異人-2
「御用件は何でしょう」
「この男を探してもらいたいの」
ミシェルは該当の人物の写真が映ったスマホを見せた。
その写真に映っていたのは、アジア人の男であった。
「この人、日本人ですよね?」
「そうよ」燐の質問に、淡々と答えたミシェルは話を続ける。
「こいつの名前は、
「ふ~ん」
長四郎はへの口になり、ソファーの背もたれに身体を寄りかからせる。
「依頼を受けて貰えないの?」
「いや、わざわざ日本に来て男探すっていうのはなぁ」
「なぁ、て」
賛同を求める長四郎に、困り果てる燐。
「何か不都合な事でもあるの?」
「そんな事はないんですよ。只、並々ならぬ理由があると思ったんでね」
ミシェルは軽い溜息をつきハンドバックから1枚のカードケースを取り出し、真向かいに座る長四郎と燐に見せつける。
『バウンティハンター!!』2人は声を揃えて驚く。
「そうね。日本では珍しい職業だから驚いても無理はないわ」
読者の方に説明しよう。
バウンティハンターとは、賞金稼ぎのことである。
指名手配犯や犯罪者を合法的に逮捕し、警察から賞金を貰う事を生業にしている人達の事を指す。
詳しい事を知りたい方は、自分でググって調べてね♡
では、本編に戻ろう。
「という事は、この道前宗介って人は指名手配犯ってことですか?」
燐が質問すると、ミシェルは黙ったまま頷く。
「国際手配されていていないんすか。この人」
「されていない。こいつは、自分に捜査の手が及ばないよう犯罪を行い国外逃亡した」
「で、ミシェルさんは道前が犯人だという確たる証拠を持って捕まえに来たって事か」
「流石、名探偵ね。その通りよ」
「この人は、一体何したんですか?」
「殺人よ」
そう答えるミシェルの目は、冷酷な目をしていた。
「成程。でも、手配犯でもない奴を捕まえるのは如何なものなのか?」
「どういう事?」
「手配犯若しくは礼状が下りた状態だと、合法的に捕まえられるかもしれない。でもさ、そんなのがない状態で捕まえたらOUTでしょ」
「その点は大丈夫。もうすぐ、本国で逮捕令状の申請が通る手筈になっているから」
「それ聞いて、安心した。とでも言うと思ったか!」長四郎がミシェルを怒鳴りつける。
「うるさい!」燐に頭を叩かれる長四郎。
「どうやら、私の依頼は受けて貰えないようね」
ミシェルは依頼を引き受けてもらえないと踏んで、座っていたソファーから立ち上がる。「あ、待って下さい」
燐はすぐ様、ミシェルを引き留めようとする。
「良いわ。自分で探すから、ありがとう」
ミシェルは燐の気遣いに感謝し、事務所を出て行こうとする。
「ミシェルさん、観光案内ならいつでも引き受けますから。連絡先を交換しましょう」
長四郎はスマホをちらつかせながら、ミシェルに声を掛ける。
ミシェルは、フっと微笑むと長四郎に近づくとスマホを取り出して連絡先を交換する。
「貴方、面白い人ね」
「そら、どうも」
連絡先を交換し終えたミシェルは、熱海探偵事務所を後にした。
「あーあ、行っちゃった。良かったの? 」
「良かったんじゃね?」
長四郎はそう答えながら、TVの電源を入れ動画配信サービスのアプリを開き、燐が訪ねてくるまで見ていた番組の再生を始めるのだった。
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