帰国-4
「それで俺にどうしろってぇ~の。ラモちゃん」
長四郎はロビーに置いてある共用のソファーに勇仁と共に腰掛けた。
「勿論、事件解決よ」
「事件解決って。お爺様はどう思われます?」長四郎は勇仁に意見を伺う。
「そんな難しい事件じゃないし。長さんの力は必要ないと思うけどなぁ~」
「でも、あれだけの人が居て銃を撃つなんて出来ますか?」
「出来るでしょ」
「長さんの言う通りだぜ。燐も会場に居たから分かるけど騒がしかったろ。曲もガンガンにかかっていたし。サイレンサー若しくは小銃の音位だったら上手いこと誤魔化せるか? いやでも、音が響くかなぁ~」
「分っているんじゃん。お爺様」
「そのお爺様って言うのは辞めてよ」
「なんて呼べば?」
「そうだなぁ~気さくに勇仁って呼んで」
「呼び捨てかよ」燐はボソッと呟く。
「了解」
「よしっ、これから飯でも行かない?」
勇仁は二人をご飯に誘うと、三人の横を私服姿の習子が通り過ぎて行く。
「習子ちゃん、一緒にご飯行かない?」
勇仁はソファーの背もたれに、もたれかかるよう振り向き声を掛ける。
恐ろしものを見るかのように、習子はゆっくりと振り返る。
「結構です」
「そう言わずに気晴らしに美味しいもん食べない?」
勇仁はそう言って、立ち上がると習子の横に立つ。
「いや、でも・・・・・・・」
「お爺様、やめてください!! 恥ずかしい」
燐は勇仁を𠮟責する。
「ふぁ~い」
「ふぁ~いじゃない。ふぁい!!!」
「ふぁい!!!!」
燐にそう言われ勇仁は直立で元気に返事する。
「あの、もう宜しいでしょうか?」
「どうぞ、迷惑かけてすいません!」
燐は習子に謝罪し、習子はその場を後にしようとするが長四郎がその前に立ちはだかる。
「何でしょう?」
「お姉さん、いい匂いしますね」
「へ?」見知らぬ男にそう言われ、変な声を出す習子。
燐は呆れかえり、溜息をつきながら手で顔を覆う。
「何というか独特な香水? のようだね」
長四郎が言った瞬間、習子の目が泳ぐ。
「何の香水使っているの?」
「いい加減にしなさいよ!」
燐はいつも通り、長四郎の耳を引っ張りあげる。
「痛たたたたたたたた」
すると、習子が膝から崩れ落ちた。
「どうしました?」
燐が習子に触れると、習子の身体は小刻みに震えていた。
「はぁはぁ」かなり呼吸が乱れていた。
「ラモちゃん、救急車」
「分かった」
燐はすぐに救急車を呼ぶ。
長四郎は過呼吸の症状が出ている習子に適確な処置をして、救急車の到着を待つ。
10分後、救急車が到着し習子は近くの病院に運ばれていった。
燐と絢巡査長が習子の付き添いで病院に向かう事になり、習子が運ばれる救急車を見送った長四郎は「さ、調べに行くか?」と呟きホテルに戻る。
「一川さん、ここの従業員の更衣室ってどこですか?」
事件現場で鑑識から報告を受けていた一川警部に話しかける。
「更衣室? これまたどうして?」
「良いから。事件に繋がる証拠があるかもだから早くして」
勇仁がすかさずフォローを入れる。
「あ、貴方は!!!」
「あ、そういうの良いから。早く」
一川警部は勇仁の事を知っているようだったが、勇仁は相手にしないと言った感じで早くするよう促すと一川警部は長四郎達を更衣室へと移動する。
更衣室に着くと躊躇なく女性更衣室のドアを開けて中に入る長四郎と勇仁。
二人は二手に分かれて習子のロッカーを探す。
「あった!!」
先に見つけたのは長四郎であった。
ロッカーには鍵がかかっていなかった為、すぐに開けられた。
中には何も入っておらず、もぬけの殻の状態だった。
「Goddamm!!」
悔しながらバンッとロッカーの扉を強く閉める。
「ダメだったか?」
「ダメっす」
勇仁にそう答えた長四郎は更衣室を出る。
「長さん、何を探しとると?」更衣室の前で待っていた一川警部は、長四郎達が探している捜索物について尋ねる。
「服です。服」
「服?」
「金衛門さんを殺したのは彼女だ。彼女が着ていた服に硝煙反応が出るはずぅ~」
勇仁はそう言って、走り出す。
「あ、勇仁。抜け駆けは許さねぇぞ」
長四郎も走って後を追う。
ホテルのゴミステーションに着いた二人は、ゴミ袋を開けては閉めてを繰り返して衣服を探す。
「あった。あった」
衣服を見つけたのは、勇仁であった。
「マジかよ」
長四郎は開けたゴミ袋をほっぽり出して、勇仁の元へ移動する。
「あ~硝煙の臭い~」
「あ~本当だぁ~」
長四郎も勇仁の意見に同意する。
消臭剤で誤魔化しているようだったが、微かに硝煙の臭いが残っていた。
「勇仁、銃は。銃」
「そうだった。そうだった」
袋の中を漁るが銃は発見出来なかった。
「そうそう無いか。どこだ」勇仁がそう言う横で長四郎はいつものぶつぶつ独り言大会が始まっていた。
「長さん、あった?」
今、現場に到着した一川警部がそう質問すると考え事している長四郎に代わって勇仁が「ありましたよ。はい、これ」と言って袋に入った服を見せる。
「失礼」そう断りを入れ、一川警部は袋に入っている服の匂いを嗅ぐ。
「あ、ホントね。臭いするばい」
「するばい。するばい」そう勇仁が相槌を打つ。
「よう分かりましたね」
「まぁね」と嬉しそうに答える勇仁。
「あ、もしもし。ラモちゃん?」
長四郎は考え事が済んだらしく今度は燐に電話していた。
「うん、うん。あのさ、頼みたいことがあるんだけど・・・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます