映画-20
「ふぅ~」
長四郎は息を吐きながら、燐の家のソファーに腰を下ろす。
里奈と少し世間話をしながらケーキを食べた後、燐の部屋へ家庭訪問する形となった。
「何か、飲む?」
燐が冷蔵庫を開けながら、長四郎に飲み物を出そうとする。
「いや、飲まねぇよ。なんで、人が綺麗にした部屋が約6割程元の状態に戻ってるわけ?」
「そんな事、私が知るか!!」
「ストロンガーかお前は」
「はぁ? 何それ」
「まぁ、特撮オタクにだけは分かるネタだから。気にするな」
「あんたって、特撮オタクだったんだ・・・・・・」少し引いている燐。
「そんな事より、掃除するぞ。掃除」
「嫌だよ」
「嫌じゃない。これから、一川さん達が来るんだから。こんな汚い部屋を見せられないでしょ」
「ちょっと!! 勝手に呼ばないでしょ!!!」
「そんな事、俺が知るか」
そこから長四郎と燐は、掃除を開始した。
2時間後、2人は青春ムービーのように並んで寝そべり互いの健闘を称えるような感じで天井を見ていた。
「終わったな」と長四郎。
「終わったね」と燐。
そこから、無言のまま時が流れる。
「あ~気持ち悪い!!!」
長四郎は耐えきれなくなり、上半身を起こすと同じくして、インターホンが鳴る。
「来たかっ!!」
長四郎は真っ先に、インターホンの受話器で応答する。
「はい、今開けます」
一階の自動ドアのロックを解除し、マンション内に一川警部達を入れる。
それから5分後、燐の部屋のチャイムが鳴った。
「はい。今、開けまぁ~す」
長四郎は、玄関へ向かう。
そして、一川警部と絢巡査長を連れてリビングに入ってきたと同時に燐は華麗に立ち上がる。
「いらっしゃいませ」
燐は渋い声を出しながら、一川警部達を出迎える。
「お邪魔させてもらいますぅ~」
一川警部は自分の家のようにリビングのでかいソファーに座る。
「ごめんね、急に来ちゃって。
これ買ってきたから、皆で食べよ」
絢巡査長は燐に謝罪しながら、オードブルセットと弁当を見せる。
「あたしのおごりやけん。
遠慮せず、食べて」
「ゴチになります」
長四郎がいの一番に礼を言って、頭を下げる。
釣られて、燐も頭を下げる。
「で、どうやったと?」
一川警部は長四郎の成果を尋ねる。
「そうっすね。飯食いながらでも良いですか?」
「良かよ」
「じゃあ、ラモちゃん。準備しようか」
「うん」
二人は仲睦まじい夫婦のように準備し始め、2,3分準備が完了した。
「よしっ!! 頂きます!!」
長四郎の号令と共に、長四郎と燐はオードブル、弁当にがっつく。
一川警部はこの光景を見て、天下一武道会を終えた悟空の食事シーンそっくりだと思う。
「しょれでにゃんでしゅけどにぇ(訳:それでなんですけどね)」
口に食べ物を含みながら、長四郎は喋ろうとする。
「いや、ちゃんと飲み込んでから話しなよ」
一川警部に注意され、口の中の物を体内に流し込みちゃんと話し始める。
「これ、見てください」
長四郎は里奈の部屋で撮影したスマホの写真を、一川警部と絢巡査長に見せる。
「これは?」
説明を求める絢巡査長。
「レンタルバイクの領収書」
「レンタルバイク? それがどう事件と関係あると?」
「一川さん、日付ですよ」
絢巡査長がすぐ様、気づき領収書の日付を指さす。
「え~」
一川警部は老眼鏡を取り出しスマホを見る。
「あら、ホントやね。これ、どこで見つけたと?」
「三玖瑠 里奈の部屋です」
「良く入り込めたね!!」
「一川さん、感心しないで下さい。
あの長さん、いくら事件解決の為とはいえあまりこういう事はしないで下さい」
「それ言う? 容疑者と決まっていない人間のお部屋を一緒に物色したのに」
「そ、それは・・・・・・」
痛い所を突かれたと思う絢巡査長。
「それよりこれからどうするの?」燐が次の行動を聞いてくる。
「あたしらは、これのウラを取るわ」と一川警部。
「俺は何かします」
「何かって?」
「何かは、何かです。というかラモちゃん、やけに乗り気やな」
「そんなことないよ」
燐はそう言いながら、骨付きチキンにかぶりつく。
「友達が犯人なのかもしれないのに、良く食べられるね」
「ちょっと、一川さん」
絢巡査長が一川警部を小突く。
「そう言われても仕方ないのは、分かっています。
今日、里奈と話してみて何か変な感じを覚えた自分もいるんだよね。
里奈じゃないっていうか・・・・・・何、言ってんだろう。私」
「その言葉に間違いは無いと俺は、思うぞ」
「どうして?」
燐がその真意を聞く。
「昼間にも話したろ。役にのめり込みすぎちゃうって、だから違和感を覚えるのは当然だよ」
「もしかして、一連の事件の動機ってそれ何ですか?」
絢巡査長が身を乗り出して、長四郎に質問する。
「それは、本人から聞かない事にはなんとも。
でも、その可能性が高いと。思う?」
長四郎は首を傾げながら、答えを濁す。
「ちなみに、その役ってどういうもんなの?」一川警部が質問する。
「殺人鬼です」
「さ、殺人鬼!?」
その場に居た長四郎以外の三人は吹き出す。
「そ、それは動機としてはしっくりくるけど。
ドラマやないんやから。長さん」
「事実は小説より奇なり。只、それだけの事ですよ」
長四郎はそう言い終えると、オードブルに残った最後のから揚げを食べる。
「あっ!! 私のから揚げ食べた!!!」
「うん」
口を敢えてモグモグさせながら、ドヤ顔を決める。
そして、長四郎から揚げを飲み込んだのを見計らったように、燐はヘッドロックをかけ始める。
「いきなり、何!?」
「から揚げの恨みぃ~」
燐は長四郎の首を締め上げる。
「く、苦しい!!」そう言いながら燐の腕をタップするのだが、緩まる気配はない。
「一川さん、助けて!!」
長四郎は一川警部に助けを求めようと座っていた所に目を向けると、そこに一川警部の姿は無かった。
絢巡査長の姿もなかった。
視線をリビングのドアに向けると、そこに2人は立っていた。
「へ、ヘルプ!!」
「ラモちゃん、あたしらは明日も早いから帰るけん」
長四郎の助けを呼ぶ声を無視し、一川警部は燐に帰る旨を伝える。
「はい。今日は、ごちそうさまでした」
「燐ちゃん、片付けできなくてごめんね。じゃ」
絢巡査長が言い終えると、一川警部達は警視庁へと帰って行った。
「さぁ、片付けるわよ」
ヘッドロックを外し、食べたオードブル、弁当の容器を片付けようとする。
だが、長四郎の反応がない。
恐る恐る長四郎を見ると、長四郎は真っ白に燃え尽きたような顔で気絶していた。
「ウッソォ!!! ちょっと、しっかり!!!」
燐はすぐに、回復処置をし、長四郎を起こすのだった。
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