第拾玖話-有名
有名-1
都内某所のビル街のゴミ捨て場に、ビニールシートの幕が建てられていた。
その幕の中では沢山の警察官達が出入りし、捜査を行っていた。その中で異彩をはなつ2人が居た。
私立探偵の熱海
その2人の視線の先にあるのは、1人の男の死体であった。
男は顔を真っ赤な血で濡らして、顔とは思えない程に腫れあがり、腕や足もあらぬ方向へと曲がっていた。
「ひ、酷い・・・・・・」
数々の死体を見てきた燐でさえ、男の死体はあまりにも惨たらしかったのだ。
「全くだ」
長四郎はそう答えながら、拳をグッと握りしめる。
「あ、長さん。来てくれたと?」
今回の事件を担当する事になった警視庁捜査一課命捜班の
「一川さん。今回は、凄惨ですね」長四郎が感想を述べる。
「全くばい。そいで、こん人の事、知っとううとやろ?」
「ええ、依頼人の同僚です、まさか、こんな事になるなんて」
「長さん、こん人がこげん事になった理由を知っとうみたいやね」
「まぁ」
「どうして、こげん事になったのか。教えてくれんね?」
「分かりました」
長四郎は、これまでの経緯を話し始めるのだった。
事件発生の5日前、その依頼は舞い込んできた。
依頼人は、テレビで引っ張りダコのタレント・澤村
その依頼内容はというと・・・・・・
「澤村美雪のストーカー対策です」
「ストーカー対策ですか。いやぁ~」そう言いながら、困り顔で頭を掻く長四郎。
長四郎が難色を示すのは、過去そういった依頼を受けたことがなくどう対応して良いものか分からなかったからであった。
「引き受けてもらえないでしょうか?」
「基本はお引き受けするのですが、ストーカー対策はちょっとやったことが無いもので。うちの事務所は浮気調査が主戦場でしてね。うちの事務所を選ばれたきっかけは何ですか?」
「ネットです。それと、我が社から近かったので」
「ああ、そうでしたか。なんか、すいません。お役に立てたなくて」
「いえ」
「あ、気を落とさないでください。この手に強い探偵を知っていますから、紹介しますね」
「お願いします」
長四郎はすぐさまソファーから立ち上がると、本棚にある近隣の探偵事務所の連絡先が記載されたファイルを取り出そうとする。
「その依頼、お引き受けします」
そう松坂に告げたのは、買い物袋に手に下げた燐であった。
「いや、でも・・・・・・」
見知らぬ女の子にそう言われた松坂は目で、本棚の前に立つ長四郎にお伺いを立てる。
「良いわよね?」燐の鋭い眼光に睨まれた長四郎は「お引き受けします」と泣く泣くその依頼を受けた。
そこから、諸々の打ち合わせをして松坂は帰っていった。
「え~ストーカー対策の依頼ぃ~」
長四郎から詳細を聞いた燐は驚愕する。
「そうだよ。それなのに、勝手に引き受けちゃってさ」
「でも、OK出したのはあんたでしょうがっ!!」
「左様でございますね」
長四郎はここで何を言っても燐の反撃を受けると悟り、気持ちを切り替えストーカー対策の準備を始めるのであった。
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