詐欺-17

 長四郎が検索を掛けたのは、このシェアハウスで撮影されたkuunhuberの動画であった。

 その内容はシェアハウスのルームツアーで、ここの住人であろうkuunhuberがカメラ片手に家を散策していた。

「ああ、これで隠し部屋的なものを探すって事ね?」燐は真剣な面持ちで動画見る長四郎に声を掛ける。

「・・・・・・・・・・」

 だが、長四郎は集中モードに入っており燐の声掛けに無視をしながら動画を巻き戻したり、早めたりしながら何度も何度も同じ動画を見る。

「ラモちゃん、今はそっとしとかな」一川警部にそう忠告され「はーい」と返事をし、長四郎の作業を見守る。

 すると、長四郎が「誰か、紙とペン。それと定規を」と指示を出したので、絢巡査長は慌てた感じで言われた物を渡した。

 受取った長四郎は、紙に何かを描き始めた。

「こんな物かな?」書き終えた長四郎はそう言って、描いたものを三人に見せた。

「これって、この家の間取りですか?」絢巡査長の問いに静かに頷く長四郎。

「これを見る感じじゃ、隠し部屋なんてなさそうやね」

「一川さんの言う通りです。この家のどこにも隠し部屋的要素はどこにもありません」

「待ってよ。地下室ってことはないの?」燐は異議あり! といった感じで提案する。

「動画を見た感じ、地下室に通じるような物は映ってなかった」

「そうなの?」燐は不服そうな表情を浮かべながら納得する。

「すいません! 遅れました!!」

 齋藤刑事が慌てた感じで、部屋に入ってきた。

「何をそんなに慌てていると?」一川警部がそう聞くと、「いや、早くこの映像を見せようと思って」齋藤刑事は息を切らしながら答えた。

「じゃあ、早速見せてくれ」

 長四郎に言われ、データの入ったUSBをパソコンに差し込み動画を再生させる。

 昨日、燐と絢巡査長が見た映像と同じもので、尾多が化粧品を外国人店員から購入している所がバッチリと映っていた。

「そう言えばさ、この店ってどこら辺にあるの?」

 長四郎は今頃になって、店の所在について質問した。

「オンジンの家から徒歩圏外の場所。自転車で大体20分ぐらいの距離の場所。私、聞きまわったんだからね。感謝してよ」

「はい、ありがとうございました」

 心の籠っていない礼を言う長四郎に、燐は回し蹴りを決め込む。

「痛って!! 何すんだよ!」

「何の事?」燐はすっとぼけて見せる。

「ったく、行方不明の人間が何をしているのか? そこが一番気になるんだよな」

 長四郎の言葉にその場に居た全員が賛同するようにうんうんと頷いた。

「あの良いでしょうか?」齋藤刑事が発言を求めながら手を挙げる。

「言ってみろ」

 長四郎はふんぞり返りながら、偉そうに発言を許可すると燐に頭を叩かれる。

「単純ですいません。女の子を囲って行う事って、一つじゃないですか」

「確かに」

「そうねぇ~」

「まぁ、大方そういった考えになるのは普通だな」

 大人三人は、齋藤刑事の言葉の意図に理解していたのに対して、燐はきょとんとした顔で理解していないようであった。

「あ、もしかして、ラモちゃんは意味分かってないなぁ~」

「わ、分かっているし」

 からかう長四郎に、燐は顔を真っ赤にしながら反論する。

「まぁ、分からん方が良かよ」

 一川警部の言葉に、絢巡査長も「そうそう」と言って同意する。

「ねぇ、こうも考えられない? あの化粧品があるから女をあの部屋に連れ込まれているんじゃない?」

「それは分かっている」

 燐の意見にぴしゃりと断ち、長四郎は話を続ける。

「拉致された女の子の顔写真とかありますか?」

「ああ、あるばい」

 一川警部は齋藤刑事と共に、被害者女性たちの親族から提供された写真を長四郎に見せる。

「あの悪いんだけど。女性陣はこの部屋から退去して欲しいですっ!!」

「なんで、出て行かなきゃ行けないのよ!!」

「いや、あのほらっ。男だけで話したいというか。何というか」

「ちゃんと、説明しなさいよ!!」

「いやぁ~はっはっははぁ~」

 藤岡弘、みたいな笑い方で誤魔化す長四郎の鳩尾に燐は拳を叩きこんだ。

「ぐぼっ!!」変な声を上げながら倒れ込む。

「どぉどぉ、どぉ」

 絢巡査長は興奮し、鼻息荒い燐を落ち着かせる。

「連れ出すんで。どうぞ、男共でお話しください!」絢巡査長は燐を連れてheyawo後にした。

「あーあ、絢ちゃん怒らしたぁ~」

「ひ、酷いですよ。一川さん。どうして、助けてくれないんですか?」

「いやだって、絢ちゃんの顔が今までに見たことのないような表情やったけん」

「はぁ~」

「熱海さん、本題に入って貰っても良いですか?」

「モブの分際な癖して、生意気だなぁ~」

「そんなん良いですから、早く聞かせてください」

「話は簡単。ここに映っている娘の中でどれが可愛いかを決めようというわけだ」

「はい?」

「おっ、長さん。この娘はどうやろ?」

 長四郎の提案に耳を疑う齋藤刑事を他所に一川警部は選定を始める。

「あー確かに可愛いですけど。でも、俺はこっちの娘の方が好みですね。てか、この娘は一川さんの好みの娘ですよね」

「あ、バレた?」

 そして、男二人高笑いをする。

「あの、これが何か事件と関わり合いがあるんですか?」

「ある、ある。大いにある。それで、これを見て頂きたいんだよ」

 今度は、Kuunhubでオンジンの動画を検索する。

 そして、検索条件に女性コラボと入力した。

「さ、ここに映っているタイプの女の子を探そう」

 長四郎はそう言って被害者女性の写真を机に並べ始める。

 それから、男三人組で議論を交わし始めたのだった。

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