支援-6

 長四郎、燐、絢巡査長の3人は作戦会議と題して、昼食を取っていた。

 今日の昼は、丸の内で働くOL御用達のお洒落なイタリア料理屋でのランチセットを三人は食していた。

「やっぱり、あいつが犯人だよね?」

「どうだろ? 決めつけるにはまだ早急すぎるんじゃないかな」

 燐の問いに絢巡査長は、自分の見解を示す。

「あんたは、どう思う」燐はパスタをすすりながら、長四郎に問いかける。

「どう思うって。俺はこの場だと、場違いなんじゃないかな」

「そうじゃなくて事件の事よ。事件のこと」

「え? 何で、飯食いながらそんな話をせにゃならんのだ。そんな事より、俺、浮いてね?」

 その店の男性客は長四郎だけで、長四郎が座っている席以外全席女性客で埋まっていたからだ。

「そんな事ないよ。男としては、嬉しいんでしょ。ハーレムなんでしょ?」

「何がハーレムだよ。見た目だけ煌びやかに見せてその実、社会の荒波に揉まれ、仕事に追われ、身も心も腐りかけのゾンビみたい女達に囲まれもよぉ~」

 その一言を言い終えた同時に、全方向から長四郎に殺意の視線が向けられる。

「あんた、自分が何を言っているのか、分かっている?」

 燐はニコニコ笑顔で、フォークを逆手持ちしサラダのミニトマトを突き刺す。

「あ、いや・・・・・・日本企業を支えているお姉さん方に囲まれて幸せです(冷や汗)」

「それで誤魔化しているつもり? てか、(冷や汗)って何?」

 燐はそう言いながら、突き刺したミニトマトを頬張る。

「まぁ、まぁ」

 絢巡査長がその場を納め、話を戻す。

「で、これからどうします? ラモちゃんのせいで話を聞けなかったですし」

 絢巡査長からそんな言葉が出てくるとは思っておらず、燐は口をあんぐりと開けたままフリーズしてしまう。

「そうだなぁ~取り敢えず、今回の事件の発端となった事件を調べるのは妥当じゃないかしら」

「つまりは、横領事件から調べてみるという事ですね」

「Exactlly!! 正解だ」

 指を鳴らし、絢巡査長を指してドヤ顔を決める長四郎。

「被害者の会社、ここから近いから。時間も、申し分ないしな」

 長四郎は自身のスマートウォッチを見ると、12時55分を示していた。

「お会計して、行きましょうか?」

「ああ」

 長四郎と絢巡査長の二人は席から立ち上がるが、燐は依然としてフリーズしたままであった。

「じゃ、お会計宜しくぅ~」

 長四郎は燐にそう言い残し、絢巡査長を連れて店を出る。

 それから5分程、絢巡査長と共に丸の内ビル街を歩く長四郎。

 目的の会社が近くまで来た時、長四郎の背中に強い衝撃が走る。

「ゲゲル!!!!!」

 長四郎はそう叫びながら、華麗に吹っ飛び地面すれすれを滑空してどこかへと飛んでいく。

「ラモちゃん、遅かったね」

 長四郎を襲ったのは、燐であった。

 え? 知っているって?

 そうだよね、この展開をもう5話も繰り返しているからね。

 飽きるよね。

 なんか、ごめんなさい・・・・・・

 以上、作者のメンヘラ劇場でした。

「探偵は女子高生と共にやって来る。」第伍話を引き続き、お楽しみください。

「ラモちゃん、遅かったね」

 絢巡査長は、華麗な着地ポーズを取る燐に声を掛けると、燐は「立ち直るまで時間かかって。でも大丈夫です」と答えながらサムズアップする。

「にしても、ここがよく分かったわね」

「私には、これがありますから」

 燐はスマホのGPSアプリを絢巡査長に見せると、GPSを付けられた長四郎を表したピンは、ひたすら真っ直ぐ移動していた。

 すると、女性の悲鳴が先の方から聞こえた。

 2人は急いで悲鳴の元へと駆け付けると、大柄な女性の股下に長四郎の顔があった。

 とはいえ、長四郎はとうに気絶しておりしかも、悲鳴を上げる女性に頭を何度も何度も踏みつけられていた。

「警察ですけど、何かあったんですか?」

 絢巡査長が警察手帳を見せながら、女性に状況説明を求める。

「あ、刑事さぁ~ん!! 怖かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 そう言いながら、大柄な女性は絢巡査長に抱きつく。

 その締め付けはきつく、絢巡査長の身体から軋む音がする。

「ふぐっ!!!」

 話を聞きたくても、聞けないそんな状況であった。

 一方、燐は気絶し倒れている長四郎に馬乗りなりながら、オラオララッシュを

決め込んでいた。

「この無銭飲食の変態野郎がっ!!!」

 この一言と同じくして解き放った拳を受け、長四郎は意識を回復した。

「痛い、痛い!! ラモちゃん」咄嗟に手で顔をガードする長四郎。

「後で、キッチリお昼代回収するからな」

 燐はそれだけ言い、馬乗りを解除する。

 身体のあちらこちら痛む中、何とか起き上がると眼前では絢巡査長が大柄な女性に絶賛締め付けられ中であった。

「お、おい。ラモちゃん!! 絢ちゃん、助けなきゃ!!!」

 長四郎の言葉を受けて燐が目を向けると、絢巡査長は今にも意識が飛びそうな顔をしていた。

「ヤバッ!!!」

 燐はすぐ様、大柄な女性と絢巡査長を引き剝がす。

「ゲホッ! ゲホッ!! ありがとう。ラモちゃん」

 燐に礼を言う絢巡査長。

「あら、やだ!! 大丈夫ですか?」

 大柄な女性も自分が強く抱きしめてしまった事に気付き、絢巡査長の状態を確認する。

「だ、大丈夫ですよ」

「良かったぁ~」

 大柄な女性は安堵し、絢巡査長と燐から長四郎が不審者ではない説明を受ける。

「そうだったんですか。ごめんなさいね」

「いえ、こちらこそ。ご迷惑をおかけしてしまって」

 大柄な女性と長四郎は、お互いに謝罪する。

「じゃあ、俺達はこれで」

 長四郎は大柄な女性にそう告げ、目的のビルに入ろうとすると大柄な女性に腕を引っ張られた。

「ウチの会社に何か用ですか?」

 大柄な女性はそう言うと、名刺を長四郎に渡す。

 そこには、帰島商事 営業第三課 係長 田原たはら かなめと書かれていた。

「えっ!? ここの社員さんだったんですか。実は」

「実はここの社員の林野さんの事件について、聞きたいことがあって来たんです!!!」

 長四郎が目的を喋る前に、燐が台詞を横取りする。

「林野の事ですか?」

 絢巡査長を見て、その通りなのか確認する田原。

「彼女の言う通りです」

 絢巡査長はそれだけ答えると、田原は「どうぞ、こちらへ」とだけ言い3人を連れてビルに入る。

 3人が通されたのは、資料の山になっている会議室であった。

「汚い部屋で申し訳ありません。空いている席に座ってください」

 そう指示され、長四郎達は椅子1個分間隔で空いている椅子に並んで腰掛ける。

 田原は普段座っているであろう椅子に座ると、本題に入る。

「林野の件でしたね」

「はい。その前に一つ聞かせてもらえませんか?」

「何でしょう?」

 長四郎が一番早く返事をし、田原に質問する。

「御社は、林野のさんが横領したと思っていないのではないですか?」

「というのは?」

「田原さんが、俺達をこの部屋に通したのには理由があると思いましてね。この資料の山、全部横領に繋がる資料ではないんですか?」

「その通りです。この社の上層部は、彼が犯人だと思っていなんですよ」

「それは、何故ですか?」燐が田原に説明を求めた。

「実は、あの記事が出る前から調査は行っていたんです。

その時に、横領した金の振込先が林野の口座である事を突き止めたんですけどね。

少し、出来すぎているなと」

「出来すぎですか・・・・・・」

 長四郎は気になるといった顔をする。

「はい。といっても気づいたのは、社長なんですけどね。社長に調査報告が挙がった際に、横領にしてはマヌケすぎると」

 田原は資料の中から、一つのファイルを出し真向かいに座る長四郎に渡す。

「失礼します」

 早速、中身に目を通し始める長四郎。

「ねぇ、何が書いてあるの?」

 燐がファイルの内容を聞くと、田原が答える。

「送金履歴です」

「送金履歴ですか?」

 絢巡査長が復唱して確認すると、田原は頷き話を続ける。

「送金先の口座は、個人が立て替えた経費を入金する口座なんですけど。横領した金、全ての送金先がその口座になっているんです」

「つまり、その口座は会社でも把握できるということですか?」と絢巡査長。

「はい、その通りです」

「でも、送金された金は別の口座に送金されてますね?」

 資料を呼んでいる長四郎が尋ねる。

「そうです。その口座を今、調査させています」

「調査させているという事は、田原さん以外にもこの横領事件について調べている方が?」

「はい。林野の同僚のみなもとですが、彼からも話を聞きますか?」

「出来れば、お願いしたいです」

「分かりました。少々お待ちください」

 田原はそう言って、横領事件の調査をしているという源を呼びに会議室を出て行った。

「それ、ホントに変なところあるの?」

「正直、経理じゃないから分からん。というのが正直な感想」

 燐の問いに率直な感想を言う長四郎。

「ふ~ん」

 暫く、長四郎達3人は田原が源を連れて戻って来るのを待つのだった。

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