映画-19
ピンポーン!
タワマンの静かな廊下にチャイム音が響き渡る。
そして、応答がない。
「あれ、部屋に居ないのかな?」
再度、長四郎はインターホンのボタンを押すと同時にドアが開いた。
「オッス!! オラ、悟空」
ドアから顔を出す里奈に向かって、そう声を掛ける長四郎。
「熱海さん! それに、燐もどうしたんですか?」
「えっ、燐!?」
里奈が向けている視線の方を見ると、自分の部屋に帰ったはずの燐が長四郎のすぐ後ろに立っていた。
「な、ラモちゃん部屋に帰ったんじゃないの?」
「里奈、元気? これ、買ってきたから食べよ」
燐は、ここに来る途中で寄ったケーキ屋の箱を見せる。
てっきり長四郎は、燐が部屋に帰って1人で食べるものばかりと思っていたので驚く。
「ありがとう。お茶淹れるから、中に入って。熱海さんも」
「お言葉に甘えて。お邪魔します」
長四郎と燐はこうして、里奈の家にお邪魔することになった。
「ねぇ、お兄さんの部屋をもう一度、見して欲しいんだけど。良いかな?」
恵一の部屋の前を通りかかった時、長四郎は里奈に許可を求める。
「構いませんけど」
「ありがとう。用意が出来たら呼んでね」
「は~い」
燐が適当な返事し、里奈をリビングへと連れて行ってくれた。
恵一の部屋は家宅捜索されたままの状態で、ありとあらゆる引き出しは開けられ泥棒が金目の物を探し荒らしましたといった感じであった。
「よしっ!!」
長四郎は音を立てないよう恵一の部屋から出た。
「ねぇ、熱海さんは何しに来たの? 事件は、もう解決したようなもんなんだし」
「さぁ、私も知らない」
そう答えながら燐は、他人事みたいに話す里奈に違和感を覚える。
自分に相談してきた時の里奈とは違うからだ。
話は長四郎に依頼を出す、少し前に遡る。
その日は、珍しく里奈に元気がなかった。
里奈はここ最近、仕事が立て続けに入っていて辛いと言っていた。
そのせいで元気がないと燐は思っていた。
だがその日は、あまりにも酷く落ち込んでいた。
その為、何があったのか聞くことにした燐。
昼休みに昼食を共に食べながら話を聞くことにした。
「あのさ、何かあったの? 一人で抱え込まないで私に言いなよ」
燐は頃合いをみて、話題を切り出した。
「え~」
「え~って、酷いじゃん」
「噓、噓。兄貴が帰ってこないんだよね」
里奈寂しそうな顔を浮かべ、皿に載ったミニトマトを転がしながら答える。
「家出?」
「う~ん、少し違うかも」
「喧嘩でもした?」
「いや、違うと・・・・・・思う」
「じゃあ、失踪?」
「う~ん、分かんない。一応、警察には失踪届出しているんだけどね」
「じゃあ、見つかるんじゃん」
「それが、そうでもないんだよね」
「なんで? 警察が探してくれるわけでしょ」
「失踪人って、結構、多いんだって。
んで、事件性がないと探せないって言われちゃった」
「何それ、税金分の仕事しろって感じ。本当に事件に巻き込まれてないの?」
「ん~どうかな? 巻き込まれてるかもだけど」
「えっ、ヤバいじゃん!!」
「やっぱり、ヤバいかな」
「当たり前でしょ」
「どうすればいいと思う?」
「知り合いに探偵がいるから、紹介してあげようか?」
「良いの?」
「うん、それに料金もタダにできるかもだし」
「噓ぉ~」
「ホント、ホント」
「じゃあ、お願いしてみようかな。マブダチの言葉を信じて」
「ウぇ~イ!!」
燐はグータッチを求めると、里奈もまた「ウェ~イ」と言いながらグータッチを交わし友情をはぐくむのであった。
そして、話は今現代に戻る(空条 承太郎の「時は動き出す」風)。
「あ~あ、私、これからどうなっちゃうんだろ」
里奈はティーポットにお湯を注ぎながら、ぼやく。
「私に言われても分かんないよ。
でも、何が合っても私とあんたの仲は、そんなに簡単には壊れないよ」
「あんがと」
里奈は満面の笑みを浮かべ、燐に感謝を伝える。
一方、長四郎は里奈の部屋で、事件に繋がりそうなものはないか物色していた。
机の引き出しの中を覗いたり、クローゼットを開けては閉めてを繰り返していた。
「何もねぇな」
そう言いながら部屋を見渡すと、本棚の上に乱雑に置かれたファイルがあった。
そのファイルを手に取り、中身を確認する。
レシートを貼布してあった。
さしずめ、家計簿作成の為の資料として作成してあるファイルと踏み、中を検める。
すると、1枚の領収書が足元に落ちた。
「あっ、いけっね」
長四郎は領収書を拾い上げると、その領収書はレンタルバイクの領収書だった。
「いつのかな?」
日付を見ると、池元 知美が殺害された日のものだった。
長四郎はファイルを床に置き、他の日のレンタルバイクの領主書を探した。
探して間もなく、該当の事件の日の物が次々に出てきた。
「これは一体、どういうことでしょうか?」
そう言いながら、その領収書を写真に収めていく。
「コラっ!! 何しとる!!!」
「うわぁぁああ!!!!」
長四郎の身体は飛び跳ね、ベッドの角に足の小指をぶつける。
「痛った!!!!」
ぶつけた小指を抑えながら長四郎は、部屋中を飛び回る。
「お茶、用意出来たから」
燐はそれだけを伝えて、リビングに戻っていった。
「嫌がらせにも程があるだろう」
長四郎は痛みを堪えながら、ファイルを元あった通りに片付けながら次のアクションを考えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます