覚えている限りで良いから演者がどこに立っていたのか、カメラはどこに設置していたのか教えて」
「分かった」
燐は長四郎の後ろ一階席の中央席付近の通路辺りを指さす。
「あそこら辺にカメラがあったかな?」
「そうか。じゃあ、次は演者」
「分かった」
燐はもう一度、舞台に上る。
「いい?」少し声を張り下ながら長四郎に尋ねると〇のジェスチャーポーズをして返事をした。
「ここに俳優のおっさん」燐は数歩移動し「ここにぶりっ子女優」また数歩移動して「ここに脂身スタアの二人、以上!!」そう言うと長四郎は頷き了解した旨を伝える。
長四郎は椅子から身体を放し立ち上がり、舞台に上がる。
「よく分かった」という長四郎に「何が?」と燐はツッコミを入れる。
未だに一川警部は紀坂にサイキック木馬の超能力についての質問攻めにあっていた。
「よし、移動するぞ」
長四郎は燐を連れて駐車場に移動した。
大判が乗っていた車の前に着くと、ここでも科捜研の人間が調査をしていた。
「どうも、お疲れ様です」
長四郎は調査中の科捜研の男性職員に声を掛ける。
「あ、お疲れ様です」
男性職員は、はにかみながら返答する。
「どうですか?」
「被害者はここで殺害された可能性が高いです」
「えっ、噓!?」燐は驚く。
「後部座席に犯人の痕跡ありましたか?」
「はい、この衣類ですね」
男性職員はチャック袋に入れた服を見せてきた。
「ここを見てください。靴の痕が付いてますよね?」
「そうですけど、これだいぶ前についたモノじゃないですか?」
「まぁ、そう思われても仕方ありませんが、この汚れは泥汚れです。最近、付着したようですね」
燐の言葉を否定しつつ、チャック袋を少し引っ張って泥汚れが袋に付着している事を見せる。
「ご覧の通り、袋にかなりの汚れが付いています。まだ、泥の水分が乾ききっていない証拠です」
「おお~」燐は感嘆な声を出す。
「その泥が付着した靴は車内にありましたか?」
「いえ、見つかりませんでした」
「分かりました。ありがとうございました」長四郎は会釈しながら礼を言う。
「いえ、仕事に戻っても?」
「どうそ、邪魔してすいません」
長四郎の言葉を聞いたか聞かない感じで自分の仕事に戻っていく。
そして、丁度いいタイミングで絢巡査長から電話がかかってきた。
「しもしも」
「長さん、目撃者見つけました!」
「お、そうか。では、その人にこちらに来てもらえるか確認してもらえる?」
「分っかりました」
絢巡査長はすぐさま確認する。
「OKが出ました」
「じゃあ、宜しく」そこで通話を切った長四郎は燐を見てこう告げる。
「その恰好じゃ無理か」
「へ?」
燐は自分の服装を確認する。
何の変哲もない制服姿だ。
「この恰好のどこがダメなのよ」
「それは秘密」長四郎はそう答え「ラモちゃんに頼みたいことがあるんだけど」と燐に頼み事を伝えた長四郎は一人どこかへと歩き出した。
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