会長-20

「確かにこれだけじゃ、弱いな」

 燐が見つけ出した写真を見ながら、長四郎はそう言う。

「でしょ。で、どうするの?」燐にそう問われた長四郎は「ま、考えとくわ」とだけ答えて車から降りる。

「え? どこ行くんですか?」

 運転席のドアを開けて絢巡査長は質問するが、片手だけ挙げて何も答えず長四郎は去っていった。

「何なんだろう? ねぇ、ラモちゃん」

 絢巡査長は腑に落ちないといった様子で、運転席に腰を下ろしながら燐に話し掛ける。

「多分、あいつ。何かを掴んでるのかも?」

「なんで、分かるの?」

「二十三話分も付き合っていたら、分かりますよ。でも、何を掴んだろう」

 燐もそれが分からず、モヤモヤする。

「絢さん。この写真だけじゃ弱いと思うんで、この写真には他にもスマホで撮影している生徒が映っているんでもしかしたら、動画撮影をしている生徒がいるかもしれません。スマホ返すついでに、この付近で撮影していた生徒からスマホをお借りしてきましょう」

「OK!!」

 絢巡査長はそう返事をし、車から降りて校舎へと入っていく。

 それから、燐と絢巡査長の二人は野古の近くで撮影していた生徒達を見つけ出しスマホを借りることに成功した二人は警視庁へと戻り、写真データを検める。

 一方、長四郎は一人バイクを走らせて、ある場所へと向かった。

 その場所とは、蔵寺が通う自動車学校であった。

 蔵寺は今日、卒検らしく緊張した面持ちで待合スペースで自分が呼ばれるのを待っていた。

 長四郎は気づかれないように、教習所のパンフレットを読むふりをしながら蔵寺の行動を監視する。

「では、呼ばれた番号の人は12番教室へと移動してください」

 教習所の教官がそう言い、番号を読み上げていき「28番の方」教官が言った瞬間、軽くガッツポーズをする蔵寺を見た長四郎は「おめでとう」と聞こえるか、聞こえないか位の声で祝福するのだった。

 それから二十分後、12番教室から出てきた蔵寺に声を掛ける。

「蔵寺君」

 いきなり、名前を呼ばれたので身体をビクッとさせる蔵寺はゆっくりと後ろを振り向きながら声を掛けてきた人物を確認する。

「探偵さん」

「免許取得おめでとう」

「まだ、卒検が終えただけですけど」

「いや、取ったも同然だよ。それより、これから時間ある?」

 長四郎の質問にスマホで時間を確認した蔵寺は「良いですよ。出来たら手短に」

「分かりました」

 長四郎と蔵寺は、教習所の空きスペースで語り合う事となった。

「今日は、僕に何の用ですか?」蔵寺から話を切り出してきた。

「実はさ、野古君を殺害した犯人分かったんだよね」

「そうですか。わざわざ、それを言うためだけにここへ来たんですか?」

「いいや、違う。警告に来たの?」

「警告? ですか」

「うん、そう。警告。犯人の動機はね、一年前のキャンプに参加していた君らへの復讐」

「まさか・・・・・・」

「いや、そのまさかなんだよ。だから、野古君は殺された。恐らく、一年前に死んだ栗手君を殺害した張本人なんだろうな。それで、真っ先に殺された。だから、君にも用心しておくように忠告しに来ただけ。じゃ」長四郎は手を挙げてその場から去ろうとするが一度、立ち止まると「あ、水野先生にもこの事、伝えといてね」長四郎はそれだけ告げてバイクに跨ると教習所を後にした。

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