第拾伍話-異人

異人-1

「あ~退屈だぁ~」

 私立変蛇内高校に通う高校2年生の羅猛らもう りんは、背伸びをしながら大きな欠伸をする。

「燐さぁ、いつもそれ言っているじゃん」

 隣を歩く友人の海部うみべ リリが、呆れ口調で言う。

「だって、ホントの事なんだもん」

「まぁ、賢い燐には退屈なのかもね」

「何それ、皮肉ぅ~」

 燐がそう言った瞬間、2人の目の前に1台のスポーツカーが目の前に飛び出してきた。

「危なっ!」

 燐とリリは回避行動を素早く行った為、轢かれずにすんだ。

「ちょっと、危ないじゃない!!」燐が運転手に向かって注意する。

 だが、運転手は気にしないといった感じで屋根をオープンにし、姿を現す。

 運転手は、綺麗なブロンドヘア頭をした外人の女性であった。

「え・・・・・・」咄嗟に英語で文句を言おうと思ったのだが言葉に詰まっていると、「貴方が、リン・ラモウ?」と燐を見ながら流暢な日本語で話しかけてきた。

「日本語、喋れるんだ」燐が関心していると「そこじゃないでしょ」とリリがすかさずツッコミをいれる。

「そうですけど。あなたは?」

「私は、ミシェル・ガルシア。貴方にお願いがあって来たの」

「私にですか?」

「そうよ。チョウシロウ・アタミを紹介してい欲しいの」

「チョウシロウ・アタミ?」

 燐は誰の事か分からず首を傾げる。

「探偵さんの事でしょ」リリに耳打ちされ「あ、あー」と納得し、1人うんうんと頷く。

「時間が無いの。乗って」

「え、どうするの?」

 リリが心配そうに尋ねると「心配なら貴方も付いて来る?」ミシェルはリリにそう告げる。

「いや、私はぁ~」

「行きましょう」

「え! 行くの!!」

 リリの戸惑いも他所に、燐はミシェルのスポーツカーに乗り込む。

「じゃ、行ってくるから」

「あ、うん」そうリリが返事すると共に、スポーツカーは走り出した。

 そうして、ミシェルの運転するスポーツカーは長四郎の事務所近くのコインパーキングに駐車され長四郎の事務所へと向かう2人。

「あの、あいつとは面識があるんですか?」

 道中、燐は自分の疑問をミシェルにぶつけた。

「無いわよ。でも、優秀な探偵だと知り合いから聞いてね」

「知り合い・・・・・・」

「そう、知り合い」

 ミシェルはそう答えながら、長四郎の事務所の階段を上がっていく。

 長四郎の事務所の前に着いた2人は、事務所のドアに掲げられた看板を見て驚く。

 その看板には、「女子高生の客とその連れはお断り」と書かれていた。

「私、話せるのは得意なんだけど、字が読めないの」

「そうだったんですか。これは、Welcomeって意味なんで気にしないでください」

 燐はニコっと笑みを浮かべ、一瞬で般若の形相になりドアを開けて中に突入するのだった。

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