御祭-21
国巳のマンションで収穫した写真を手土産に警視庁を訪れた長四郎、燐、明野巡査の三人。
「お邪魔しまぁ~す」
命捜班・第二班の部屋のドアを開ける長四郎。
「探偵さん。いらっしゃい」
遊原巡査はぶっきらぼうに挨拶し、モニターに視線を戻す。
「あ、来たの?」と新聞から目を離し、佐藤田警部補が三人に声を掛ける。
「佐藤田さん。お願いがあるんですけど」
長四郎は佐藤田警部補の席へ移動しながら、用件を話始める。
「お願い?」
「車とバイクの持ち主の照会をお願いしたいんですけど」
「それは良いけど・・・・・・」
そう言いながら、作業している遊原巡査に目を向ける。
遊原巡査はこれ以上、仕事を増やすのかといった顔で佐藤田警部補を睨むと佐藤田警部補はさっと新聞で顔を隠して口を噤む。
「あの、もしよろしければ私が照会作業をしても?」
明野巡査の提案に一瞬だけ顔を上げた佐藤田警部補が「あ、じゃあ、やって」と提案を受け入れた。
「佐藤田さん。パソコンをお借りしたいんですけど・・・・・・」
やるのは構わないが照会作業をできるパソコンがなければ、仕事ができない。
明野巡査が困っていると「そこのパソコン使えよ」と遊原巡査が座る席の対面の机の上に置いてあるノートパソコンを指さす。
「じゃ、それ使って」佐藤田警部補に言われた明野巡査は「はいっ!!」と元気に返事する。
「ラモちゃんも泉ちゃんを手伝ってあげて。それと遊原君にお飲み物をお出しして」
「うん、分かった。って言うと思ったか。バカ」
燐の口撃に長四郎はビックリした顔をする。
「あんたも手伝うんだよ」
「いや、俺にはやる事が」
「つべこべ言わずにやれや? 先ずは、買い出しな?」
ドスの効いた声を出し、長四郎の胸ぐらを掴んだ燐が恫喝する。
「へい。一生懸命やらせて頂きます」
半べそをかいた長四郎は人数分の飲み物、食料の買い出しへと向かった。
そんな光景を見ていた遊原巡査が小声で明野巡査に声を掛ける。
「なぁ、あの二人はいつもあんな感じなのか?」
「多分」
「多分ってどういうことだよ。長い付き合いなんだろ?」
「とんでもない。私も今回の事件から関わっているだけで」
「え! そうだったの!?」
「何を驚いてんですか?」
小声で燐が二人の会話に入ってきた。
「うわぁ!!」
大の大人が大きな声を出して驚く。
「何、どうしたの?」驚きのあまりぎょっとした顔をする佐藤田警部補。
「な、なんでもありませんから」明野巡査は愛想笑いを浮かべ適当に誤魔化す。
「あ、そう」
佐藤田警部補は気にもとめない感じで新聞に視線を戻す。
「で、何話していたんですか?」
「さ、仕事。仕事」
「よしっ、やるか!」
燐の質問に答える事なく、自分のすべき事に集中し始める。
燐は明野巡査の横に座り、照会作業のサポートを始める。
作業を始めて一時間が経過した頃、長四郎が大きなレジ袋を両手に抱えて戻ってきた。
「あ~ 疲れた」
重いレジ袋を机の上にドンッと置いた。
佐藤田警部補は椅子から立ち上がり、長四郎が購入してきた物を物色し始める。
「で、何か分かりました?」
長四郎は佐藤田警部補に質問すると、首を横に振る。
「あった! これだ!!!」
明野巡査が嬉しそうな声を上げる。
「見つかったようだな」
長四郎は待っていたと言わんばかりの顔で明野巡査の席へ移動する。
「で、どの車だった?」
「はい。このBMWです」明野巡査は、ナンバープレートから出される情報と駐車場で撮影した写真を並べて説明する。
「BMWね。悪いが写真を俺のスマホに転送してくれるか?」
「はい」
明野巡査はすぐに写真を長四郎のスマホに送った。
「Thank you.」
長四郎は写真を確認すると、何も言わず部屋を出ていった。
「行っちゃったね」佐藤田警部補は吞気にそんな事を言う。
「行っちゃったね。じゃないでしょ」佐藤田警部補にツッコミを入れ「泉ちゃん。後を追うよ」と燐は長四郎の後を追おうとする。
が、佐藤田警部補に肩をガっと掴まれ止められる。
「な、何すんのよ!」
「悪いんだけど。こっちの仕事、手伝ってもらえるかな? 明野もな」
佐藤田警部補は今も一人で病院から貰ってきた膨大な資料に目を通す遊原巡査に目を向け女子二人に協力を願い出るのだった。
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