対決-11
燐と芽衣は慶次の通勤経路を辿っていた。
「羅猛さん。お爺さんの所に行かなくて良いの?」
芽衣の問いかけに燐は平然とした様子で「そっちは大丈夫だから」と答えた。
「大丈夫って・・・・・・」
「そんな事より、何かお兄さんの手掛かりになる物を探すの」
「あ、うん」
そんなに簡単に見つかるものなのか。半信半疑の芽衣は燐の言葉に従い兄に繋がりそうな物を探す。
燐の行動の意味として、慶次は何かの秘密を知ってしまい誘拐されたものとの推理に基づいて行っていた。
しかし、慶次が誘拐されたと言えば芽衣に余計な心配をかけさせてしまうと思い、何も言わずに自分の指示に従うように促すしかなかった。
「お兄さんが使っているカバンって、手提げそれともリュックサック?」
「リュックサック。私がプレゼントした物を使っているから間違いないよ」
「じゃあさ、リュックサックにキーホルダーとか付けていなかった?」
「どうだったかな?」
芽衣が思い出そうと、ふと足元を見下ろすと慶次のスーツジャケットに付いている金星創業のバッジが落ちていた。
「あ、これ」芽衣がそのまま拾おうとするのを「ちょっと、待って!!」と制止させ燐は、
バッグの中からハンカチを取り出してバッジを拾う。
「お兄さんの私物も貸して欲しいんだけど。これから、家に行っても?」
「うん、分かった」
すんなり、了承する芽衣は燐を自宅マンションへと案内した。
芽衣と慶次が住むマンションは、バッジが落ちていた場所から徒歩十五分程の距離にあった。
「お邪魔しまぁ~す」
燐は芽衣の居住する部屋へと入る。
3LDKと二人暮らしにしては、かなり広い部屋でリビングへと通され芽衣に案内されるがままソファーに腰掛ける。
「何か、飲む?」
「いや、大丈夫。にしても、二人暮らしにしては広い部屋だね」
「そぉ? 羅猛さんって確かタワマンに住んでるって聞いた事あるけど、それからしたら大した事ないんじゃないの?」
「そ、そんな事ないよ」
クラスメイトには、自分の家を明かしたことないのに何故、芽衣が知っているのか気になってたが、それより今回の事件を解決することだと考え直し本題に入る。
「お兄さんって、会社で何してたか知ってる?」
「知らない」
「じゃあ、ここ最近、変わった様子とかなかった?」
「う~ん、どうだろ?」
「急に帰って来なくなったから」
「急にね」
燐は人差し指で顎をトントンと叩きながら、思案する。
「お兄さんの職場の人と会った事は?」
「あ~一度だけ。会社のイベントで」
「イベント? どんな?」
「バーベキュー大会」と燐に紅茶を出しながら、芽衣は答えた。
「その時の写真ある?」
「スマホに」
「その写真、私のスマホに送ってもらえる?」
「分かった」
燐のスマホに写真が送られてきたという通知音が鳴る。
「ありがとう」燐は礼を言って、すぐに写真を確認した。
写真には、その場に居たであろう全員が写っていた。
「これが、私のお兄ちゃん」
芽衣はスマホに写った兄を指差して教える。
慶次は写真の真ん中で、社長であろう人物と仲良く肩を組んで写っていた。
「肩を組んでいる人って社長?」
「そうだよ」そう答えながら、芽衣は紅茶を飲む。
「大体、分かった。お兄さんの私物だけ何か貸して」
「あ、うん。少し待ってて」
芽衣は慶次の部屋に行き私物を取ってこようとするので、燐もそれに続いて付いて行く。
慶次の部屋のドアを開けた芽衣は「ウソっ!!」と言って呆然と立ち尽くす。
「あらら。分かりやすい展開な事で」
燐は荒らされた慶次の部屋に入り、転がっていた野球ボールを手にするのだった。
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