行方-9
長四郎達が佐野から話を聞いている頃、佐藤田警部補の頼みで松重刑事は羽田空港の入国管理局に来ていた。
「国際指名手配されていますかね?」松重刑事の応対をする入国管理局の職員がそう聞いてきた。
「いや、されてないと思いますが」
「だと探すのは難しいですね。何か手掛かりになるような物はないんですか?」
似顔絵はあるが肝心の顔は見えず名前だけは分かっているが・・・・・・
「困った事に名前だけは分かっとるんです」
「名前だけですか?」
「はい」
「一応、名前だけ教えてください。検索かけてみますから」
「名前はイヴ・ウィンガードです」
「綴りは?」
「綴りですか? ええと、Eve wingardですかね?」
松重刑事は自身の手帳に綴りを書いて職員に伝えた。
「検索してみますね」職員はパソコンの入国者名簿の検索画面に松重刑事が書いた名前を打ち込む。
「あ、出てきましたね」
「どうです?」
「特に不審な事はないみたいですね」モニターに映る検索画面の結果を見ながらそう答えた。
「パスポートのコピーを貰いたいんですが」
「分かりました。今、持ってきますね」
職員は印刷ボタンを押して席を立ちすぐにパスポートのコピーを持って戻ってきた。
「お待たせしました。こちらがパスポートのコピーになります」
「どうも」
受け取った松重刑事はパスポートを見て渋い顔をするのだった。
佐野が住むマンションを出た長四郎は、池袋駅へと戻ってきた。
「長さん。もしかして、ホームレスを雇っていた男を探すんですか?」
「Yeah」絢巡査長の質問に長四郎はそう答えた。
「でも、探すのは至難の業じゃないですかね? 利用者が多い駅ですから」
「だからこそ、探しがいがあるんじゃない」
「ポジティブなんだから。やっぱり、ホームレスの人から話を聞きますか?」
「いや、デパートだな」
「あ、居たよ。祐希」
長四郎達を見つけた明野巡査が遊原巡査を連れ立ってこちらに近づいてきた。
「情報交換は終わったの?」
「そんなのあるわけないでしょ」遊原巡査はきっぱりと言い切った。
「流石。はったりは時として必要だからね」
「そんなことより、探偵さんはこれから何を?」
「例の男を探す」
「分かりました。ホームレスの人達に話を聞かないとですね!」
早速、行動を開始しようする明野巡査の首根っこを掴んで取り押さえる遊原巡査。
「ホームレスの人に聞いても仕方ないだろ。女子高生はそこまでの情報は仕入れてないだろ?」
「遊原君、優秀だねぇ~」
「どうも」長四郎に褒められて遊原巡査は少し嬉しそうな顔をする。
「勝手の分かる遊原君と明野巡査で行動してもらって。俺と絢ちゃんで捜索するから。じゃ、解散!!」
こうして、東と西のデパートに各々分かれて行動を開始した。
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