オニ-3
「ねぇ、
燐は帰りのバスで誰とも交わらず一人座っている
「何?」
「実は・・・・・・お得意のあれで調べて貰いたいことがあるんだよね」
「あれをやるのは良いけど、タダっていう訳には行かないな」
「勿論、分かっているわよ。女の子、紹介する」
「ホントか!!」
「ホント、ホント。地牛君好みのコンカフェ嬢っぽい女の子」
「じゃあ、引き受けまひょ」
「宜しく」
燐は調べて貰いたいことを書き記した紙を地牛に渡し自分の席に戻って行った。
送迎バスが学校に到着し、降りたタイミングで地牛は燐に声を掛けた。
「羅猛さん、お待たせしました」
タブレット端末片手に燐に近寄る地牛。
「どうだった?」
「はい。今、データを送ります」
地牛はそう答え、タブレット端末を操作し、燐のスマホにデータを送る。
ピロンっという着信音と共に燐のスマホにデータが送付されたことが通知され、燐はすぐさま目を通す。
「あ、あの、この社員のことが好きなんですか?」
「そうね。気になってはいるかな。なんせ、この私をスカウトしたんだから」
「はぁ」
「ありがとう。これ有効に使わせてもらうわ」
「あの、それを他人に渡すという事だけはしないでくださいよね」
「わーってる」
燐はそう答えてその場を去った。
そして、夕日が首都高を綺麗に赤く照らしている頃、絢巡査長が運転する覆面パトカーに揺られている長四郎の下にメッセージが送られてくる。
長四郎はすぐ様、中身を確認すると「はぁー」と深いため息をつく。
「どうしたとね? 長さん」助手席に座る一川警部は長四郎に尋ねた。
「あ、いや。例の通りラモちゃんからの呼び出しです」
「なんか、事件があったとかいな?」
「文面を読む限りじゃそんな感じではないと思いますが」
「そう、なら良かった」
そう言う一川警部に対して、良くねぇよと長四郎は心の中で静かに呟くのだった。
「場所はどこですか? 送りますよ」
絢巡査長も車を燐との合流先に向けてくれようとするので「銀座のマキノって寿司屋に行ってくれる? 申し訳ないね」と詫びを入れつつ行き先を告げた。
「分かりました」
絢巡査長は淡々と答え、マキノという寿司屋に向かって覆面パトカーを走らせるのだった。
着いた頃には日は落ち、空は闇に染まり街は街灯で煌煌と照らされていた。
「ありがとうございました。また、連絡します」
「じゃ、宜しくぅ~」
一川警部のその言葉と共に車は走り出した。
「さてとっ」長四郎は覆面パトカーが去ったのを確認し、指定された店へと入って行く。
店はカウンターの寿司屋で、馬鹿でも高級寿司ということが分かる仕様な店内であった。
「いらっしゃいませ!!」ここの大将であろう店員は明るく長四郎を出迎える。
「あの羅猛で予約している者なんですが・・・・・・・」
「はいっ、お連れさんは個室でお待ちです! おいっ!!」
そう言うと着物姿よく似合う女将さん風の女性が奥から出て来て「こちらへどうぞ」という言葉と共に長四郎を個室へと通す。
個室の戸が開くと吞気に寿司を頬張りながら「よっ」と燐は手を挙げて声を掛けてくる。
長四郎は気にしないといった感じで女将っぽい店員に「ありがとうございました」と礼を言い個室に入り席に着く。
「で、用件はなんだよ? 言っておくがここのお代を払う能力持ち合わせていないからな」
「誰があんたに払わせるなんて言ったし。それよりなんか、頼めば」
「良いのか?」という言葉に燐は黙って頷いて許可する。
「じゃあ、お言葉に甘えて」
すぐさま、長四郎は店員を呼び、真鯛、いか、本マグロ、いくら、ウニ、あなごの握りを一気に注文した。
店員はそれを受領し、戻っていた。
再び、長四郎は話の続きをする。
「用件ってのは?」
「ああ、実はね」燐はそこから川尻に社会見学でであったこと、その川尻から血生臭い匂いを感じ取った事を長四郎に伝えた。
「それだけの為だけに、俺を呼び出したの? ねぇ、ラモちゃん。バカなの? もう一度言う。バカなの?」
カチンときた燐は言葉よりも先に、長四郎のすねに蹴りを叩き込む。
「痛って!!」
長四郎は思わず反射で脚を挙げ机のウラに膝をぶつけてしまい悶絶する。
そのタイミングで、長四郎が注文した寿司を店員が個室に持ってきた。
「お客様、大丈夫ですか?」
涙目で自分の足を抑える長四郎にそう聞くと「大丈夫なんで気にしないでください」と長四郎よりも先に燐が答えた。
「はぁ」店員は不思議そうにしながら品を置いて部屋を後にした。
「早く食べなさいよ」
「誰のせいでこんな事になっていると思っているんだよ!」涙目の長四郎に「さぁ、誰のせいなんだろうね」と言いながら長四郎が頼んだウニを口に入れる。
長四郎が「あ、それ。俺の!!」と言うと「先に食べなかった。お前が悪い」と燐は長四郎を見下すような感じで首を回す。
「それで、その血生臭い会社員について調べろ。それが依頼?」
「まぁ、そんなところ。因みに何だけど」燐は地牛に調べて貰った情報を長四郎に見せる。
「ラモちゃん、これ社員情報だろ? どこで手に入れた?」
「出所は秘密。それより、ここ見て」
燐は川尻が住居している住所が書かれた場所を指差す。
「これがどうしたの?」
「血生臭いのは、家が鮮魚店や精肉店若しくは、レストランか何か。取り敢えず、生肉を扱う場所の近くに住んでいるからじゃないのかなって思ったんだけど」
「違ったのか?」
「うん」
燐は地牛に調べて貰った事を調べるために、学校を抜け出して調べてきたのだった。
「近くにそういったお店もなかった」悔しそうな顔を浮かべる燐。
「じゃあ、気のせいじゃないか?」長四郎はそう言いながら画面をスクロールさせていると並外商事の文字を発見する。
「この人、並外商事の人なの?」
「そうだけど。どうしたの?」
長四郎も流石に平凡の事件に繋がっているという推理は飛躍しすぎていると思い、出かけた言葉を吞み、目の前にある寿司を食べることにした。
「じゃ、ごちにになりまぁ~す」
長四郎は燐にそう断り食べようとしたら、皿事取り上げられ目にも止まらぬ速さで皿に載った寿司が燐の口の中に消えた。
「店員さん、おあいそ」
長四郎は反論する暇もなく燐は会計を済ませるのだった。
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