番外編-日常~熱海長四郎の一日~
日常~熱海長四郎の一日~
~熱海長四郎の一日~
私立探偵、熱海長四郎の朝は早い。
午前5時30分、アラームと共に長四郎は目を覚ます。
「う~ん、眠っ」
スマホのアラームを止め、再び眠りにつく。
それから4時間後、陽の光をカーテンの隙間から浴びて長四郎は目を覚ます。
スマホの時計で時間を確認すると、9時30分をさしていた。
「やべっ!!!」
酷い寝ぐせの長四郎はその言葉と共に、ベッドから立ち上がると事務所のドアに向かい掛札を休憩中の文字に変え再び事務所に戻る。
因みに熱海探偵事務所の受付時間は、午前9時から午後17時の間である。
掛札を変えたその足でバスルームに移動し、シャワーを浴びる。
髪を乾かすのと同時に酷い寝ぐせを直し歯磨きを終え、Tシャツ、ジーパンに着替えて、事務所のノートパソコンの電源を入れる。
パソコンが立ち上がると、まずご依頼メールを確認する。
「今日も依頼なし・・・・・・」
長四郎は寂しそうな顔を浮かべノートパソコンをそっと閉じると、コーヒーを淹れる為にやかんに水を入れてガスコンロに火をつけお湯を沸かし始める。
ヒューっという音がお湯を沸いた事を知らせる。
長四郎はお湯が沸くまでの間に、コーヒーミルで引いた豆をドリップしてコーヒーを淹れる。
コーヒーのマグカップを片手に来場用のソファーに座りテレビのスイッチを入れる。
テレビではワイドショーをやっていた。
話題はこの前、解決したサイキック木馬の超能力殺人事件のニュースを流していた。
長四郎はぼぉーっとしながら、ワイドショーを見る。
1時間後、「あ」長四郎は何かを思い出し、ドアに掛けた休憩中の札を営業中に変える。
「はぁ~」軽い溜息をつき窓からの景色を眺めて先程、座っていたソファーに腰を降ろす。
それからまたワイドショーを見ながら、1時間ぼぉーっとする。
フードデリバリーで昼マックを注文し、ポテトの量が明らかに減っていることに憤慨しながら食した。
「飽――――きた」
長四郎はリモコンのインターネットボタンを押し、サブスクのサイトを開きVシネマ「ミナミの帝王」を再生させる。
約1時間半後、「ミナミの帝王」を見終えた長四郎は眉間に皴を寄せ、コーヒーを口に入れる。
眉間に皴を寄せたまま別の回を再生させる。
それから立て続けに3本分視聴した長四郎は、ふーっと息を吐きながら立ち上がるとデスクに移動する。
そして、ノートパソコンを再び開きご依頼メールが届いていないか確認するがメールは来ていなかった。
「届かないメール。か・・・・・・・」
パソコンの電源を落として室内の時計を見ると、午後19時を示していた。
「腹減ったなぁ」
スマホのフードデリバリーアプリを開いたその時、着信が入った。
相手は厄介事を持ち込む女子高生の羅猛 燐だ。
「しかと、しかと」
長四郎は無視しようと決め、鳴りやむのを待つ。
不在着信の表示が出たのでマナーモードにしようとスマホに手をかけたその時、再び着信が入る。
長四郎は天を見上げ「厄介事ではありませんように」と呟き電話に出る。
「はい。もしもし」
「出るのが遅い!!!!」耳にキーーーーンっと鳴り響く金切り声で怒鳴られる長四郎。
長四郎はそっと終了ボタンを押して通話を終了した。
だが、すぐに着信が入る。
「切るなァァァァァァァァァァァァァァァァ」
長四郎も今度はスピーカーモードにして出たので、耳へのダメージが減ったわけではなかった。
スピーカーモードにしてもなお耳にキーーーーーンっと鳴り響く。
「本題に入って貰ってもいい? ラモちゃん」
「事件が起きたの。今すぐ来て」
「嫌だよ。一川さん呼べよ。警察なんだから」
「もう呼んだわよ。今、来てる。後はあんただけ」
面倒くさい事になった長四郎は心の底から思った。
「誰? 彼氏?」
スピーカーから軽い感じで、燐に話しかける見知らぬ男性の声が聞こえた。
すると燐は慌てたような声で「あ、お爺様!!」と言ったのを長四郎は聞き逃さなかった。
「とにかく、早く来なさいよっ」
燐は場所も告げず通話を切った。
「仕方ない。行くか!」
長四郎はハンガーにかけていたジャケットを着て事務所を出る。
勿論、掛札を休憩中に変えることを忘れずに。
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