能力-3
事件に繋がるスタッフというのはディレクターの大判 鮫夫だった。
「こちら、ディレクターの大判さんです」話を聞いた所轄署のモブ刑事が長四郎達に紹介する。
「この人達にもう一度、先程聞かせてくれた話をしてください」
モブ刑事にそう促され、大判は話し始める。
「はい。水川教授についてなんですけど、昨日、ここで最終打ち合わせからして送迎するはずだったんですけど・・・・・・・」
昨日、水川教授を車に残しこの会場に忘れたスマホを取りに行き戻ってくると、水川教授の姿は車に無くスマホにメッセージが送られていた。
“急用ができたので、先に帰る”と書かれていたので、タクシーか何かで帰ったのだろう。そう思った大判は一人、テレビ局へと帰社した。
「という事があったんです」
「では、貴方が車を離れるまで水川教授はご存命であったと?」
「はい」長四郎の問いに大判は頷く。
「貴方の他にここに来ていた方は?」
「プロデューサーの丹湯です」
「サイキック木馬は、ここに来ていなかったんですか?」
「来てないです。水川教授たっての希望ですから」
「たっての希望というのは?」一川警部は質問する。
「実は我々テレビクルーがサイキック木馬とヤラセをする可能性があるので、撮影機材などに小細工しないよう水川教授立会いのもと番組の準備をしていたんです」
「そうですか・・・・・・」
長四郎はそう返事をし、どこかへと移動していくので燐もついて行く。
「どこ行くの?」
「上」
燐の問いにそれだけ答えて舞台上の歩道に移動した。
歩道に上がるとサイキック木馬が舞台を見下ろすように立っていた。
「何しているんですか?」燐がすぐさま、声を掛けた。
「いや、自分が殺してしまったのかなと・・・・・・」
暗い表情のサイキック木馬を見て、長四郎と燐は顔を見合わせる。
「どうしてそう思うんですか?」
「それは・・・・・・」暫くの沈黙の後、サイキック木馬は話を続けた。
「私が無意識のうちに水川教授を殺害し、水川教授の死体をここへとワープさせたのかもしれない」
「ほぉ。貴方が超能力で殺害したそういうわけですか?」薄笑いを浮かべる長四郎。
「かもしれません・・・・・・・」
「という事は、テレポーテーションで水川教授の遺体をここに転送させた?」
「はい」
「あんた、頭おかしいじゃない?」燐が辛辣な言葉を浴びせる。
「わ、私は正常です!」
「分かりました。サイキック木馬さん、その事を下にいる刑事に話してください。では」
長四郎はサイキック木馬にそう告げ、来た方向とは反対の方から下に降りて行った。
下に降りた長四郎は、駐車場に向かって歩き出す。
「ねぇ、あいつが犯人じゃないの?」燐は横に並んで歩きながら、長四郎に質問する。
「かもしれないな」
「かもしれないって。何とか何三郎だと自称・超能力者が犯人なんでしょ?」
「何とか何三郎じゃない。古畑任三郎だ。それにあれはドラマの話だ」
その無責任な言葉に、てめえが言い出したんだろと思う燐。
「あ、勢い余ってここまで来てしまった。ラモちゃん悪い。一川さんか絢ちゃん呼んできて。後、ディレクターの大判とかいう男も」
「分かった。駐車場に居るのね」
「ああ、そこに居る」
燐は踵を返し一川警部達が居る元へと向かった。
その道すがら自販機の置いてある休憩所で、一番年配の男性スタッフが対面で座っている若い男女二人のスタッフに話しているのが聞こえた。
「ヤラセだろうな」
「ヤラセですかね?」男性スタッフがその信ぴょう性を疑っていると隣に座る女性スタッフ「ヤラセに決まっているわよ」と発言する。
燐は気になり声を掛けることにした。
「その話、詳しく聞かせてもらえませんか?」
いきなり、制服姿の女子高生にそう言われ戸惑いを隠せないスタッフ一同。
「あ、私は変蛇内高校二年の羅猛 燐って言います。探偵の助手です」
「この娘! 死体が落ちてきた時に真っ先に舞台に上がってきた娘だ!!」気づいたのは女性スタッフであった。
「ああ」年配の男性スタッフも思い出したらしく相槌を打つ。
「探偵の助手って事は、今回の事件も?」若い男性スタッフにそう聞かれたので「はい」と燐は答えた。
「じゃあ、教えてあげようか」年配のスタッフが席に座るよう促し燐は女性スタッフの隣に座って話を聞く。
「プロデューサーにはあった?」
「いや、会っていないです」
年配の男性スタッフに質問された燐は否定する。
「そのプロデューサーなんだけどね。視聴率の為には手段を選ばないのよ」
「所謂、時代遅れのプロデューサーってことですか?」
「君、面白いこと言うね。時代遅れっちゃあ、そうなるかもな。コンプライアンスのうるさい世の中じゃ」
「それで今回もヤラセがあるのではないかと?」
「だって、おかしいでしょ。あの超能力者が言い当てたと同時に死体が降って来るなんて」
「そうですね。という事は、この事件の犯人はそのプロデューサーそういう事ですか?」
「それとあのコバンザメも!」若い女性スタッフは補足を入れる。
「コバンザメ?」
「ディレクターの大判の事よ」
「どうして、コバンザメ何ですか?」
「いつもプロデューサーの丹湯に引っ付いているからコバンザメなの」
「へぇ~」
「まぁ、あいつらが事件に関わっていてもおかしくないわなぁ~」年配の男性スタッフは腕を組み一人うんうんと頷く。
燐はその三人が一連の事件を仕組んでいるのではないか、そう考え始めていた。
「ありがとうございました。あのこの話を警察の人にしてもらえますか?」
「勿論」即答する年配の男性スタッフ。
「宜しくお願いします」
燐は三人に一礼し、本来の目的を遂行しに一川警部達の下に向かった。
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