結社-13

「麻取? 麻薬取締官が動いとうと?」

 電話の向こうに居る一川警部が驚いた反応する。

「はい。桑子の捜査をするなと念を押されました」

 長四郎はそう告げ、ビールを流し込む。

「名前は聞いた?」

「いいえ」

「ま、聞いても教えてくれないかもだから、仕方ないか・・・・・・・」

 一川警部が残念がっているのは電話口でもよく分かる。

「一川さんの方は、どうでしたか?」

「うん。例の浮気相手の正体は掴めたばい」

「誰なんです?」

「名前は、浮渡うわき 布里子ふりこ。年齢は29歳。職業は、フリーのカメラマン」

「相棒ってわけですな」

「そうみたい。共に仕事をしてみたいやね。でもね、浮気していたのも事実みたいと」

「まぁ、尾行調査している時に、そんな雰囲気だったんで特に違和感はないですけど。それで、彼女は何と?」

「何ととは?」

「またまたぁ~ ごまかさなくても良いですよ。事情聴取しているんでしょ。警視庁総出で」

「気づいとったと?」

「まぁねぇ~ それで、彼女は塚児殺害を認めているんですか?」

「いいや。彼女曰く、トイレに行っている間に殺されとったらしいけん。そんで、死体の横でアタフタする長さん見て、犯人見たぁ~思うて逃げたらしいったい」

「失礼な女だ。人を犯人扱いするなんて」

「そんな事はさておき、我が警視庁としては、第一重要参考人として、浮渡布里子を任意で聴取し続けとうと」

「ほう。それをやっているのは所轄署の澤ですよね」

「そう、その通り。因みに彼女も組織の一味として、捜査を受けとうからね」

「きな臭いなぁ~」

 長四郎は頭をボリボリと掻いて、困り顔をする。

「それと、頼まれとった桑子の素性についてやけど」

「はい」

 長四郎は背筋を伸ばして、一川警部の話に耳を傾ける。

「分かりました。調べて頂きありがとうございました。では、また」

 電話を切った長四郎は、最後の一口を飲みソファーに寝転ぶ。

「ふぅ~」

 目を瞑り、長四郎は事件について整理する。

 桑子は確実に麻薬組織と繋がっており、それを警視庁ではなく麻取が追っている。

 でも、麻取は桑子の逮捕に躍起になっており、塚児殺害なんて目もくれていない。

 ということは、塚児殺害は麻薬組織が関わっていないという事なのか?

 長四郎の頭の中でグルグルと先程のような事がかき回っていると、突然、頭に衝撃が走る。

「痛っ!」

 目を開けると、制服姿の燐が目の前に立っていた。

「あら、制服を着ているなんて珍しい」

「そうじゃないでしょ」

「何しに来たの?」

「事件の調査、手伝いに来たんでしょ」

「ああ、そうかい。じゃあ、もう帰りな。今日はやることないし」

「うん、分かった。帰るねって、言う訳ないでしょ」

「俺、酒飲んでいるから今日はやる気ないよぉ~」

「やる気ある私がやるから、あんたは寝てな。パソコン借りるわね」

「どうぞぉ~」

 長四郎は事務所と併設している自室へと入って行くのだった。

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