将軍-20

「俺達がそう簡単につかまるかってぇ~の!」

 探偵物語の主人公・工藤俊作のコスプレをした長四郎が自分達を血眼で探す刑事を嘲笑する。

「ねぇ、私は変装の意味あるの?」そう言う燐の姿は今流行りの漫画・ダンダダンの綾瀬桃(制服Ver)の恰好をしていた。

「確かに」

「意味ないな」

 当然、若い刑事二人もコスプレをしている。明野巡査はふしぎ駄菓子屋銭天堂の店主・紅子、遊原巡査はアオのハコの主人公猪俣大喜(制服Ver)、そして、命を狙われている甘木田はというと、ドン・キホーテのマスコットキャラクター、ドンペンの着ぐるみを拝借していた。

「暑い・・・・・・」ドンペンいや甘木田が周囲を警戒する四人に話しかけた。

「外に出たら、丁度いいですよ」長四郎は甘木田の背中をポンポンっと叩く。

「でも、これ、逃げるのに不向きじゃないですか?」明野巡査が至極当然な質問をする。

「分かっていないなぁ~ 多少は目立たってないと、ゲネちゃんに襲撃されるでしょうが」

「どういう事?」明野巡査は燐に質問する。

「分かってないなぁ~ 着ぐるみが歩いていれば歩行者に目立つし、そうそう襲えないでしょ」

「成程ぉ~」明野巡査は理解したらしくポンッと手を叩く。

「納得するなよ」遊原巡査がすぐさまツッコミを入れる。

「そうだよ。泉ちゃん、明らかにおかしいんだから」燐も遊原巡査のツッコミに同意する。

「つべこべ言わずに、行くぞ。劣化版の桃さん」

「誰が、劣化版じゃ!!」

 長四郎の尻に燐のストレートキックが浴びせられ、長四郎は綺麗な横垂直飛びで吹っ飛んでいった。

 そんなこと長四郎の様子を物陰から伺う男が一人居た。


「それで、俺達に聞きたいことって?」

 赤髪のヤンキーは目の前に正座して座る絢巡査長に質問した。

「えっと、ですね」

 同じように正座して座る佐藤田警部補に目で質問すると「行方不明の友達が居るでしょって聞いて」と耳打ちした。

「行方不明のお友達が居るんじゃないでしょうか?」

「それがなんだよ?」

「いつ居なくなった? って聞いて」

「いつ頃から行方不明になったのかな?」

「一週間前だよ。あいつが見つかったのか?」

「うん。多分・・・・・・」

 絢巡査長は自信なさそうに答えると、佐藤田警部補は絢巡査長の視線を避ける。

「多分ってなんだよ。はっきり答えろよ」

「見つかったかもだから、その子の情報を提供して欲しいって言って」

「見つかったかもだから、その子の情報を教えて欲しいんだけど」

「なぁ、さっきからあんた、なんで直接聞いてこないんだよ!」

 赤髪のヤンキーが佐藤田警部補に業を煮やして、遂に怒った。だが、赤髪のヤンキーのこの行動によくやった! そう褒めたくなる絢巡査長であった。

「おじさんはさ、君みたいな子をよく怒らせちゃうから」

 佐藤田警部補の第一声は言い訳から始まった。

「んだよ。それ」

「でさ、その子が行方不明になった時の状況を教えてくれない?」

「正直言うけど、あいつグループからも煙たがられたから誰も心配していなかったんだよ」と前置きし「あいつはあの日さ、後輩を誘って他のチームに喧嘩を売ってきたらしいんだけど、そこに変な奴が入って来て両チームの奴もやったらしいんだよ」そう言いながら、スマホを操作し始めて二人に写真を見せた。

 そこに映っていたのは、血を流した無数のヤンキーが地面に横たわっていた。

「俺達がここに着いたらこんな光景で、あいつの姿はなかった」

「そうか。で、彼のお家はどこ?」

「俺、知らないから。あいつの地元の奴を呼ぶわ」

 赤髪のヤンキーは行方不明のヤンキーと同郷のヤンキーを呼びつけた。

 そのヤンキーから情報を聞き出した二人は切り上げる事にした。

「うん、ありがとう。君たちもハッスルしすぎないようにね」

 佐藤田警部補は赤髪のヤンキーに礼を言い立ち上がろうとするが「ぎゃっ!」と叫び床に倒れこむ。

「佐藤田さん。大丈夫ですか?」痺れる脚の中立ち上がるので絢巡査長の脚は生まれたての小鹿のようにプルプルと震わせる。

「こ、こむら返りした・・・・・・っツぅ~」

 佐藤田警部補は痛む右脚を抑えながら、涙を流すのだった。

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