有名-12

 長四郎が警視庁に向かっている頃、燐と絢巡査長は収録する美雪の後を警戒しながら付いて歩く。

「ラモちゃん、怪我してない? 大丈夫?」

「え?」

いきなり、そんな話を持ち掛けられ燐は驚きつつも歩きながら自身の状況を確認する。

「怪我はしてないみたいです」

「そう、なら良かった」

「急にどうしたんですか?」

「ほら、人間集中している時には気づかない事ってあるじゃない? ましてや興奮状態にある時なんてのは」

「そういう事だったんですね。どうも、ありがとうございます」

「気にしないで。それより、敵さんは再び攻め込んでくると思う?」

「今、この場。ではないと思いますよ。あちらさんもバカじゃないと思うので早々、襲ってくるなんて事は・・・・・・」

「それもそうだよね」

 そんな話をしながら2人は歩を進める。

 そして、驚くことに美雪は何事もなかったように恙なく収録を進めていく。燐はそんな美雪を見て少し違和感を覚えるのだった。

 2時間後、収録を終えた美雪。

「お疲れ様でしたぁ~」

 美雪は演者やスタッフ達に挨拶をし、松坂が用意した車に乗り込む。

 当然の如く燐と絢巡査長も車に乗り込んだ。

「この車の窓ガラスは、防弾ガラスなので安心してください」

 松坂は乗り込んですぐ3人に車の説明をした。

「防弾ガラスでもダメな時はダメですよ」燐はそう水を差した。

「ラモちゃん」

 不安がることを言うんじゃないと絢巡査長に怒られる燐。

「はぁ~い。すいません」燐は軽い謝罪をし、隣に座る美雪に話し掛ける。

「美雪さん、スマホを見せてもらえますか?」

「え?」

「少し気になる事があるんで、お願いします」

 美雪は渋々、スマホのロックを解除し燐に渡した。

「ありがとうございます」燐は受け取るや否やアプリ一覧を開き、目的のアプリを探す。

 見落としがないか、何度も画面をスクロールし確認していく。それが終わると次に設定アプリを開く。

 そこから位置情報設定を確認するのだが、特に怪しい事はなかった。

「ありがとうございました」

 燐は美雪にスマホを返すと、運転中の松坂に話し掛ける。

「松坂さん。信号で止まってからで良いんでスマホを貸してもらえますか?」

「えっ、え?」

 運転中の松坂は驚き少しハンドル捌きが少し狂う。

「あ、あー」

 車が少し左右に揺れ軽い悲鳴が車内に響き渡る。

 落ち着きを取り戻した車は赤信号で停車し、松坂はロックが解除されたスマホを燐に渡した。

 燐は受け取ると美雪のスマホ同様に同じ箇所を確認し始めた。

「見つけた!!」

 再び走り出した車に衝撃が走る。

「ラモちゃん、何を見つけたの?」絢巡査長が尋ねる。

「GPSアプリです」

 燐は謎が解けスッキリした顔で絢巡査長に松坂のスマホを見せるのだった。

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