議員-18
長四郎の依頼を受けた一川警部と絢巡査長は、スーツの男の身元調査を行なっていた。
「私達、捜査本部と違った捜査して大丈夫なんですかね?」
「絢ちゃん、いつもの事じゃない」
「それもそうですね」
「でも、この男何も何やろうね? 前科歴なし。交通違反歴もないけん。まさしく謎の男」
「そうですね」
「でも、長さんが目をつけたって事は、事件と繋がりがあるやろうね」
「一川さん。これ、私の推測ですけど議員関係者じゃないですかね?」
「あ〜 絢ちゃん。目の付け所が違うね。その可能性大いにありと見た。絢ちゃん、捜査宜しく」
「はい、分かりました。行ってきます」
絢巡査長はすぐさま、バッグを手に取り議員会館へと向かった。
一方、長四郎と燐は小岩の尾行を続けていた。
小岩は例の男と別れて一人、喫茶店で珈琲を飲みながらノートパソコンで何か作業をしていた。
長四郎と燐は、小岩に気づかれないかつそこそこ近い席に座り、監視を続ける。
「何してんだろ?」
「今日の打ち合わせの記録でも付けてるんじゃないの?」
長四郎はそう答えながら、その店自慢のパフェを食べる。
「まめなものね」
「そうでなけりゃ、議員秘書は務まらないでしょ」
「そうだね」
「で、あの男について何か思い出した?」
「いいや」
「早く思い出してよ」
「なんで、急かすのよ」
「急かすのには、理由があるからだよ〜 てか、このパフェ滅茶苦茶美味しいぞ」
「じゃあ、私も頼もうかな?」
「頼め、頼め」
「すいませぇ〜ん」
燐は手を挙げて、店員を呼びパフェを注文するのだった。
「あ、美味しい!」
パフェを食べた燐が嬉しそうに長四郎に報告するのだったが、長四郎は返事をせず小岩の方に視線を向けていた。
「ねぇ、聞いてる?」
「聞いてる、聞いてる。あの人、オンライン会議やってない?」
長四郎にそう言われた燐は小岩の方へ目を向けると、先程までしていなかったワイヤレスイヤホンをつけて誰かと話しているようだった。
しかも、怖い顔つきで。
「何、話しているんだろ?」
「それが分かれば苦労はせんよ」
「それもそうね」
「さ、奴は一体、何を話しているんでしょうか。ちょっと、聞き耳を」
小岩はカメラオフの相手と話をしていた。
「はい、計画は順調です。先生」
「例の探偵は、大丈夫なのか?」
「問題ないかと、聞いていたより無能でしたから」
「そうか。なら、安心だ。この日本を変えるためには君の力が必要だ」
「分かっております。これに慢心せず頑張りします」
「頼むよ」
通話の相手はそう言って、通話を終了させた。
「ふぅ〜」と息を吐く小岩は「バカな奴、利用されているのはテメェだってのに」と呟き、ノートパソコンの電源を落とし、バッグにノートパソコンをしまいレジへと向かう。
尾行を続けなければならないので、燐は大慌てでパフェを口の中にかき込むのだった。
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