復讐-2
その晩、ホテルのバイキング形式のレストランで食事をする燐とリリ。
「燐。ホント、よく食べるね」そう言うリリの視線の先には皿に山盛りに積まれた肉やサラダを美味しそうに頬張る燐の姿があった。
「ん? ほぉ?(訳:うん、そぉ?)」
ごっくんという音と共に口に含んでいた物を飲み込む燐。
「いやぁ~でもさ、今日もいっぱい遊んだんだし。食べないと」
燐が骨付き肉に手を伸ばそうとした時、横から「止めて正解だったな」と耳障りな声がした。
そちらの方を見ると、例の5人組が燐達が座るテーブルを見ながら悪口を肴に盛り上がっていた。
「うわ! 最悪!!」リリはすぐ様、目を逸らす。
「あいつらもここのホテルだったんだ。なんか、ごめんね」
このホテルを予約したのは燐であり、不快な思いをさせてしまったことをリリに詫びる。
「何も燐が謝ることはないわよ。あ~あ、私達も早くお酒のみたいなぁ~」
「後、2,3年の我慢でしょ」
そんな会話をしていると「あの娘ら未成年らしいぜ」茶髪がテンション高く隣に座る青髪の肩を叩き話しかけるが青髪は口から泡を吹き椅子から転げ落ちた。
青髪は体をビクン、ビクンと身体を痙攣させ、仲間の四人組は驚きのあまりただ立ち尽くすだけで何もしない。
「ちょっと!! あんたら、何してんの!!!」
燐が男達に檄を飛ばしながら近づき、倒れた青髪の様子を伺う。
「助け・・・・・・て」そう言い残し、青髪は絶命した。
「きゅ、救急車!!」茶髪が今頃になって救急車を呼ぼうとするが「遅い!!」燐は一喝し様子を見に来た従業員に「警察に連絡してください」とだけ指示をして事件現場を荒らさない為の手筈を整える。
「燐、凄い」その手際の良さにリリは関心する。
それから20分後、近くの警察署から刑事達が鑑識捜査員を伴って現場に到着した。
早速、その場に居合わせた客及び従業員から事件発生時の聞き込みが行われた。
燐達を担当してくれたのは
「で、事件発生時になんか怪しいことはありましたか?」この肥後という男、標準語を使ってはいるがどことなく方言のイントネーションが抜けていない感じがあったので彼は生粋の沖縄県民である事が伺えた。
「いや、特には」冷静に答える燐に同調するように「そうです。変わったことはなかったです」とリリも答えた。
「成程。分かりました」メモを取っていた手帳を閉じた肥後。
「課長。ちょっと、良いですか?」モブ刑事1が声を掛けてきたので「おう」と答えモブ刑事1について行く。
「なんか、凄いことになったね」
「うん」リリにそう問いかけられた燐は気のない返事をする。
燐はこれで終わるはずがない。そんな気がしていた。
翌日、燐の予感は的中した。
今度は茶髪が殺害されたのだ。
ホテルのベランダから身を乗り出した形での首吊り死体となって。
燐達が朝食を食べる為に部屋を出ると、警察官が廊下を駆け回っていた。
「どうしたんだろう?」燐はその様子を見てリリと顔を突き合わせて首を傾げる。
朝食会場であるレストランのある2階へ行くと朝食を食べに来た客たちに刑事が聞き込みをしていた。
「昨日の事件の事かな?」とリリが燐に話しかけた。
「そうなんじゃない」
そんな会話をしながら2人は朝食を食べに朝食会場に入っていく。
昨晩の事件現場のレストランは閉鎖されたので、急遽この会場が設置されたのだ。
「ねぇ、聞いた? なんかまた、殺人事件起きたらしいよ」
燐の背後からそんな話が耳に入った。
「ねぇ、燐。今の話、聞いた?」
「うん、聞いた」
「なんか、嫌なことが続くよね」
「そだねー」
そう返事する燐は、少し調べようか考えていた。
朝食を食べ終えた燐達は部屋に帰ろうとエレベーターホールでエレベーターを待っていると肥後が来た。
「あ、君達!!」満面の笑みで近づいて来るので二人は『おはようございます』と元気よく挨拶する。
「あ、おはよう。昨日は寝れた?」
「あ、はい」
内心、寝れねぇよと思いながら返事する燐。
「それは良かった」
『良くねぇ~よ』二重唱で返事する2人。
「え?」耳を疑う肥後。
「刑事さん、新しい事件が発生したって他のお客さんが言っていたのを聞いたんですけど」
「ああ、そう。そう。それで、昨晩の25時頃変な物音とか聞かなかった?」
「いいえ、聞いてません。だよね? リリ」
「うん。ぐっすり寝てたから」
2人から聞いた事をメモしていく肥後に燐は事件の情報について尋ねる。
「あの刑事さん、殺されたのは誰ですか?」
「昨日、殺害された男の子の仲間」
「へぇ~特徴は?」
「特徴ねぇ~あ、金髪の男の子だったねって、君、何言わすの」
「へへへへへ」悪ガキ小僧のように照れる燐。
「言いふらさないでよ」
「勿論です」
「じゃ、じゃあ。捜査に戻るから。良い旅行を」
そう燐とリリに告げた肥後は捜査に戻っていった。
「頑張ってくださぁ~い」
「はぁ~い」肥後はリリの声援に手を挙げ返答するのだった。
燐とリリは部屋に帰り、遊びに行く準備をする。
「ねぇ、燐」
「何?」バックに水着を詰め込みながら用件を聞く燐。
「本当は事件の捜査したいんでしょう」
「急に何よ」とは言うものの何故、バレたと思う。
「ふふふふ。見れば分かるよ。燐、さっきからソワソワしているもん」
「え?」
「だって、それ」
リリが指す燐の手元はバックではなくゴミ箱に水着を入れていたのだ。
「あ」
「さ、電話しな。例の彼氏に」リリはスマホを渡してくる。
「彼氏じゃねぇし。あれが彼氏だったらとっくに未成年淫行で逮捕されとるわ」
「良いから。ほら」そう言われ燐はスマホを受け取ると長四郎に電話をかけ始める。
「もしもし?」
「そろそろ、かかってくる頃だと思ってました。はぁ~」
電話口から長四郎の深いため息が聞こえてくるのだった。
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