展示-1
「はーい。ここからは自由行動でぇーす。くれぐれも一般のお客様に迷惑をかけないように」
引率の教師が浮足立つ生徒たちに話し掛ける。
「では、解散!!」教師がそう宣言すると、生徒達は一斉にその場から離れて各々見たい展示物の所へと向かった。
「ねぇ、どこ行く?」
「うん、どこに行こうか?」
「燐も決めてないの?」
「当たり前じゃん。だって、博物館って何を見るの? 化石?」
「ジュラシックかぁ~」リリは困ったといった表情をしながら、パンフレットを見る。
「日本の歴史コーナーに行かない?」
「え?」
急な燐の提案に戸惑いを隠せないリリ。
「取り敢えず、行ってみよう」
燐にそう言われリリは共に日本の歴史コーナーへと移動した。
日本の歴史コーナーは、土偶から昭和レトロな製品までがそろっている展示コーナーであった。
その中でも目玉なのは、日本刀のコーナーで歴史に名立たる刀が置かれていると共に様々な日本古来の武器が展示されていることなのだ。
燐達は、静かに展示品を鑑賞していると、数メートル先の日本刀展示コーナーで騒ぎ立てる同級生の男子たちが居た。
「あいつらうるさくない?」
リリは汚物を見るような目で男子を見ながら、燐に声を掛ける。
「そだねー」と返事しながら、展示物の土偶をまじまじと眺める。
「その土偶がどうかしたの?」
リリもまた燐が真剣に見ている土偶を見る。
「どうもしない。ただ、可愛かっただけ」
燐は素っ気ない感じで答え、男子生徒が騒いでいる刀の展示コーナーへと場所を移した。
「おい、この切られ役マジでおもろくね?」
「リアリティがあるだけだろ?」
「でも、この死体役のマネキンだけでやたらとリアルだぜ」等の会話を繰り広げる男子生徒達。
燐もその会話聞き、気になりその展示物を見る。
その展示は時代劇を模したような展示で、武士が斬り捨て御免している光景の展示品であった。
刀を持った侍は蠟人形と見分けられる展示品であったのだが、死体役の展示品はどう見ても生身の人間だった。
「ちょっと、どいて!!」
燐は展示品をよく見る為に男子生徒達を引き離し、死体役の展示品を真剣に観察し始める。
死体役の展示品の目は瞳孔が開いており、少し臭っていた。その臭いは死臭のそれであった。
「失礼しまぁ~す」燐はそう言って、死体役の展示品を人差し指でつつきこう言った。
「これ、死体だ」
その一言を聞き、色めき立つ男子生徒達。
「やべぇよ。死体だってよ。死体」
「初めて見たわ」と各々、感想を言い合っていると「んなの良いから、職員さんと警察呼べ!!」リリに𠮟られた男子生徒達はすぐさま、行動に映った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます