返金-11
「おっ、来たな」
長四郎は嬉々とした顔をし、マスクとサングラスで変装しているマスヤの行動をチェックし始める。
マスヤは飲み物コーナーに向かい炭酸飲料を手に取り、スナック菓子のコーナーへと移動する。
長四郎も気づかれないよう尾行を続け、所々でマスヤの姿を写真に収める。
「特に怪しい動きは無しか」
マスヤは店員を避けるように無人レジで会計を済まし、退店した。
そのまま尾行を続けると、ネットに書いてあったマンションではない別のマンションへと帰っていった。
「住処、見っけ」
マスヤがマンションに入る所を写真撮影し、何階に目的の部屋があるのかを確かめるために入口ロビーへと入る。
入ると、マスヤがロビーにあるセキュリティ―キーに階の番号を入力するところであった。
長四郎は心の中で、601号室へと頭の中で呟き、マスヤがマンションに入るのを見送る。
長四郎は踵を返して、張り込み出来そうな場所の探索を始めた。
途中、ゲリラ豪雨から逃げるように先程、聞き込みを行ったコンビニへと避難する。
「ひゃあ〜 酷い目にあった」
「何が酷い目にあったよ」
イートインコーナーに目を向けると、燐がこちらを睨みながら座っていた。
「あれ、ラモちゃん。それに組対のお姉さんじゃん。何、コンビニ休憩?」
長四郎が呑気な質問をすると「私たちのボロボロ具合を見て、良くそんな事が言えるね!」燐はキッと長四郎を睨みつける。
「そんな怖い顔で見るなよ」
「あんたが呑気に遊んでいる間に私達は、かなり大変だったんだから。ですよね?」
奈緒に賛同を求めると、「そうね」とだけ答える。
「なんか、すいませんね。巻き込んじゃったみたいで」
長四郎は奈緒に謝罪し、イートインコーナーの空いている席に座る。
「で、何があったの?」
「それ、ここで聞くの?」
「聞くよ。生憎の天気だしな」
長四郎は窓の向こうを指す。
滝のように降る雨なので、移動するのを諦めた燐は例の会社で起きた事を長四郎に話す。
「ふ〜ん。そりゃあ、そんな感じにもなるわな」
長四郎が述べた感想はそれだけであった。
「もっと、他にいう事があるでしょ?」
「じゃあ、ラモちゃんは奈緒さん? でしたっけ?」
「はい」
「奈緒さんのお手伝いをしてあげて」
「あ、うん。って、あんたは何するの?」
「20年後の未来を助けに行く」
「は? 意味分かんないんだけど」
「フューチャーデイブレイクしに行くの。お、雨も止んだな。じゃ、任せるぜ」
長四郎はそれだけ告げると、マスヤが入っていたマンションへと向かった。
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