第弐拾漆話-大物
大物-1
私立探偵の
今回の依頼は、港区在住のセレブ妻が旦那の浮気調査を依頼してきたのだ。
一週間前、ご近所のセレブママ友が港区にあるステーキハウスで流行りの港区女子と食事をする旦那の姿を見つけ、それをお茶会の時に多くのママ友の前でお喋りした事で発覚した。
多くのママ友の前で他所の旦那の浮気現場を目撃した事をバラすのは最低だと思うが、重要なのはそこじゃない。
浮気された妻の怒り心頭度は、120%といった感じで依頼に来た時を思い出したくないぐらい怖いものだった。
まぁ、それは話に関係なので割愛しよう。
長四郎はかれこれ三時間近く張り込みをしていた。
多分、休憩を利用していると踏み、出てきたところを写真に収める為にデジカメで対象の人物の顔がしっかり映るアングルを探していた。
そんな時、スマホに着信が入る。
「ったく、誰だよ」
スマホを取り出して着信相手を確認すると、相手は
「無視。無視」スマホをしまい、ラブホテルに視線を戻すと、対象の二人がタクシーに乗り込むところだった。
「あ、やべ!」
長四郎は慌てて自身のバイクが止めてあるコインパーキングに戻り、支払いを済ませ大急ぎでタクシーの後を追うのだった。
その夜、なんとか浮気相手の家まで特定した長四郎が事務所に帰ってきたのは日付が変わる頃であった。
「疲れた・・・・・・」
重い足を一生懸命に奮い立たせながら、階段を上がり事務所のドアに鍵を挿しこもうとすると鍵が入らない。
鍵が開いているのだ。そこで、長四郎は察した。
事務所の中に誰が居るのかを。
「はぁ~」
深いため息をつきながら、長四郎はドアをゆっくりと開ける。
部屋に入るとすぐ顔面にクッションが叩きつけられる。
「遅い!」ソファーに深々と座る燐の第一声はそれであった。
「あの、今日は疲れたので帰って頂けますか?」
「はぁ? 私、六時間待たされたんだよ」
「そんな事、知らんがな。こっちは、仕事してきたの」
「どうせ、浮気調査でしょ」
「へい。そうでがすが」
「そうでがすがって。新しい依頼を持ってきたのに」
「依頼?」
「失踪人の捜索をね」
「失踪人の捜索ですか。警察にお願いすれば?」
「依頼人は、
「富有子? ああ、あの金を払わなかったおばちゃんか」
前回の事件で、詐欺で奪われたお金を取り戻せなかったので長四郎の成功報酬は0となったのだ。
「あんたが金を取り返さなかったからでしょ? それに、今回は行方不明になった場所が分かっているし」
「そうですか。俺、これから報告書書かないと行けないから」
「受けるでしょ? 依頼」
「受けないよ。まだ、追加調査もあるだろうし」
「ふ~ん。分かった」
「今日はやけに聞き分けが良いじゃない」
「いつもの事ですけど」
「そうですか」と答えるが内心は“絶対、噓だ”そう思う長四郎。
「もう遅いし、泊まっていくから。お休みぃ~」
長四郎の生活部屋へと燐は入って行くのだった。
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