将軍-17
長四郎は燐、遊原巡査、明野巡査を引き連れ捜査本部へと舞い戻った。
「随分、見ない間に老けたんじゃない?」
光浦に掛けた第一声はそれであった。
「もう君の冗談に答える気にもならんね」光浦はピシャリと言い放った。
「つれない事言うなよ。管理職。んな事より、甘木田は見つかったのか?」
「ああ。今、彼の所に刑事を向かわせたところだ」
「そうか。向かわせちゃったのね・・・・・・」
長四郎は少し残念そうな顔をして光浦の対面の机に腰掛けた。
「なんだ。何か問題でもあるのか?」光浦の隣に座る管理官が質問してきた。
「いや、別に」
「なんだ。何かあるから聞いたんだろ? 答えろ」
光浦は不服そうな長四郎を見て、その疑問を解決しようと改めて質問した。
「あいつ、警視庁の前にでも張り込んでいたんじゃないかなぁ~ って、思っただけ」
「思っただけで、意見するな」
「そん」そんな言い方はないんじゃないんですか? そう明野巡査が抗議しようとするのを口を塞いで止める遊原巡査。
「何するのよ」
「上から目を付けられるような事するなよな」
遊原巡査はご立腹の明野巡査を小声で注意する。
「うほんっ!!」長四郎は咳払いして若い刑事に少し静かにするように促し、光浦に再び話しかける。
「気になっていたんだけど、管理職が考えるゲネラールの正体ってどういうの? 教えて」
「君の推理だと、最初の被害者だったか? 有り得ないというのが私の考えで」と長四郎の推理を否定してから「ゲネラールの正体は、一般人。それも、複数犯と考えている」そう答えた。
「ねぇ、この人。頭固いんじゃないの?」燐がそう言うと、光浦は眉を上げて燐を睨む。
「怖っ!」燐は長四郎の背を盾にして身を隠す。
「女子高生の言う事はともかくとして、エリートちゃんは甘木田をどうしたいの?」
一々、呼び方が変わる奴だな。光浦はそう思った。
「無論、保護するつもりだ」
「保護。保護ねぇ~」
「不満でもあるのか?」管理官がそう尋ねる「う~ん。警視庁庁舎でドッカンと派手なパーティーが始まるのか。否か・・・・・・」長四郎は顎を擦りながら、首を傾げる。
「探偵さんはこのまま甘木田を保護するとゲネラールが警視庁で攻め込んでくるとでも言うんですか? んな、馬鹿な」遊原巡査は長四郎の推理を嘲笑する。
「遊原君。相手は特殊部隊の人間だぜ。ランボーの一作目みたいになったらどうするの?」
「ねぇ、ランボーって何?」燐は明野巡査に質問した。
「え、昔の映画じゃない。内容は知らないんだけど」
「昔って言うな! これだから、若い女は!」長四郎はシン・エヴァンゲリオン内の
「何それ?」と燐が言い「意味分かんない」と明野巡査のその言葉に長四郎は酷く落ち込む。
「探偵さんがなんかのモノマネをしていたのはともかくとして、ゲネラールが攻め込んでくるというのは飛躍しすぎじゃ」
「君の言う通りだ」光浦も遊原巡査の意見に賛同する。
「仮、仮の話だから。奴も一人の人間を殺す為だけに警視庁へ馬鹿みたいに乗り込んでくるとは思わないよ。でもさ、一人で五人の人間を殺した人間だぜ。そのくらいの心持ちがあってもおかしくないかなって思っただけ」と長四郎は言い訳がましい反論をする。
「取り敢えず、甘木田照悟の身柄は警視庁で保護する。良いな」
光浦の言葉には、保護した後に何もするな、そう捉えられる意味が込められていた。
「だって」
長四郎は光浦のその発言を燐に言っているぞと言わんばかりの顔で指さす。
「なんで、私なの。あんた、あんたの話よ」
「ふ~ん」
長四郎は適当な相槌を打ち、納得した素振りを見せる。
「邪魔するなら、自分達の部屋へ帰れ!!」
管理官がしっしっと手を振り、四人を追い出そうとする。
「待ってください」それを止めたのは光浦だった。
「本部長。どうしたんですか?」管理官がきょとんとした顔をして光浦に問う。
「彼のスマホを」
ゲネラールから掛かってくる電話の相手を自分が行うという意味だった。
こうして、スマホを奪われた長四郎、燐、遊原巡査、明野巡査の四人は用無しとされ大会議室から追い出された。
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