過去-3
『誰?』
一川巡査部長たちの問いに、制服の男の子はこう答えた。
「現場に居合わせた普通の高校生でぇ~す」
「つまみだせぇ~!!!」
玲の号令と共に、一川警部につまみ出される男子高校生。
「君、何ばしようとか? 捜査の邪魔をしたらいかんでしょ」
「いや、でも刑事さん。あれは物取りの線じゃないでしょ」
「分かったから。邪魔せんといて」
「いやいや、未解決事件にして良いんですね? 無下にするなら、マスコミに垂れ込もうかなぁ~」
男子高校生は今までの会話を録音したであろうスマホをちらつかせながら、一川巡査部長を不敵な目で見る。
「はいたぁ~それは困るばい。どうにかならんと?」
「じゃあ、俺の話を聞いてくれます?」
一川巡査部長はここで相手にしないと、引っ搔き回されそうなので話を聞くことにした。
トイレ近くのテーブル席に腰を下ろした長四郎は話し始めた。
「推理を言う前に、自己紹介を。
「熱海長四郎君ね。あたしは、世田谷南署の一川雅人って言います。それで、君の推理を聞かせて?」
「では、お聞かせしましょう。初歩的な話ですが、物取りの線であれば被害者と犯人が争った形跡がありませんでしたよね? どちらかと言えば、抵抗もせずにその場に倒れたといった感じでした」
「そう言えば、そうやね」
「それに被害者の死因は見た感じですが外傷が原因というよりかは、体内の異変によってもたらされた感じですよね?」
「うん」
確かに、一川巡査部長の目にも被害者が毒を盛られて苦しみながら死んだように見えた。
「つまりは、毒を盛られて殺されたという事にはなりませんか?」
「うん」
「物取りで、そんな手の込んだことをする必要があるでしょうか? 普通は凶器をちらつかせて財布を頂けばそれで終わりじゃないですか? わざわざ、毒を盛って殺すなんて手の込んだことをするなんて物取りのする事でしょうか?」
「長さんの推理は、分かった。本部の刑事さんに伝えてみるけん。長さんはここまでという事で」
「いやです。一川さんじゃ、言いくるめられそうなので僕が伝えます」
そうきっぱりと答える長四郎に、一川巡査部長は初めてあった高校生にそう言われて少し凹んだのはここだけの話。
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