大物-5

 翌日、森下邸の構造を知るために長四郎は、知り合いの知り合いのフリーライターに接触する為に秋葉原の電気街に来ていた。

 長四郎は電気街を散策しながら、そのフリーライターを捜していると「あんたか? 俺に聞きたい事がある。探偵ってのは?」そう背後から声をかけられた。

「Yes.」とだけ返事をして振り返ると、ひげ面の恰幅の良い男が立っていた。

「じゃ、ここで話す内容じゃないんで場所を移しましょうか」

 長四郎は男に向かってそう告げ、場所をメイド喫茶へと移した。

 メイドから一通りの説明を受けた二人はドリンクを注文し、本題に入る。

「探偵さん。森下衆男を追っているんだって? やめときな。死ぬことになるぜ」

「という事は、過去に死んだ方が大勢いるってことですか」

「ああ」

 フリーライターがそう答えるとメイドが注文したドリンクを持ってきた。

「ご主人様、お待たせしましたぁ~」メイドAが机の上にドリンクを置いて行く。

「では、ご主人様達、おいしくなぁ~れのおまじないをかけますので、私たちの後に続けておまじないしてくださいね」

「はぁ~い」

「はい!!」

 メイドBにそう言われた男二人、元気よく返事をする。

「では、行きますね。おいしくなぁ~れ、萌え萌えキュ~ン!!」

「おいしくなぁ~れ、萌え萌えキュ~ン!!」

 メイドA,Bに続いて長四郎とフリーライターは全力でおまじないをかける。

「では、私たちは失礼しまぁ~す」

「はぁ~い」

 男二人は鼻を伸ばしたまま返事をし、メイド達はその場から去っていった。

「あんたも物好きだな」フリーライターは顔をニヤつかせながら長四郎に言うと「あんたもな」と返す。

「話を戻そう。死ぬ覚悟はあるのか?」

「運が悪きゃりゃ死ぬだけさ」

 長四郎はそう言って、オレンジジュースを流し込む。

「良いだろう。お前の運にかけるとしよう。それで、何が知りたい?」

「森下邸の間取り。そして、警備システム」

「何だ。泥棒でもするのか?」

「滅相もない。救出作戦ってところ、礼金は弾む」

「分かった。少し時間をくれ」

「OK. ここに連絡してくれ」

 長四郎は名刺を机に置き、フリーライターの前に差し出す。

「じゃ、宜しく」

 長四郎はそう言い、メイド達に一礼をしてフリーライターが楽しむはずであろうゲーム代込みの代金を支払って、店を出て行く。

 次にレンタカーを借りて、森下邸へと向かった。

 今度は森下邸から数百メートル離れた先に車を停車させ、張り込みに気づかれないようにし森下邸に出入りする業者や人を調べることにした。

 音々の調査に関しては、警視庁の刑事達に調べてもらう手筈になっていた。

「さ、始めますか!」

 長四郎は顔をパンパンっと叩き気合いを入れ、車を降車する。

 そこから秘密兵器を取り出し、セッティングを開始した。

 そんな頃、燐は普段通り学校生活を送っていた。はずだった。

 異変に気づいたのは、体育の授業であった。

 校庭でクラスメイトとサッカーを楽しんでいたが、その時に不穏な視線を感じゴールを目指して蹴っていたサッカーボールをその視線の方へと蹴り上げる。

 サッカーボールは視線の先に飛んで行くが、監視者の姿はなかった。

「ごめぇ~ん!」

 てへぺろコツーンしながら、同じチームのクラスメイトに謝罪する燐は自分にも尾行がつけられているのか、そう不安に駆られるのだった。

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