オニ-2
八王子にある廃工場に警察車両がひしめき合っていた。
この廃工場でサラリーマンの刺殺体が発見され今、初動捜査が開始されたところであった。
その現場に太陽光を反射させ煌煌と頭を輝かせながら現場に入る
「どうも、警視庁命捜班の一川です。貴方がここの現場を指揮しとうとですか?」
「そうですけど。命捜班って、4月に新設された窓際部署でしたよね?」そう言った後自分が不謹慎な事を発言したと自覚しすぐさま「失礼しました」と謝罪するのだが、一川警部は気にしないといった感じで話を続ける。
「それで、被害者の身元は分かってると?」
「はい。被害者は、
「並外商事。じゃあ、死体のある場所案内してくれる?」
「こちらです」
キャリア刑事は、一川警部を死体がある場所へと案内する。
薄暗い工場内に死体は倒れていた。
「発見時の状況は?」
「え~っとですね・・・・・・」その状況を把握していないみたいで近くの捜査員を探すキャリア刑事。
「あ、
「私は何を伝えれば宜しいんでしょうか?」
「ああ、発見時の状況は?」
「はい。第一目撃者はこの廃工場の管理業者です」
「管理業者」復唱しながら、齋藤刑事の話に耳を傾ける。
「そうです。月に一度の点検でこの廃工場を訪れた際に、ご遺体を見つけたらしいです」
「ふ~ん。因みに何だけどこれなんやと思う?」
一川警部が指差す先には、「どうり」と書かれたひらがな文字があった。
「さぁ、何なんでしょう?」
「ふんぅ~」鼻を鳴らしながら、腕を組みしかめっ面になる一川警部。
「どうり。どうり。どうり」
齋藤刑事はこの文字の意味が気になるのか。同じ単語を繰り返しながら考える。
「やっぱ、分からんけん。長さんに頼もう」
一川警部はスマホを取り出して長四郎に電話をかけ始める。
「あ、もしもし、長さん。今、大丈夫?」
そこから用件を伝える一川警部は「はぁ~い」と言いながら通話を終了した。
「あの長さんとは?」齋藤刑事はすかさず質問する。
「探偵です」
そう答えたのは、絢巡査長だった。
「貴方は?」齋藤刑事の質問に「命捜班の
「自分は」齋藤刑事がそう答えようとした時、「そういうの良いから」と自己紹介を遮られる。
「聞き込みの方はどうやったと?」
「はい。ここの廃工場に入って来るのは心霊スポットとして訪れる若者だけらしいです」
「心霊スポットなの? ここ」
「のようですね」と相槌を打ちながら話を続ける。
「それで、ここの点検は若者が捨てて行ったゴミの処理の為らしいです」
「その他に何か有益な情報は聞き出せたと?」
「いいえ」一川警部の質問に絢巡査長は即答する。
「じゃあ、長さんが来るまでこの文字について考えようか」
そこから一川警部達は長四郎が来るまでの間、「どうり」の文字について考えるのだった。
二時間後、長四郎は現場に駆け付けた。
「どうもすいません。遅くなってしまって」
長四郎は詫びながら、現場に入る。
だが、現場に残っていたのは一川警部、絢巡査長そしてお目付け役に任命された齋藤刑事だけで後の捜査員たちは署に帰って行ったのだった。
「気にせんといて。呼び出したのはこっちやけん」そう長四郎と話す一川警部を他所に齋藤刑事は絢巡査長に耳打ちしながら「あの人が探偵何ですか?」と尋ねる。
絢巡査長は「そう」とだけ答えた。
「で、俺に見せたいものと言うのは?」そう聞く長四郎に「ちょっと、こっちに来て」と一川警部は「どうり」の文字が書かれていた場所へと案内する。
「まず、ここに死体が倒れとったと」一川警部はそう言いながら、被害者の平凡が倒れていた所を指す。
「死因は?」という質問に「刺されたことによる失血死です」と真っ先に齋藤刑事が答えた。
「それで、見てもらいたいのが。ってあれ?」
一川警部は「どうり」が書かれていた場所を指差そうとすると「どうり」の文字は消えていた。
「どうしました?」そう尋ねる長四郎に「いや、ここにダイイングメッセージが」と困り果てる一川警部に齋藤刑事が助け舟を出す。
「これがこの場所に書かれていたんです」とダイイングメッセージを撮影した写真を長四郎に見せた。
「どうり?」写真に書かれている文字を見て首を傾げる長四郎。
「そう、どうりです。どういう意味か分かりますか?」
「初めて見る刑事さん。覚えておいた方が良いよ。いきなり、ダイイングメッセージ見せつけられて解読できる奴なんていねぇって!!」
長四郎の言葉が、物静かな廃工場内に響く。
「す、すいません」流石に自分に非があると思った齋藤刑事は長四郎に謝罪する。
「分れば宜しい」長四郎はニンマリとしながら腕を組み「どうり」の意味を考える。
数分後、考えるのを止め何かを思い出したような顔をする長四郎。
「長さん、どうかしたとね?」反応したのは一川警部だった。
「あ、いや、ラモちゃんの姿が見えないな。と思って」
「ラモちゃんはいませんよ」
「ほっ」絢巡査長のその言葉に、長四郎は安堵する。
「あのラモちゃんというのは?」という齋藤刑事の質問に「長さんのお得意先の女子高生」とだけ答える絢巡査長。
「ちょっと、何言っているか。分かんない」
齋藤刑事はそう答えるのだった。
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