結社-8

 長四郎達四人は、難波塚児が殺害された現場へと来た。

「ここで、死んでたんだ」燐は辺りをきょろきょろと見回しながら、事件の手掛かりになりそうな物を探す。

「そう。少し目を離してしまってな。その間にやられたらしい」

「なんで、目を離したの?」

「それはぁ~ 疲れてたのもあるしぃ~ 人混みの中で見失ったのぉ~ そんでぇ~ 浮気相手であろう女も見失ったのぉ~」

「その女の正体は掴めているんですか?」絢巡査長の質問に首を振り、否定する長四郎。

「そうですか。女の写真は?」

 長四郎は黙ったままスマホを取り出し、塚児と一緒に映った女の写真を見せた。

 塚児と腕を組み楽しそうに歩いている所の写真であった。

「この女性ですか?」絢巡査長の問いかけに長四郎は黙って頷く。

 塚児と共に歩いている女はロングの髪で、童顔な顔が特徴の女であった。

「へぇ~ これが浮気相手」燐は興味深い顔をして、長四郎のスマホの写真を覗き込む。

「それより、この女が組織に関わっているって事ありません?」

「絢ちゃん。あたしもそれを言おうと思っとったばい」

 一川警部は嬉しそうに絢巡査長の意見に賛同する。

「じゃあ、それは、そっちで調べてください」

「はいよ。長さんはどうすると?」

「奥さんの方を」

『なんで、奥さん?」

 命捜班の二人が声を揃えて質問する。

「実は、かくかくしかじかで」

「成程。かくかくしかじかね。成程。成程」

「いや、分かるんかい!」

 納得する一川警部にツッコミを入れる燐。

「あたしと長さんの長い付き合いやけんね。分かると」

「一川さん。BL物じゃないから、そう言い方しないで」

「ま、兎に角、私達は浮気相手を。長さん達は、奥さんの方を追うってことで。何か情報があれば即共有ということで」

 絢巡査長のこの提案に、残りの三人は「ラジャー」と敬礼しながら返事をする。

 こうして、一川警部達と別れた長四郎と燐は塚児の妻・桑子が居る葬儀場へと移動する電車の中で、燐は事件について長四郎に質問をしていた。

「ねぇ、犯人は組織の人間だと思う?」

「おう」

「あんた的にはさ、奥さんの桑子さんが組織の人間だって思っているの?」

「おう」

「警察内部にもデモンみたいな奴がいるって思っている?」

「おう」

「ねぇ、さっきから空返事ばっかりじゃん。何、考えてんの?」

「色々」

「色々ねぇ~」

 燐は不服そうに窓の向こうの景色を見る。

「うん? ああ、いや、ダメだ」

「何がダメなの?」

 燐の問いにも答えず、長四郎はぶつぶつと呟きながら考えごとを張り巡らされているのはよく分かったので、燐は質問をぶつけるのを止めた。

 そして、ぶつぶつと呟く長四郎を気味悪がり、乗客達は長四郎と燐から距離を取り始めるのだった。

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