議員-12
燐は一人で、入院する小岩の見舞いに来ていた。
軽傷で済んだ小岩は退院し、議員会館で通常業務に励んでいた。
「体調、大丈夫ですか?」
「はい。おかげさまで」
燐の問いかけに嬉しそうに答える小岩は、ノートパソコンと向き合い演説の原稿を書いていた。
「西先生は?」
「西先生は、今日は地元の選挙区で講演活動です」
「講演活動ですか。相変わらず、お忙しいそうですね」
「ええ、世論の見方で通っていますから」
「世論の見方・・・・・・」
燐はそう言いながら、ここに来る前に長四郎に言われた事が気になっていた。
事件現場に向かった長四郎から「小岩を良く見張っておけ」と指示を受けたのだ。
燐も急にそんな事を言われて戸惑いを隠せないし、その真意が分からないのでどうすれば良いのか困っていた。
「探偵さんは、今日は来られないんですか?」
「えっ! ああ、あいつは何か調べたい事があるからと言って」
燐は申し訳なさそうに答えた。
「そうですか。ま、僕が襲われた事で先生が狙われる心配はなくなりましたし」
「そうですよね」
燐は小岩の意見に賛同する。
一方、長四郎は一川警部と共に西天光が居る講演会場へと来ていた。
講演会場に入ると、講演会場はざわざわと喚き出していた。
西が時間になっても姿を見せないからであった。
「控え室に行きましょうか」長四郎は一川警部にそう言って、二人は会場の裏手に周り控え室へと向かった。
控え室の前で、講演の関係者がドアを叩いて西を呼び続ける。
「先生っ!! 開けてください!!!」
後援会長であろう男性がドアノブをガチャガチャと回しながら、必死に呼び続ける。
「ちょっと、すいません」
関係者を掻き分け、長四郎と一川警部がドアの前に姿を現した。
「あたし、警察なんですけど。何かあったとですか?」
一川警部が必死の後援会長に話しかけると「警察ですか。ありがたい。中に入ったきり、出てこんのですよ。どうにかしてください」と助けを乞う。
「分かりました。任せんしゃい!!」
一川警部が言うと同時に、長四郎が「チェストー!!!」の掛け声と共にドアを蹴り破る。
ドアが開くと、そこには腹部にナイフが突き刺さった西の死体が転がっていた。
「きゃあ〜」
その場に居合わせた後援会会員の女性の悲鳴が響き渡った。
「マジか・・・・・・・」
長四郎も想定外の事態に戸惑いを隠せなかった。
一川警部はすぐさま応援を呼び、会場は警察官で溢れ返った。
「一川さん。どうですか?」現場に臨場した絢巡査長が話しかけてきた。
「犯人にまんまとしてやられたばい。犯人はあの窓から逃げ出したようやね」
一川警部は開いた窓を指す。
「あそこから。で、長さんは?」
姿が見えない長四郎について尋ねると、一川警部は部屋の角の方を指差した。
そこには、鑑識作業の邪魔にならないようにして、部屋の角でぶつくさと独り言を呟く長四郎の姿があった。
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