将軍-21

「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 制服警官が走って逃げる長四郎五人組を追いかけながら、怒鳴る。

「し、しつこいな。あの制服警官」

 長四郎は息絶え絶えで、追っかけてくる警官に感心する。

「馬鹿、そんなことよりに逃げないと!!」

 この中で、一番身軽な服装かつ年齢も若い燐が先頭を走りながら、長四郎をしかりつける。

「ドンペンじゃない。ジャーナリストは大丈夫か?」

 走ることに目一杯で多分、最後尾を走っているであろう甘木田の心配をする長四郎に答える為、燐が一瞬だけ後ろを振り向くとドンペンの姿で長四郎の真後ろを走っており、一番遅いのは着物を着た明野巡査であった。

「泉ちゃんが遅い!」燐は長四郎にそれだけ教えた。

「泉ちゃん?」長四郎が振り向くと全力で自分の後ろを走る着ぐるみを見て驚き「ぎゃあぁぁぁぁ」と喚きながら燐を追い抜き一人走り去っていった。

「自分だけ逃げるなんて。呆れた」

 このまま長四郎を追っかけようかとも思ったが、最後尾で走る明野巡査、何より、命を狙われている甘木田を見捨てる訳には行かず燐は取り敢えずこのまま走る事にした。

 走り続けて、十五分。追っかけてくる警官も声を出すのに疲れたのか、後ろから終始聞こえていた怒号が聞こえなくなった。

「あれ?」

 燐が振り返ると警官の姿はなく、一人も捕まらずに走っていたのを確認した。

「ほっ」と安堵し、燐はビルとビルの間に入り込む。

 それに続いて路地に入り込む四人。

「はぁはぁ」全員の吐息が路地に木霊する。

「なんとか、逃げ切ったね」明野巡査は被っていた鬘を取り地面にそっと置いた。

「ああ、しつこかったな。あの制服警官」遊原巡査は羽織っていたジャケットを脱ぐ。

「ぬ、脱ぐの手伝ってもらえますか?」

 ドンペンの着ぐるみを着た甘木田がそう懇願すると、燐達が咄嗟にドンペンの後ろに付いているチャックを開けると汗だくの甘木田が姿を現した。

「はぁ~ 生き返るぅ~」

 外気に触れ蒸れた身体には心地よかった。

「探偵さん。どこ行っちゃったんだろ?」

「泉ちゃん。裏切り者の事は、忘れよう」

「いや、忘れようって・・・・・・」

「あの、ここからどうやって逃げるんです?」

 甘木田がそう聞いてくると、「逃げる必要はない」そう声が聞こえてきた。

 全員が声の方に視線を向けると、フードを目深に被った男が立っていた。

「探偵さん?」

「泉ちゃん。違う。こいつは」燐がそう言いかけた瞬間、甘木田目掛けてフードの男がナイフを突き立て襲ってくる。

「危ないっ!」燐は甘木田の腕を強く引き、ナイフを間一髪で回避する。

「ラモちゃん、下がって」

 明野巡査と遊原巡査の二人は懐から警棒を取り出して、フードの男と戦おうとする。

「勇ましいが、君たちに俺は倒す事はできないよ」

「んだとぉ~」

 明野巡査がカ゚ッとなり、フードの男に飛びかかる。

 フードの男は明野巡査を華麗に避けて、標的である甘木田の前に立つ遊原巡査に襲い掛かる。

 遊原巡査は自身に突き立ててくるナイフを必死に警棒で躱しながら、身柄を取り押さえる機会を伺う。

「どうした? どうした?」

 余裕な素振りを見せるフードの男は次々に攻撃を仕掛けてくる。

「くっ!」

「コンノォォォォォォ!!」明野巡査がフードの男の背中に警棒を振り下ろすが、それを躱され腹に蹴りを入れられ吹っ飛ぶ明野巡査。

「泉ちゃん!!」

 燐はすぐにでも明野巡査の元へ駆け寄りたかったが、ここで甘木田の元を離れるのはリスクでしかない。

「泉!!」

 遊原巡査が声を掛けると大丈夫の意味で、明野巡査は手を挙げて返事をする。

「他人の心配している暇はないんじゃないか!」

 フードの男がナイフの柄で、遊原巡査の鳩尾を殴る。

 一気に激痛が走り、遊原巡査はノックダウンし倒れこむ。

「さ、お約束通り、殺してあげよう」フードの男、ゲネラールはゆっくりと燐と甘木田に歩み寄って来る。

「あんた、こんな不意打ちして楽しい?」

「手段を選んでいる場合じゃないんだよ!」

 ゲネラールはナイフを燐、目掛けて振り下ろした。

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