有名-3
スタジオハウスを出た長四郎は、スタジオハウスの近所を散策し始めた。
調査用のデジカメを片手に風景を撮るふりをしながら、ストーカーが隠れていそうな場所を探す。
ここで、読者の皆様には美雪のストーカーの特徴についてお教えしよう。
美雪へのストーキング行為が始まったのは、今から1ヶ月前。
美雪が所属する芸能事務所に一通の封筒が送られてきた事がきっかけであった。
封筒の中に入っていたのは、何枚かの写真でその全てが自宅周辺で撮影されたもので、中にはマンションの共用部分で撮影されたものもあった。当然、警察にはストーカー被害の相談をしたが、ストーカーの正体が分からないので捜査はできないという回答を受けた。
だが、巡回は強化してくれるとのことでこの件は解決へと向かう予定のはずだった。
しかし、ストーキング行為はエスカレートしていく。
次に送られてきた写真は、美雪が住む部屋の中で撮影された写真が数枚入っていた。当然、これも警察に相談し被害届は受理されることになったのだが、正体の掴めないストーカーに警察も手を出せず、1ヶ月が経過しようとしていた。
その間も美雪へのストーキング行為は続けられ、業を煮やしたマネージャーの松坂は探偵を雇って美雪を守ろうと動いたのだ。そして、今に至る。
では、長四郎の調査に戻ろう。
「どうやら、奴さんは居ないようだな。戻るか」長四郎はデジカメの電源を落とすとスタジオハウスに戻った。
スタジオハウスでは、絶賛撮影中であった。
美雪はカメラのシャッターが切られる度に都度ポーズや表情を変えていく。
「おっ、やってる。やってる」そう言いながら、撮影を見学する燐の隣に立つ長四郎。
「どこ行っていたの?」
燐は撮影の邪魔にならないようひそひそ声で、質問した。
「近所の散歩」
「散歩!?」
燐がいきなり素っ頓狂な声を出すので、現場に居る全員の視線が長四郎と燐に向く。
「あ、すいません。どうぞ、続けてください」
愛想笑いを浮かべながら燐は撮影を続けるよう促すと、撮影は再開された。
「邪魔しちゃダメだよ」
「あんたが、変な事言うからでしょ」
「変な事って」
長四郎は視線を撮影中の美雪に向けると、美雪はポーズを取り続けカメラのシャッターは切り続けられる。
「衣装替えになりまぁーす」スタッフの1人がそう言うと、美雪は衣装替えの部屋へと向かいスタッフ達も次の撮影の準備に入る。
「何にも起きないね」燐は少し退屈そうに発言した。
「まぁ、そんなもんだろ」
「そうだけどさ」
「何を期待してんだよ」
「期待はしていない。でも・・・・・・」
「でも?」
「ねぇ、ストーカーの正体の分かりそう?」
「分かんねぇよ」
「あ、そう」
的を得ない長四郎のいつも通りの回答で、燐はうんざりするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます