行方-4
長四郎と絢巡査長は燐が誘拐されたであろう場所に来ていた。
この情報は依頼を持って来た成美からの情報であり、誘拐された場面を目撃した訳ではないので確固たるものではなかったが一応、確かめに来たのだ。
「長さん。ここで誘拐されたと思います?」
絢巡査長のここというのは、池袋駅と併設されているデパートであった。
「小さい子供ならまだしもラモちゃんみたいな大きな子がねぇ~」
「そうですよねぇ~」
二人はそう言いながら、デパートを巡り歩く。
「ラモちゃん。ここで何していたんだろ?」
「知らね」長四郎は素っ気ない返事をする。
その頃、燐の足取りを追う事になった遊原巡査と明野巡査は燐が通う変蛇内高校を訪れていた。
「泉ちゃん」
廊下を歩いていると声を掛けられた明野巡査。
「あ、リリちゃん。元気してた?」明野巡査は燐の数少ない友人の一人、海部 リリに駆け寄る。
「元気。元気。ホントに刑事になったんだ」
スーツ姿の明野巡査を見て、ほえ~っとした顔をするするリリ。
「ねぇ、ラモちゃんが今何してるとかって知っている?」
「知らない。てか、何でそんなこと聞くの?」
「いやぁ~ ほら、そのなんていうのかな? あはははは」愛想笑いをして誤魔化す明野巡査。
「何か隠しているでしょ?」
「隠してない。隠してない」
「実は彼女誘拐されたんだって」遊原巡査があっさりと喋った。
「ちょっと!」
「噓!? 燐、誘拐されたの」
「そうみたい・・・・・・」
「あのバカ共が焚き付けるからだよ」リリは手で顔を覆い呆れる。
「ねぇ、何があったの?」
「実はさ・・・・・・」
事が起きたのは、三日前であった。
その日、燐はキチンと授業を受け何気ない日常を送るはずだったがそうはならなかった。
それは昼休みに事が動いた。
「探偵ごっこでもしない?」クラスの陽キャ集団の一人がそう大きな声で話し始めた。
「良いね。やろうやろう」仲間が賛同しながら燐をチラチラ見る。
「何やる?」
「知っているかな。Tiktokで見た女の誘拐事件でも追わない?」
「良いねぇ~」
「で、どうやる?」
陽キャグループは燐に敢えて聞こえるように喋り続ける。だが、燐もそこまでバカではない。
「あんたら、あたしに喧嘩売っているの?」
前言撤回。バカだったのだ。
「喧嘩なんか売ってないし。何、ムキになってんの?」
「ムキになんてなってないし。あんたらこそ、ドラマみたいなことしていると痛い目見るよ」
「痛い目だって。ウケる」
陽キャグループは大笑いする。
燐は黙らせるように、拳を机に叩きつける。
「マ、マジになんなよ・・・・・・」
「ああ?」ドスの効いた声を出し、陽キャグループを睨み付ける。
「あ、あんたさ。そんな偉そうなこと言うなら事件解決してみなさいよ」
「はぁ?」
「そうだ。そうだ」
「学校サボって、事件解決してるんでしょ? 偉そうなこと言うなら、解決してみせてよ!!」
「そーだ。そーだ」
そこから陽キャグループの「そーだ」コールが始まった。
「受けてやろうじゃない。但し、条件がある」
「条件って何?」
「私が事件を解決した時には、丸坊主な。女子だろうが関係ないから」
「良いよ。こちらも条件を出す」
「何?」
「探偵は使わない。俺達、知っているんだぜ? 変な探偵とつるんでいるの」
「良いよ。あんなの居なくたって私一人で事件を解決してみせるから」
燐はそう啖呵を切って教室を出ていった。
「てな事があったわけよ」
説明し終えたリリは刑事二人の反応を確かめる。
明野巡査は真剣な眼差しでリリの話を聞いていたが、遊原巡査はスマホをポチポチ操作していた。
「ちょっと」明野巡査は遊原巡査を肘で軽く小突く。
「お、悪い。悪い」
「ありがとう」
「気にしないで。じゃ、行くね」そう言って、リリは教室へ戻っていった。
「収穫無しかぁ~」肩を落とす明野巡査に対して「そんなことないだろ?」と遊原巡査が言う。
「え、何か分かったの?」
「Tiktokだよ。Tiktok」
遊原巡査は一人先に歩いていくので明野巡査も取り敢えず付いて行くのだった。
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