帰国-2
パーティー会場に入ると、バイキング形式でグラス片手に大勢の正装した大人たちが立食しながら話し合っていた。
燐はこのパーティーに参加している自分が場違いなような気がして、仕方なかった。
「それでですね」とウエイターが説明してくれてはいるのだが、燐は緊張のあまり話があまり入ってこなかった。
「以上が、今回のパーティーのシステムです」説明を終えたウエイターは自分の仕事に戻ろうとするのを「ちょっと、良いかな」と勇仁が呼び止める。
「はい、何でしょう?」
「君の名前、教えて欲しいな」そう言いながら名刺を渡す。
「あっ、頂戴します」名刺を受け取り申し訳なさそうに「私、
「ああ、良いの。良いの。君、可愛いから今度、デートしよう」
「えっ!」いきなりのナンパに思わず変な声を出す習子。
「ここにお兄さんのLINEのアカウントのQRコードが書いてあるから気が向いたら友達申請してね」
そう言った瞬間、勇仁の足の甲に強い衝撃が襲った。
「んっ、ぎゃっ!!」勇仁が自分の足元に視線を落とすと、燐のハイヒールの踵部分で踏みつけられていた。
「ごめんなさい。この人、ボケ始めちゃってて」燐は言訳しながら、習子から勇仁の名刺を取り上げる。
「ご迷惑をおかけしてすいませんでした」
「では、失礼します」
習子は自分の仕事に戻って行った。
「何すんだよ~燐」
「ホントっに恥ずかしいからやめてください! お爺様」
「え~」
「これ以上、グダグダ言うならお婆様に報告します」
燐はスマホを耳に当て、電話を掛ける準備をする。
「分かりました。分かりました。大人しくしておきます」
参りましたといった感じで、燐の言う事に従う勇仁。
燐はバイキングの料理を皿に一杯盛り付け、パーティー会場の隅っこで食べ始める。
一方の勇仁は知り合いの経営者達に軽く挨拶を交わしていた。
胃に料理を流し込む燐に「君、一杯食べるね」と声を掛けられた。
声の方を向くと30代半ばの若作りをした男がそこに立っていた。
口に含んだ物を流し込み「あ、はい」とだけ返事する。
「俺さ、こういう者なんだけど。今度、デートしない?」
男は名刺を渡してきたので、燐は恐る恐る受け取る。
「俺、
「羅猛 燐です」
「羅猛。珍しい苗字だね」
「は、はぁ」
燐は心の中で早く去れ。そう思うが蒼間は話を続ける。
「君、経営者って感じではないけど。誰かの付き添い?」
「そうですけど」
ひたすら、冷めた反応を続ける燐。
それでもめげず諦めず育哉は、ナンパを辞めない。
「俺、AOMAの社長やっていてさぁ~」
燐があまりにも反応を示さないので、自分の華やかしい経歴を話し始める。
そろそろぶっ飛ばしてやろうかと思っていると、「あら、ラモちゃんじゃない?」聞き覚えのある声がしたのでそちらを見ると
この夫人は、「探偵は女子高生と共にやって来る。」第伍話-支援に出てくる謎の富豪の女性である。
詳しく知りたい方は第伍話を読んでくださぁ~い。
以上、露骨でウザイ作者の宣伝でした。ここからは「探偵は女子高生と共にやって来る。」第捌話をお楽しみください。
「あ、夫人!! お久しぶりです」
燐も助かったと言わんばかりの表情で夫人の元へと駆け寄る。
「今日はどうしたの? あいつも来てるの?」
夫人の言うあいつとは、長四郎のことである。
「いや、来てませんよ。あんな貧乏探偵がこんな所に招待されるわけないじゃないですかぁ~」
「それもそうね」
大きく笑いあう二人を見て、蒼間はチっと舌打ちしてどこかへ去っていった。
「それでは主催者の賀美 金衛門様からご挨拶を賜りたいと思います」
パーティーの司会者がそう言うと賑やかだった会場が静まり返り主催者の上がるであろう壇上に参加者全員が目を向ける。
だが、金衛門は姿を見せない。
主催者側の人間達が何やら慌てふためき始めるのが見えた。
「どうしたんだろう」燐の言葉に「そうね」と夫人は相槌を打つ。
すると「きゃあー」という女性の悲鳴が会場に響き渡った。
燐は声がした壇上横にある関係者入口に向かって走り出す。
「すいません、通ります」と野次馬を参加者を搔き分けて関係者入口に辿り着くともう先に勇仁がそこに居た。
関係者入口に入ろうとする燐に「見ない方がいい」と制止する勇仁。
だが燐は「私、大丈夫ですから」とだけ答え関係者入口のドアを開ける。
そこには70代程の男性が通路で、仰向けに頭から血を流しながら倒れていた。
「これ・・・・・・」燐もあまりの惨状に絶句する。
「あまり見ない方がいい」
勇仁は燐を関係者入口から離すと入れ違いで30代の男が関係者入口に入って行く。
中から「父さん!! 父さん!!」と声が聞こえてきた。
「燐、ここで待ってろよ」
勇仁はそう言い壇上に上り、司会者からマイクを受け取ると参加者に向かって話し始めた。
「え~ご参加の皆様、アクシデントが発生しました。皆様にはこの会場に留まってもらえますでしょうか?」そこから、勇仁は冷静に参加者のこれからの行動について指示をした。
その間に燐は一川警部に通報した。
参加者達も勇仁の指示に従い、警察の到着を待つ。
「燐大丈夫か?」指示を終えた勇仁は壇上から降りると燐にそう声をかけた。
「はい、大丈夫です。お爺様。今、私の知り合いの刑事さんに連絡先したので」
「そう。ありがとう」
勇仁は礼を言い、警察の到着を待つのだった。
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