返金-22
「もう、勘弁してくれ」
ピシャリは涙で顔を濡らして、奈緒に懇願する。
「嫌よ。あんたが、自白するまでは」
「俺は何も知らないんや!」
「噓。あんたは、人を殺している。少なくとも一人は確実に」
「なんかの間違いや!!」
奈緒は拳銃の撃鉄を降ろす。
「次、口答えすると死ぬことになるわよ」
奈緒の本気の目を見て、ピシャリはこのまま殺される。そう確信し、最後の抵抗として罵詈雑言を浴びせてやろうと口を開いたと同時に、奈緒の持つ拳銃のトリガーに指がかけられる。
あ、俺、死ぬんだ。とピシャリはそっと目を閉じる。
だが、一向に痛みを感じない。変に思いゆっくりと目を向けると頭上をブーメランが飛んでいた。
「ブーメラン?」
ブーメランが飛んでいった方に視線を移すと、あの変な探偵と若い女、禿げ頭のおっさんそして、涙を浮かべて奈緒を見つめる女性が立っていた。
「取り敢えず、人殺しにさせなくて良かった」長四郎は安堵した顔で言う。
「おい! 殺人未遂や!! 早く警察呼んでくれ!!!」
「その警察はここに居るばい」
一川警部はピシャリに警察手帳を見せると同時に、部屋にパシンッと乾いた音が響き渡る。
絢巡査長が奈緒を渾身の力で、平手打ちしたのだ。
「奈緒。自分が何をしたのか。分かってる?」
「・・・・・・」奈緒は絢巡査長から目を逸らして何も答えない。
「あいつ、あいつが俺を殺そうとしたんや!」
「見りゃ分かる」燐はそれだけ言うと、肩から血を流すピシャリの手当をする。
「さ、ピシャリさん。ようやくキチンとお話できますね」
「何も話すことはないし、俺は被害者なんや早く病院に連れてけ!!」
「そんなに怒鳴ると、傷に響くよ」
燐にそう言われ「うるさいわ!」と返事するがズキッと鈍い痛みが身体に走る。
「ま、そんなに長くなりませんから。救急車が来るまで話を聞いてください。奈緒ちゃんも」
そう前置きし、長四郎は話始めた。
「ピシャリさんいや、本名・佐谷田賢也さん。あんたは、詐欺というか悪徳商法会社の元締め。そうですね?」
長四郎の問いかけに黙秘するピシャリ。
「これについては、芋づる式に分かる事なので、その件は置いて以前に話をした殺人についてです。殺人事件は今、我々が居るこの場所で行われました」
「何を証拠に言うてんねん」
「証拠はここに落ちていた血痕です。そして、被害者はもう間もなく見つかるんじゃないでしょうか?」
長四郎はそう言って、一川警部に目で合図を送ったタイミングで一川警部のスマホが鳴る。
「はい。一川警部です。はいはい。どうもぉ~」
そう言って、電話をあっさりと切った。
「長さん。たった今、死体が見つかったって」
「だそうですよ。それより、誰が殺されたとか聞きませんね? 自分が何故、こういう目に合うのかとか」
「その刑事が勝手にやったことやろうが!!」
「それはそうなんですけど。動機? 知りたくありません?」
長四郎はニヤけた顔でピシャリに問うのだった。
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