将軍-18
「追い出されちゃったね。どうするの?」
燐は長四郎にお伺いを立てる。
「どうしましょうかねぇ~」と言いながら、エレベーターに乗る長四郎。
それを追いかける燐達は長四郎の意図が読めず悶々としていると。
「お二人さん、始末書書かされても怒ったりしない?」そう若い刑事二人に話かける長四郎。
「ものによりますね」遊原巡査がっそう答えた。
「じゃあ、付き合ってもらおうか」
「え~ なんか嫌だなぁ~」
明野巡査のこの言葉は、当たっていた。
甘木田は警視庁へ連行され、その身柄は地下駐車場にあった。
「ほら、降りろっ!」
刑事が後部座席のドアを開けて、甘木田を覆面パトカーから引っ張り降ろす。
「随分、雑な扱いだな」甘木田が苦言を呈すると、目の前に四人の制服警官が立った。
「な、なんだ」刑事の一人が制服警官に詰め寄る。
「彼を東京拘置所へと移送します」
「そんな話、聞いてないぞ」もう一人の刑事が困惑気味に言う。
「それは、そうです。たった今、捜査本部で決まったので」
女性の制服警官がハキハキと答え、甘木田を両サイドから挟み連行していく。
「おい、待て!!」
四人の様子が明らかにおかしかったので、刑事が呼び止めようとしたが時すでに遅し。
「走れ!」長四郎のその一言で刑事達から逃亡し、止めていたパトカーに乗り込む。
「出して、出して」明野巡査に急かされながら、遊原巡査はパトカーを急発進させ警視庁を出ていく。
「クソっ!」
取り逃がした刑事達は、あのエリート本部長にどやされるんだろうなそういった顔をしながら走り去っていくパトカーを見送るのだった。
「あ~ 楽しかった!!」
長四郎はそう言いながら帽子を取って、甘木田に顔を見せる。
「あ、あんたは」
「どうも」燐も帽子を取り、その顔を見せるが甘木田は反応する事はなかった。
「おい!」反応しろよ的な顔をする燐を他所に長四郎は本題に入る。
「甘木田さん。なんで、警視庁へ連れてこられたのか、知っています?」
「それが教えてくれなかったんですよ」
「あんた、命狙われているの」燐がズバッと言い切った。
「ラモちゃん。オブラートに包まなきゃダメでしょう」
「え~」
だが、命を狙われている当の本人はショックで言葉も出せずにいた。
「そうだよ。ラモちゃん」明野巡査も燐を注意する。
すると、警視庁からの無線がスピーカーから流れてきた。
“緊急指令。手配車両は警視庁車両、ナンバー 世田谷 あ 310繰り返す”
「お、始まったな」長四郎は嬉しそうにし始める。
「しっかり、捕まっててくださいよぉ~」
これまた嬉しそうに遊原巡査はアクセルを全開に踏み込む。
「どうなっているんだ!」
捜査本部長の光浦は机を力の限り叩く。
甘木田を保護するはずが、長四郎達の拉致により全てが狂い捜査本部も混乱していた。
「今、奴らはどこに居るんだ!」管理官は近くに居る刑事に詰問すると「分かりません。現在、捜索中です」テンパりながら答える刑事。
「無線はどうですか?」怒鳴り散らしたくなる気持ちをグッと堪えた光浦が静かに聞くと「呼びかけてはいますが、応答はありません!」通信担当の制服警官が答えた。
「一川はどうした!」管理官が責任者としての処分をここで下そうと一川警部を呼びつけるが返答が返ってこない。
「クソっ! これじゃ、計画が台無しだ」管理官は下を向きうなだれる。
「ここで、焦っていても仕方ありません。取り敢えず、あのバカ探偵を確保そして、甘木田とかいう記者の保護を最優先にしましょう」
「はい・・・・・・」管理官は光浦に説得され、気を取り直して捜査員達の指揮を執る。
そんな時、捜査本部に置いていったスマホに着信が入る。
「スマホに入電!」捜査員の一言で捜査本部は一気に静まり返った。
「もしもし」光浦が電話に出た。
「探偵じゃないな」
「ああ、彼は今ここには居なくてね」
「もしかして、俺に喧嘩を売ってきた捜査本部長か?」
「そうだ」
「二時間は経過した。例の記者は見つけたのか」
「いいや。まだだ」
「では、ペナルティー1だ。お前は噓をついた。よって、無実の人間達が死ぬ事が今、決定した。残念だよ」ゲネラールはそう告げて、電話を切った。
捜査本部の視線は一気に光浦へ向けられた。
だが、光浦は一言も発せず呆然とするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます