議員-13

「西さんが殺されたって本当!?」

 燐は電話の向こうの長四郎に問いかける。 

「本当だよ。こんな事嘘ついてもしょうがないだろ」

「それもそうだけど。小岩さんが襲われた事件と関係あるのかな?」

「んな事、俺が知るかよ」

 長四郎はそう答えながら、その場にへたり込む。

 思いもよらぬ事態に、ショックを受けている長四郎に燐は質問を続ける。

「ねぇ、犯人を目撃した人とか居ないの?」

「居たら、警察が証言聞き出して、とっくに検問かけて犯人を追ってるよ」

「それもそうか。じゃあ、犯人に繋がるダイイングメッセージなかった?」

「ねぇよ! ドラマじゃないし」

「そうだよねぇ〜」

「ラモちゃんは気楽で良いね」

「気楽じゃないし」

「そうですか・・・・・・・」

「なんか、元気少ないね」

「当たり前。君のようにタフじゃないからね」

「私の事、なんだと思ってんの?」

「工藤新一症候群の女子高生」

「何それ?」

「そんなことはどうでも良い。小岩さんは何してるの?」

「怪我した体を押して、西さん死去の会見の準備してる」

「そうか」

「あんたは、何してんの?」

「俺か? 俺は・・・・・・」

 長四郎が横目で自分に向けられる視線の先を見る。

「現場に臨場した刑事が、声をかけたそうにこちらを見てるよ」

「話しかけたら?」

「嫌だよ。俺、犯人としてパクられそうだもん」

「へぇ〜 パクられるような事してんだ」

「してないわ。取り敢えず、小岩さんの監視は続けろ」

「はぁ〜い」

 燐の気のない返事で通話は終了した。

 長四郎はスマホをズボンのポケットにしまうと、「よしっ」と言いながら顔をパンパンっと叩いて気合を入れて、事件現場へと戻る。

 燐は小岩の邪魔にならないように付かず離れずの距離感を保ちながら、長四郎の指示通り監視を続けていた。

 その中で、燐は何故、長四郎が突然に小岩を監視するように言い始めたのかを考えていた。

「羅猛さん」だ

 小岩にそう声をかけられた燐は我に返り、「あ、はいっ!」と返事をした。

「熱海さんから、犯人について何か情報はありましたか?」

「いや、特には」

「そうですか」

 残念な素振りを見せる小岩を見て、記者会見に使える材料がないか探りに来たことは一発で分かった。

「申し訳ありません」燐が頭を下げて謝ると「いえ、羅猛さんに謝ってもらう必要はありません。高い報酬を払っているのに役に立たないなと思っただけですから」と突然、毒を吐く小岩に驚く燐。

 それと同時に、カチンっと来た。

「では、失礼します」

 小岩はそう言って、その場から去っていった。

「なんか、あいつが怪しいって思うのも分かってきたかも」

 燐は長四郎が出した指示の意味が分かったような気がしたと共に、小岩から目を離してやるものかというスイッチが入るのだった。

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