異人-15
「これが、事件当日の防犯カメラ映像です」
マンションのコンシェルジュが一川警部、絢巡査長に見せる。
今、モニターに映し出されているのは事件当日の道前宗助の部屋がある階の映像であった。
そして、犯行時刻の映像を確認しているとミシェルが映る20分前に1人の男が映っていた。
「あれ? こん人は」
その男を見て反応を示したのは、一川警部であった。
「知っている人ですか?」
「見たことはあるんやけど。存在感が薄くて覚えとらんばい」
「そうですか」
覚えとけよ。と思う絢巡査長。
「すいません。この静止画を印刷して貰えますか?」
「はい、分かりました」
コンシェルジュは絢巡査長の指示を受け、静止画をプリントアウトした。
「それが、これか」
長四郎は印刷された静止画を見ながら、絢巡査長に話し掛ける。
「はい」
この静止画を手に入れた経緯を説明し終えた絢巡査長は、珈琲を飲む。
「一川さんはこの男を見たことがあるって言っていたんですけど、長さんは心当たりありますか?」
「うん? どうかなぁ~」
長四郎はニヤニヤしながら答えていると、「私にも見せなさいよ」燐は長四郎が持っている静止画をひったくる。
「私も知らない人だ」燐はそう言い放ち、静止画を机に放り投げる。
「参りましたね。この人が何かを目撃しているとありがたいんですけど」
「多分、目撃しているよ」
「え? どうして、これだけで分かるの?」
「超能力」
燐は無言のまま長四郎の頭を思いっきり叩く。
「超能力はさておき、目撃しているのであれば話を聞かないといけませんね」
「そうですね」絢巡査長の提案に賛同する燐。
「すぐに見つかると思いますか? 長さん」
「私の超能力によれば、見つかると思います!」と答えると同時に燐は再び頭を叩く。
「こいつのくだらないことは無視して探しましょう」
「そうね」
「そんな時間の掛かることをするの?」
長四郎は面倒くさそうに発言する。
「この男の正体を言えば良いだけでしょう。お得意の超能力で」
燐が嫌味を言うと、長四郎はムッとする。
「失礼な、小娘ね。絢ちゃん、ミシェルと話することってできる?」
「あの彼女からまだ聞き出せることがあるんですか?」
「というより、ミシェルはこの男を見ているか確認したんだよね?」
「そういう事ですか。でも、厭那がまた文句言ってきますよ」
「それは覚悟の上っしょ」
長四郎がそう言うと燐も賛同するようにうんうんと頷く。
「わっかりました。手配しまひょ」
『お願いします!!』
長四郎と燐は声を揃えて頭を下げた。
その頃、一川警部は長四郎の依頼でベンガンサの役員の中村という人物について調べていた。
「長さんも人使い荒いんよねぇ~」
そう言う一川警部の視線の先には、強面の男が5人立っていた。
何故、このような状況に陥ったのか。
話は2時間前に遡る。絢巡査長と共に防犯カメラの捜査を終えようとしていた時、長四郎からメッセージが入った。
「ベンガンサの役員、中村という人物の調査をお願いしたいです♡怖い人がからんでそうなので(>_<)」
以上のメッセージを受け取った一川警部は、絢巡査長と別れ中村の調査へと向かった。
取り敢えず、中村という名字を連想して中村商会の事務所が入っている雑居ビルの前を張り込むことにした。
寒空の中、ホット缶コーヒーで暖を取りながら張り込むこと1時間が経過したあたりで、お目当ての中村がビルから姿を現した。
「おっ、来た」一川警部はすかさず尾行を開始する。
中村はいくつかの企業を周り、その中にはベンガンサもあった。
その足で、中村は昼休憩がてら一軒のラーメン屋に入ったので一川警部も入って行く。
すると、店の中は強面の男達で溢れかえっておりどうやら、会議ならぬ集会のようなものを開いていた。
「あ、お邪魔しましたぁ~」
一川警部はすぐさま退却したのだが、そこから強面の男達が一川警部を尾行し始めた。
そして、安定の人気の少ない路地裏に入った所でその行く手を阻み今の状況となったのだ。
「あの、あたしに何かようですか?」
一川警部がそう尋ねると、センターに立つ男が口を開いた。
「あんたこそ、何の用であの店へ来た?」
「ラーメンを食べようかと思っただけなんですけど」
「しらばっくれるな! お前からはイヌ(警察を指す隠語)の臭いがすんだよ!!」
センターの男がそう言った瞬間左右の男達が一斉に襲い掛かって来るのだった。
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