御祭-20

 長四郎、燐、明野巡査の三人は、国巳に接触する為に国巳が住むマンションへと訪れていた。

「ねぇ、考えもなしにここへ来て大丈夫なの?」

 燐は長四郎にそう質問すると「う~ん。分かんない」と平気で答える。

「探偵さん。この前みたいに聞きこむってのはどうですかね?」明野巡査が提案する。

「泉ちゃん。モンペが居る家庭だぜ。今度、お家に伺ってみろ。警察に居られなくなるよ」

「ま、まさか・・・・・・」

 顔を引きつらせ困惑する明野巡査。

「不安がらさせるような事、言わないの!」

 燐に後頭部を引っ叩かれる長四郎。

「でも、部屋に行くのは悪手かも。こいつの通り、警視庁にクレーム入れられるかも」

「どうしようか」

 明野巡査と燐は眉間に皺を寄せて考えこんでいると、長四郎はそんな女子二人を置いて一人ふらふらと歩き出す。

「あ、ちょっと! どこ行くの!!」

 燐の言葉に答える事なく長四郎は一人てくてく歩を進めていく。

「ったく、また単独行動だ」

「ラモちゃん。言ってないで追いかけよう」

 明野巡査はすぐに長四郎の後を追う。

「探偵さん。どこに行くんですか?」

「どこって、どこだろうねぇ~」

「真面目に答えなさい」燐に怒られ「では、お答えします。駐車場に向かいます」長四郎は面倒くさそうに答えた。

「駐車場?」

「あ、共犯者探しか!」明野巡査はそこで気づき、手をポンっと叩く。

「最初からそう言いなよ。本当に面倒くさい」

 燐のその言葉に明野巡査はうんうんと頷いて賛同する。

 一人、バツが悪そうな長四郎は咳払いして誤魔化す。

 三人はマンションの地下駐車場へと移動した。

「さ、車を探しますか!」燐は自分を鼓舞するように発言した。

 だが、長四郎は真逆の反応だった。

「ラモちゃん。車を探したって意味はないよ」

「なんで? 共犯者の車を探した方が」

「共犯者って。大方、察せるでしょ?」

「国巳の両親」

「泉ちゃん。大正解」

「ありがとうございます」

「じゃあ、その両親が所有する車を探さないと」

「そんなのはすぐに分かるんだからさ」

「じゃあ、何するの?」

「俺の目当てはあっちだ」

 長四郎が指さしたのは、バイクの駐輪場であった。

「バイクですか?」

「Yeah.」

「バイクが何だって言うんだよ」

「あ、高校生であればバイクの免許は取得できるし、あんな大きな箱でも一人移送できる!」

「泉ちゃん。警察辞めて俺の助手にならない?」

「遠慮しておきます」

「そぉ? 変な女子高生より、お役に立ってるよ」

 長四郎がそう言って燐に視線を移すと、般若の顔で長四郎を見ていた。

「オ~マイ、般若」言うと同時に、長四郎は燐の鉄拳がその端正な顔を歪ませる。

「綺麗なパンチだなぁ~」

 燐が繰り出したパンチのフォームを見て明野巡査は感心する。

「じゃ、国巳のバイク探しましょうか」

「うん」

 女子二人は、国巳のバイクを探し始める。

「お二人さん。そんなやみくもに探しても見つからないよ」

 長四郎は駐輪されているバイクを一台ずつ監視する女子二人に話しかける。

「うるさいなぁ」

「邪魔しないでください」

「あのね。そんなにバイクをまじまじと見つめても不審がられて通報されるだけだよ」

「じゃ、どうしろって言うの?」

「はぁ~」と長四郎はため息を吐いてから話し始めた。

「良いか? ここに駐輪してあるバイクの写真を撮影してだな。ナンバープレートから持ち主を照会できるでしょ? それに車だって同じ方法で割り出せるし。そこで、確認が取れれば目撃証言を取りに行く。こういう事をしなきゃ」

「成程ぉ~」

 明野巡査が感心していると、燐はすぐさま写真を撮影し始める。

「さ、パッとやってズラかるよ」

 長四郎と明野巡査も作業に取り掛かった。

 そんな三人を駐車場へに通ずるエレベーターホールから見つめる国巳の目は、普段は見せない鋭い目つきであった。

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