返金-16

 ピシャリを尾行して三時間が経過していた。

「ふわぁ~お」

 三時間も歩きぱなっしで、疲れが出てきた長四郎。

「にしても、長いし凄いなぁ~」

 吹き出る汗を拭いながら、三時間歩きぱなっしで喋り続けるピシャリに長四郎は心の底から感心する。

「それじゃあ、また次の動画で」とピシャリがいつも動画で言う締めくくりの言葉を述べた。

 長四郎は取り敢えず、今日の尾行を終えよう。そう心に誓った、その時、スマホにメッセージが入る。

 送信相手は、勿論のこと燐であった。

「今日は早く帰ろうかなって思ってた時になぁ~」

 長四郎は嫌そうな顔をしながら、メッセージの内容を確認する。

 “直ちに、集合されたし。来ない場合は、粛清されるものと思うべし”

「古臭い文面だな。あいつ、ホントに女子高生か?」

 燐の指示通りに長四郎は、燐が金髪の男を監禁している部屋へと移動した。

「おい、いつの間にこの部屋に行きついたんだ。このガキ」

 部屋に入ると同時に、燐に向かって嫌味を言う長四郎。

「探偵の助手に隠し事は無理なの」

「全く、困ったちゃんだ。って、誰だこいつ!!」

 椅子に縛り付けられた金髪の男を見て、長四郎は驚く。

「何、驚いているの?」

「そりゃ、驚くよ。何、監禁してるのよ。犯罪だぜ。女子高生」

「フフフっ。警視庁の刑事さん、公認だから大丈夫なのだ!!」

「絶対、大丈夫じゃない」

 金髪の男と長四郎の意見が一致した瞬間であった。

「あんた、こういう時には元気で喋るのね」

「う、うるせぇ。早く解放しろっ!!」

「嫌よ」燐は即答する。

「それで、このナイスガイから何か聞け出せたの?」

「まぁ、それなりには」

「じゃあ、解放してあげなさいよ」

「そうだ。解放しろっ! あんた、話が分かるな」

「そうでしょ、そうでしょ。あんた、さぞ酷い拷問にあったんだろ」

「ああ」

「可哀想に」長四郎はハンカチを取り出し、男の顔を拭う。

「臭っ!」

 一日中歩き回った長四郎の汗が染みついたハンカチは、とても良い臭いであった。

「あんたこそ、拷問してるじゃん」

「拷問してないよ。それより、何か俺に喋る事あるんじゃない?」

「ねぇよ。そんなもん」

「ない。ああ、そ」

 長四郎は再び自分のハンカチを金髪の男の顔に近づける。

「やめろ。俺が知っている事は、そこの女に全部喋った」

「喋ったの。まぁ~ 偉い」

 長四郎は三度、ハンカチを顔に近付けていく。

「おえっ!! 知らねぇったら、知らねぇ! おえっ!!!」

「あんたが一番、拷問しているじゃん」

「とんでもない。失礼しちゃうわねぇ~」オネェ言葉の長四郎は、男の鼻元にハンカチを擦りつける。

「やめろ! やめろ!! おえっ!!! ピシャ、ピシャリさんが、おおえっ!!!!」

「おっ、ピシャリさんが何だって」

 鼻元からハンカチを離す長四郎。

「ピシャリさんが俺たちの元締めだ」

「そんな事は知っている。他に言う事ないの?」

 ハンカチを近づけようとすると「ある。あるから、ハンカチはやめてくれ!!」涙を浮かべながら懇願する。

「へい。では、続きをどうぞ」

「ピシャリさんの指示で、一人、殺した」

「お前さんが?」

「違う。あの人は、殺しの別働隊がいるんだ!!」

「殺しの別働隊かぁ~ ファイトが湧いてくるぜぇ~」

「ファイトって。あんた、真面目にやりなさいよ」

「真面目も真面目。じゃ、どうして殺しが起きたのかを聞こうか」

 長四郎はハンカチをちらつかせながら、金髪の男に質問するのであった。

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