能力-1
その日、燐が通う変蛇内高校はテレビの観覧に招待され変蛇内高校の二年生が参加する為、高校の近所にある変蛇内フォーラムの講演会場へと来ていた。
「おい! 静かにしろ!!」
変蛇内高校勤務の熱血教師は、生徒達を一喝する。
しかし、生徒達がうるさいと言うより、他の観覧客の方がうるさかったのだ。
この熱血教師は自分が仕事しているアピールの為だけに、生徒を怒鳴り散らしているようだった。
「オメーが一番、うるさいんだよ」
「それな」
リリもその意見に賛同すると「おい、そこ!!!」熱血教師は獲物を見つけたと言わんばかりに燐達の元へと飛んできた。
「また、お前か! 羅猛!!」
熱血教師は嬉しそうに燐を怒鳴りつける。
以前、この熱血教師の股間に蹴りを入れたことがあり、それ以来より目を付けられるようになった。
詳しく知りたい方は「探偵は女子高生と共にやって来る。」第伍話-支援を読んで下さい♡
では、本編に戻ろう。
「まーた、始まったよ」
「なんだ。その態度は!!」
こいつはいつも声を張り上げてるのに、よく声が枯れないな。燐はそう思いながら喚き続ける熱血教師の話を聞き流す。
「おい、聞いてるのか!!」
「聞いてません」燐のその一言に周りに居る生徒、他の観覧客は肩を揺らし始める。
「ぬわにをぉぉぉぉぉ」
熱血教師の怒りがピークに達した時、「会場になりまぁ~す」スタッフの入場の案内を開始する。
燐達はスタッフに案内されるまま会場に入り、指定の席の座る変蛇内高校の生徒達。
「ラッキーだったね」
「マジ、それな」
今度はリリの意見に燐が賛同する。
燐達が座ったのは、最前列から二番目の列の席であった。
「では、本番前の注意事項でぇ~す」
スタッフが盗撮、盗聴の禁止、撮影の妨害になる行為をしないといった禁止事項の説明があり、「タレントさんがもう間もなく出てきますので、盛大な拍手でお迎えくださーい!!」そう言ってスタッフは舞台袖にはけって行った。
スタッフと入れ替わる形で、今日の番組の出演者が出てきた。
司会進行役のお笑い芸人・脂身スタアの
「今日は宜しくお願い致しますぅー」関西弁で今日の客に挨拶するほいやに「ボケろや。お前芸人か?」とツッコミを入れる。
すると、観客席から笑いが生まれ始める。
そこから脂身スタアの漫談で客席を温め、頃合いが良くなり本番がスタートする。
『サイキック木馬スペシャル~サイキック木馬の秘密~スタートです!!』
脂身スタアの号令と共に番組収録は開始された。
再度、番組用にゲストの紹介を脂身スタアの二人が行い「今日の観覧客もスペシャルです!! 近所の変蛇内高校の皆さんが来てくれましたぁ~」と安物が紹介すると変蛇内高校の生徒達は歓声の声を上げて自身をアピールする。
そこから、サイキック木馬の能力紹介の動画が流れ始める。
15分程、サイキック木馬の動画を見て、ほいやが美緒に動画の感想を求める。
「どうでしたか? 美緒さん」
「えー凄いですねー これが間近で見れるかと思うとなんかドキドキです」
美緒がそう答えると燐はチっと舌打ちする。
「燐。あのタイプの女、嫌いだもんね」
小声でそっと耳打ちするリリに頷いて返事する燐。
演者たちは超能力の歴史のVTRを観ながら相槌を打ったりしている。
それが終わると「さ、これからサイキック木馬の超能力を解明していこうと思います!」安物が元気よくカメラに向かって宣言した。
「セットチェンジでぇ~す。観覧客の皆様、20分の休憩後、再開ですので宜しくお願い致します」
スタッフは観覧客にそう告げ、次の準備に取り掛かり始めた。
「休憩だってさ」
燐は内心、飽きたと思っていた。
「あ~その顔は飽きたって言っているな」
「バレた?」
リリに見透かされて、ギョッとした顔でリリを見る燐。
20分後、準備が整ったらしく撮影は再開された。
「さ、ここからはサイキック木馬の能力を間近で体験しよう。
という事で、サイキック木馬に登場してもらいましょう」
超低温炭酸ガスを噴き出すスモークマシンの間からサイキック木馬は姿を現した。
今日の出で立ちは、普段と違いテレビ仕様になっており髪は茶髪に染めジャニーズのようにワックスでイケイケにセットし、服も煌びやかなシャツを着飾ってトレードマークのサングラスは健在であった。
「サイキック木馬。今日は何を見せてくれるんですか?」安物が本題を切り出した。
「今日は透視をお見せします」
「透視ですか?」ほいやもすかさずそれに反応する。
「そう、透視です」
「何を透視するの?」標場が透視の対象について質問した。
「今日、ここに居るはずの大学教授です」
「大学教授? そう言えば、検証するというのに姿が見えないな」標場は壇上をキョロキョロと見渡す。
燐はそれを見て、少し嫌な予感がした。
「ですから、こちらの番組で捜索して欲しいというのが依頼です」
「ほう」興味深そうに頷く標場。
「では、お願いします!!」
スタッフのGOサインを舞台袖で見たほいやが宣言する。
サイキック木馬は下を向き、身体を小刻みに震わせ始めた。
「う~」っという唸り声を出し2分程が経過した辺りで「見つけました!!」と叫ぶサイキック木馬。
「何処にいるんですか?」ほいやの質問に他の演者も食いつくようにサイキック木馬を見る。
「大学教授はこの会場に居ます」
「どこに?」
安物が聞いた瞬間、上から何かが降ってきた。
鈍い音と共にそれは地面に着地した。
「きゃあ~!!!!」美緒の悲鳴が会場に響き渡る。
観覧客の一人が「ひ、人だ!!!」そう言った途端に観覧客達はパニックを起こす。
燐は前列席を跨ぐ形で飛び込むとすぐ舞台に昇り、現状を把握する。
そこに倒れていたのは、お茶の水博士の様なハゲ頭をした中年男性であった。
燐は呆然と突っ立っているほいやのピンマイクを取り上げ、出入口で詰まっている観覧客達に向かってこう叫んだ。
「出て行くな!!! 戻れ!!!!」
その怒号に冷静さを欠いていた観覧客達は落ち着きを取り戻したようであった。
「スタッフ!! 逃げた奴を連れ戻せ!!!」
燐のその言葉にスタッフは先に出ていった観覧客の後を追い始めた。
「羅猛!! 早く舞台から降りろ!!!」
熱血教師もまた燐に負けないくらいの声量で、舞台に近づいて来るその前にリリが立ちはだかる。
「な、なんだ?」いきなり、立ちはだかるリリに戸惑う熱血教師。
「失礼します」
リリはそう断って裏拳を熱血教師にお見舞いして黙らせると燐の方を向きOKサインをする。
燐は早速、警察に電話しているらしく電話しながらリリにOKサインを返すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます