返金-17
長四郎と燐は、金髪の男の夕飯を買いに近くのスーパーに来ていた。
「ねぇ、人殺しって言っていたけど。誰が殺されてたんだろ?」
燐はお惣菜弁当を見ながら、長四郎に問う。
「誰なんだろうな」長四郎はそう答えながら、自分が食べるお惣菜弁当を吟味する。
「適当に答えないで。あんたの事だから、大方の見当はついているんでしょ?」
「見当ねぇ~ ハンバーグ弁当か、唐揚げ弁当。どっちが良いと思う?」
「あんたさ、どうしてそうすぐに答えない訳? そんなんだから、彼女いないんだよ」
「おいおい、論点がズレているぞ。彼女いないのと答えをはぐらかす事に関しては、何の繋がりもない。困ったちゃんだな。で、ハンバーグか唐揚げ、どっちが良いと思う?」
「じゃあ、こっち」
燐はそう言って、ヘルシー弁当を手に取る。
「ヘルシーって、気分じゃ」
「なんか、文句でもあるの?」
「いいえ、ありません」
燐はヘルシー弁当を三人分、買物かごに入れレジへと向かった。
「ラモちゃん。奈緒ちゃんはどうしたの?」
「奈緒さんなら、本庁で調べ物してくるって言ってた」
セルフレジにお弁当をスキャンさせながら、燐は答えた。
「ああ、そ」
「奈緒さんがどうかしたの?」
「いや、なんでもない」
「あ、もしかして、奈緒さんの彼氏の事、知っているの?」
「ああ」
長四郎がセルフレジにお金を投入していく。
「あんた、彼氏さんを見つけたの?」
「いいや。見つけてたら、奈緒ちゃんに真っ先に言ってる」
「それは、噓」
「なんでよ。酷い奴だなぁ~ ラモちゃん、ちょっと良いか?」
スーパーを出てすぐ長四郎は燐が手に持つマイバックに手を伸ばす。
「ちょっと、何?」
燐はバックを抱きかかえる。
「弁当を取りたいの?」
「なんで?」
「なんでって。行くところがあるから」
「何処?」
「それは、秘密」
「なんでよ」
「なんでって、口が軽いから」
「どこが!?」
「説明するのも面倒くさい。取り敢えず、弁当」
「ムカついたから、渡さない。私があんたの弁当を食べる」
「OK. 太らない事を祈ってるよ」
長四郎は嫌味を言って、その場から足早に去っていった。
「ホント、ムカつく。もう少し買い物してこよ」
燐はUターンし、スーパーに戻るのだった。
燐と別れた長四郎は、一川警部と合流する。
そして、二人はピシャリが住むマンション近くの個人経営の居酒屋に入り、捜査会議を始める。
「一川さん。少しショッキングなお話をしても?」
「ショッキング?」一川警部は眉をひそめ身を乗り出して聞き耳を立てる。
「今日、ラモちゃんと奈緒ちゃんが捕まえた組織の人間が居ましてね。そいつが言ったんですよ。ピシャリさんが人殺しをしたって。勿論の事、本人は手を下してはいないらしいんですけどね」
「人殺し・・・・・・」
「一川さんも察しましたか」
長四郎の言葉に黙ったまま頷いて返事する。
「キチンと調べていないので、何とも言えませんが奈緒ちゃんはこの事件から身を引いて貰った方が良いかと」
「そうね。絢ちゃんに頼んで見るばい」
「それで、昼間に送った男の前科は?」
「そっちなんやけど。兵庫県警でパクられっとったばい」
「兵庫県警?」
「そ。まぁ、十代の時にやんちゃしとったみたいやね」
「やんちゃですか」
「脅迫と暴行の罪で逮捕、補導されとるけん。ま、やんちゃの代表格みたいな罪状やね」
「ほぉ~」
「こん子以外にも、警察にお世話になっている子がおったばい」
「どの子です?」
一川警部は、長四郎が送った写真をスマホに映し出し対象の人物を拡大する。
「こん子」
「意外な人物だな」
一川警部が指さす人物は、ピシャリのカメラマン・マスヤであった。
「資料によると、菜済と共謀しとったらしい」
「成程。何となく、関係性の相関図が見えてきました」
「生ビールでぇ~す」
居酒屋の店員が二人の前に生ビールの入ったジョッキを置く。
「じゃ、乾杯!」
「乾杯!」
長四郎と一川警部がグラスを掲げ、ジョッキに入った生ビールを一気に飲み干した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます