将軍-19
「ったく、長さんも無茶な事をするなぁ~」
無線聞きながら絢巡査長は車を走らせる。
今、絢巡査長は第五の被害者である度久太一の勤務先の病院から聞き込みを終えて警視庁へ戻るところであった。
“警視庁より警邏中の各移動、追跡対象の車両は現在、都道413号線を明治神宮方向へ移動中。民間車両に注意し尾行せよ”
無線からそんな指示が入ると、絢巡査長のスマホに着信が入る。
ハンドルに付いているハンズフリーのボタンを押して、応答する。
「はい。もしもし」
「もしもし。佐藤田です」
「佐藤田さん。どうしました?」
「絢ちゃんが御手隙であれば、ちょっとこちらの方を手伝いに来てもらいたいなぁ~ なんて」
「分かりました。今どこです?」
「埼玉」
「さ、埼玉ですか?」
「うん。埼玉。詳しい住所はメッセージで送るから。じゃ、宜しく」
一方的に通話は切られ、絢巡査長は路肩に車を停車させ佐藤田警部補から送られ来た住所を確認する。
確かに埼玉県の住所であった。
絢巡査長は指定された住所をナビに入力して車を発進させた。
一時間と少し、車を走らせ指定された場所に到着した絢巡査長は車を近くのコインパーキングに駐車して佐藤田警部補を探す。
「どこ行った?」指定された場所に佐藤田警部補の姿はなく電話をかけようとハンドバックからスマホを取り出した瞬間、「待っていたよ」と真後ろから声をかけられて絢巡査長は悲鳴を上げてスマホを落とす。
「何もそんなに驚かなくても・・・・・・」佐藤田警部補は少し落ち込んだ顔をし、絢巡査長はそんなことより落としたスマホが壊れていないかを確認する。
「あ~ 割れちゃったよぉ~」
スマホの画面の角部分が少し割れていた。
「なんか、ごめん」取り敢えず、謝罪する佐藤田警部補をギッと絢巡査長は睨む。
「で、私は何をすれば?」
「あ、うん。実はさ、若い子に話を聞きに行きたいんだけどね。ほら、俺、こんなだからさ。なんていうのかな? 若い子には若い刑事を的なやつをね?」
「若いって言いますけど、私、26ですけど?」
不機嫌な絢巡査長の機嫌はまだ直っていなかった。
「俺からしたら、充分若いし、まだぴちぴちの20代じゃない。ね? お願い」
「別に嫌とは言っていませんけどね」
顔は嫌だって言っているよ。佐藤田警部補はそう言いたくなるのを我慢し、愛想笑いを浮かべて誤魔化すのだった。
佐藤田警部補は絢巡査長を連れて、その若い子の溜まり場へと場所を移した。
「ここ、ですか?」
そこはどう見ても廃墟であった。廃墟の木造アパート。
「ここ。そろそろ来る頃ぐらいなんだけどなぁ~」
佐藤田警部補は腕時計を見て時間を確認すると、遠くの方から高らかに鳴り響くバイクのエンジン音が聞こえてきた。
絢巡査長はここで佐藤田警部補が何を待っているのかを察した。
程なくして、バイクの集団がこちらに向かって走ってきた。
「お、来た来た」佐藤田警部補が手ぐすねを引いて喜ぶ。
先導するバイクが廃墟アパートの前で停車した。
派手にデコレーションされたヘルメットを取ると、髪を赤色に染めた端正な顔立ちのヤンキーがこちらに面血を切ってきた。
「なんだ? あんたら、人の遊び場で」そう話しかけてきた。
「さ、絢ちゃん。出番だよ」佐藤田警部補は自分に面血をきってくるヤンキーを視線から逸らして絢巡査長に相手するよう頼む。
「えっと、私たちこういう者なの」
絢巡査長が警察手帳を提示したタイミングで後続のバイク軍団が廃墟アパート前で停車した。
「げっ! 警察だ!!」逃げようとするヤンキーの首根っこを掴んで「逃げないで! 逮捕しに来たわけじゃないから!!」とい逃げようとするヤンキー達に大声で説得した。
大声じゃないとバイクのエンジン音にかき消されるからだ。
「な、なんだよ。話って」赤髪のヤンキーが用件を聞いてきた。
返しに困っていると佐藤田警部補が絢巡査長に用件を耳打ちした。
「君たちのお友達が行方不明になっているんじゃない?」
「どうして、それを?」赤髪のヤンキーが質問すると、すぐに佐藤田警部補は絢巡査長に耳打ちをする。
「その事で、協力してほしいの。お願い」
「分かった。こっちへ」
赤髪のヤンキーは、二人の刑事を廃墟アパートの一室へと案内した。
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