GW-5

 長四郎達は早速、行動を開始した。

 現場の吉川プリンセスホテルに移動し、事件現場の部屋で燐から死体発見当時の状況を聞く。

「エステを終えて部屋に戻ると、ここに死体があったで宜しいの?」

 長四郎が燐に事実確認をする。

「そう」

「一川さん、被害者の足取りって分かっているんですか?」

「え~っと、それはどうなっとるんやったっけ?」

 長四郎の質問を隣にいる部下の絢巡査長に確認する一川警部。

「それはですね・・・・・・」

 絢巡査長はスマホで捜査資料を開き、該当ページを閲覧し始める。

「分かりました。被害者の中尾襟さんは夕食のディナーを終えた後、このホテル内にあるバーで飲み放題に参加しています。30分程経った頃、気分を悪くしたとのことで、ツアーガイドの個亜田広子さんが連れ添ってこの部屋に戻ってきますね」

「その時に怪しい人物は目撃しとらんと?」

「はい。その20分後にこの部屋に訪れたツアー客の風原行美さんがこの部屋に訪れてます。

その時も特に変わったことはなかったそうです」

「その時のツアーガイド行動は?」

 長四郎が個亜田のアリバイを聞く。

「この部屋に居て、看病していたそうです。

風原さんからも証言は取れています」

「ありがとうございます。

さぁ、どうしたものか?」

 長四郎はそう言いながら部屋を見渡すと、現場を荒らさないようにしながら部屋の中を闊歩する。

「長さん、部屋荒さんとってよ」

「ほ~い」

 一川警部の忠告に適当に返事をするとバスルームに移動する。

 風呂場に置いてあるアメニティを見ると、ごっそり無くなっていた。

「ラモちゃ~ん!!」

 長四郎は燐をバスルームに呼びつける。

「何?」

 燐は早く自分の無実を証明しろと言わんばかりの顔で、バスルームに姿を現す。

「ここのアメニティ全部持っていった?」

「持って行くわけないでしょ!!」

「何をそんな怒っているの?」

「もういい」

長四郎にそう言い残し、部屋を出て行く燐。

「何をあんなに怒ってんの?」

「怒るのも無理ないですよ。

被害者の方とは、友人関係だったそうですし。」

 長四郎の疑問に絢巡査長は答える。

「ふ~ん」と気のない返事をしながら、長四郎は再びベッドルームに戻る。

「何か気になることでもあったと?」

「事件に関係あるかどうかってところですかね」

 その時、部屋の鍵が開き部屋に例の意識高い刑事が入ってきた。

「あなた方ですか?

容疑者を逃がした本庁の刑事というのは・・・・・・」

 部屋に入って来るや否や嫌味を言ってくる意識高い刑事。

「まだ、犯人と決まっているわけではないですよね?」

 絢巡査長が食いつく。

「それがそうでもないんですよ。

この部屋の解除履歴を調べた所、死亡推定時刻に羅猛燐が所持していたカードキーで開けられた事が分かりました」

「それだけで犯人っていうのは浅はかだろう」

「凶器からも彼女の指紋が検出されました」

「それで犯人だと?

杜撰もいいところですね」

 絢巡査長は呆れる。

「重要参考人いや犯人を取り逃す方たちに何を言われても」

 意識高い刑事は三人冷たい視線を向ける。

「じゃあ」

「長さん、どこ行くとね?」

 部屋を出て行こうとする長四郎を呼び止める一川警部。

「ああ、本来の人探しの仕事に戻るだけです」

「じゃあ、それが終わったら今朝、居た喫茶店に集合という事で」

「はい」

 長四郎は出て行った燐を探しに行くのだった。

「一川警部、これからどうします?」

「絢ちゃん、そう肩っ苦しく呼ばんとって。フランクに行こう。フランクに。

あたしのことはいっちゃんでよかけん」

「そういうわけにはいきません」

 ふざけた子供を諭すような口調で話す絢巡査長。

「本当にあなた達、刑事ですか?

事件を早期解決できる気がしませんので。失礼します」

 意識高い刑事はそう言うと部屋を出て行った。

「あたしらは、ツアー客から不審な人物等を見なかったか聞き込みをかけようか」

「分かりました。確認とってきます」

 絢巡査長はツアー客にアポイントメントを取りに行った。

 一川警部は「ふ~」とため息をつくと、窓際に移動し景色を眺める。

「長さん、ラモちゃんの事を見つけられたんたやろか・・・・・・」


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