帰国-13
「うん、うん。了解した。ありがとう」
長四郎は礼を言って通話を切った。
「お爺様なんて言っていたの?」
「うん、初代相棒・亀山薫が五代目相棒として復活するってさ」
「何それ?」
「さぁ、調べるとしますか!」
長四郎は自分の両頬をペシペシと叩き、気合を入れる。
長四郎と燐は、習子の部屋で蒼間に繋がる証拠を探しに訪れていた。
勇仁が習子から聞き出した情報を基に、部屋に置いてあるノートパソコンの電源を入れる。
「パソコンに何かあるの?」
「あるから電源を入れるんだよ」素っ気なく答える長四郎。
「ねぇ、私に何か隠し事してない?」
「してませんよ」
「してるよ」
「してない」
「してる!」
そんな押し問答をしていると、ロック画面がモニターに表示される。
長四郎はスマホに送られてきたパスワードを、打ち込み先へと進む。
指定されたフォルダを探す。
10分後、五重層でカモフラージュしていたフォルダを見つけ、今、最後のフォルダに目的のフォルダを開く段階まで来ていた。
「このフォルダ名、なんて読むんだろう」
目的のファイル名は「Rache」と書かれており、英語ではないと踏んだ燐はこの読み方が分からず首を傾げる。
「ラッヘ。ドイツ語で復讐って意味」
「ああ、そうなんだ」
「おいこれ見てみろよ」
長四郎は燐に計画書の一部を燐に見せる。
「これって、賀美の息子が送りつけた計画書じゃん」
「ああ、そうだな」と返事しつつ、長四郎はこの計画書がカモフラージュであることを見抜いているので、それ以外での蒼間に繋がる資料を探す。
勇仁の話では、この最下層のファイルのどこかにその履歴を習子は残しているとのことらしい。
「ねぇ、この計画書があるのに何を探しているの?」
「何を探しているんだろうね?」
「教えなさいよ」長四郎の横で突っ立ているだけの燐は暇でしかなかったのだ。
「なぁ、もしだ。もし、自分を焚きつけた人間が裏切り者である事を想定した場合、どういう行動に出る?」
「う~ん、私だったらぁ~別のフォルダに入れるな」
「そうか。ありがとさん」
長四郎はフォルダを閉じて、別のフォルダを探し始める。
「どこだ。どこだ」そうぶつぶつと呟きながら、フォルダを開いては閉じてを繰り返す。
30分後、長四郎は見つけたのだ。
蒼間と習子が事前にやり取りしているファイルを。
「よしっ、欲しいものはあったから帰るぞぉ~」
「分かった。てか、私、全然活躍してないんだけど」
「安心しろっ、これから活躍する」
長四郎と燐は習子の部屋を後にした。
それから数時間後、長四郎、燐、勇仁、一川警部、絢巡査長の五人は良器が主催する個人パーティー会場に来た。
「随分、賑やかね」燐はパーティー会場に入って、率直な感想を述べた。
「お目当ての人物は、お~居た。居た」
勇仁は蒼間と話している良器を見つけて、二人に向かって歩いて行く。
「どうも、どうも」長四郎は嬉しそうに良器に声を掛けると「また、貴方達ですか?」嫌そうな顔を浮かべる。
「毎度、お馴染みの私らです」
「あれ、この人達って・・・・・・」蒼間は白を切ったような演技をする。
「ああ、親父の事件を捜査している探偵。しつこいんだよ、この二人」
『しつこくて、どうもすいません』長四郎と勇仁は声を揃えて答える。
「彼が何かしたんですか?」とぼけたような顔で質問する蒼間に燐は自信満々に「事件の重要参考人です!!」と答えた。
「重要参考人!? こいつが? ありえませんよ」何故か良器を庇う蒼間。
「それがそうではないんです。これを見てください」
燐は良器と蒼間に、習子の計画書を見せる。
「これは?」蒼間は少し高揚した感じでその内容を尋ねる。
「ここには、逮捕された福部 習子とこの男が企てた金衛門さん殺害計画が書かれているの!!」
燐のその言葉に良器は、目を右往左往させ動揺しているようであった。
「あれあれ? どうしましたか?」長四郎は嫌味ったらしく話しかけると「そ、そんなのは知らない」と明らかに動揺した感じで返答する良器。
「知らない訳ないだろう。これ、習子ちゃんの部屋で発見されたんだぜ」
勇仁は計画書を燐から取り上げて良器の胸に軽く計画書で二回程、小突く。
「私は、私は憎かったんだ!!!」
良器は膝から崩れ落ち、床に拳を叩きつける。
「それで親父さんを殺したのか?」勇仁の質問に良器は無言で大きく頷いて同意した。
「全く、バカな男だよ」長四郎は呆れ口調で話す。
「あんたらに何が分かるっ!! 俺の気持ちなんて。気持ちなんて・・・・・・・」
良器は床に突っ伏して、泣きじゃくるのだった。
「おい、良器。お前とおじさんの間に何があったのか、分からないけど。ちゃんと罪を償えよ」一丁前に良器を諭す蒼間。
「お前の言う通りだ。俺は自分のしたことにけじめをつけるよ」
「そうか、そうか」と言う蒼間の顔は笑みがこぼれていた。
「では、賀美 良器。賀美 金衛門殺人教唆の罪で逮捕する」
一川警部はパーティー会場に居る人間全員に聞こえるように宣言し、突っ伏している良器を立たせ絢巡査長と共に連行する。
「あ、皆さん。お騒がせしてすいませんでした。どうぞ、パーティーをお楽しみください」
長四郎はパーティー会場に居る来場客にそう告げ、勇仁、燐と一緒にパーティー会場を後にした。
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