有名-2

 翌朝、長四郎と燐は澤村美雪が暮らすオートロックのセキュリティマンションを訪れた。

「なぁ、何でラモちゃんが付いてくる訳?」

 マンションの前で美雪が出てくるの待つ長四郎は、同じく美雪を待つ燐に尋ねる。

「何でって、春休みで暇を持て余しているからね。それに、ミユキンに会いたいからね」

「ミユキン?」

「知らないの? 若い女の子のカリスマよ」

「へぇーそうなんだ」

 長四郎は素っ気ない返事をして、美雪が出てくるのを待つ。

 それから15分経った頃、美雪が出てきた。

「おはようございます」

 長四郎から挨拶をすると「あ、おはようございます」少し驚いた様子で挨拶を返す美雪。

「今日からお世話になります。探偵の熱海です。宜しくお願いします」

「ああ、マネージャーから聞いています。こちらこそ、宜しくお願いします」

 美雪は何も言わない燐を不思議そうな顔で見る。

「あ、こいつは」長四郎が燐の説明を始めようとすると「申し遅れました。私、このバカ探偵の助手をやっています。羅猛燐って言います。あの、握手してください!!」燐は自分の右手を差し出して握手を求める。

「無視してもらって良いですから。行きましょう」

 長四郎はそう言って美雪を待たせていたタクシーに乗せ、「バカ言ってんじゃないよ」と燐に嫌味を言い助手席に乗るのだった。

 3人を乗せたタクシーはスタジオハウスに向けて走り出して5分程経った頃、長四郎が話始めた。

「澤村さん。これを持っていてください。ラモちゃん」

 美雪の隣に座る燐に持ってきた物を渡すように促す。

「分かった。これです」

 燐はバックの中から物を取り出し、美雪に渡した。

「これは?」受け取った美雪は説明を求める。

「それは、GPSと盗聴器です」

「え?」

「安心してください。盗聴器は外出の際に使ってもらえれば充分ですから」

「はぁ」

「安心してください。ちゃんと、意味があるのよねっ!!」

 腑に落ちない様子の美雪に代わって、長四郎により詳しい説明を願う燐。

「勿論。ストーカーの正体が掴めていないとのことでしたので、取り敢えず、身近な人物の可能性も含めて日常会話を聞かせて欲しいんです。当然、口外はしないのでご安心を」

「はぁ。あの、台本読んで良いですか?」

「どうぞ。どうぞ」

 燐が許可したので、美雪はスマホでバラエティー番組の台本に目を通し始めた。

 そこから、タクシーには沈黙の時が流れスタジオハウスに着いた。

 3人は揃ってスタジオハウスに入る。

「おはようございまぁ~す!!」

 撮影準備をするスタッフに元気よく挨拶をする美雪は、自分の楽屋に入り打ち合わせを始めた。

 長四郎は燐にスタジオハウスに残るように指示を出し、1人スタジオハウスを出て行くのであった。

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