結社-9

 一川警部と絢巡査長の二人は、難波塚児殺害現場周辺で聞き込みを行っていた。

 長四郎から提供された写真を基に、浮気相手の動向を追おうとしていた。

「ありがとうございました」

 絢巡査長はコンビニ店員に頭を下げて礼を言い、店を出ると別の店で聞き込みを行っていた一川警部が待っていた。

「あ、一川さん。防犯カメラ映像入手できました」

「ご苦労さん」

「でも、これ所轄署が入手しているんじゃないんですか?」

「いやね、絢ちゃん。あたしもそう思って問い合わせたんよ。若い生意気刑事に。そしたら、そんなもんありゃしないだって」

「マジですか」

「マジです。まぁ、署には抗議しといたけん。許しといて」

「にしても、杜撰ですよね?」

「うん」

「上から今回の事件を調べちゃいけないとかでもあるんですかね?」

「それだと、何か作為的な物を感じるよねぇ~」

 一川警部はいつも通り、頭をペチペチと叩き何かを思案する。

「絢ちゃん。悪いんやけどこれから所轄署行ってきてそれについて調べてきてくれんね? あたしは、もう少し聞き込み続けるけん」

「分かりました」

 絢巡査長はすぐ様、所轄署に向かった。

 刑事課に行くと、澤が絢巡査長の応対をした。

「へぇ~ あんたがあのハゲ刑事の部下なんだ」

 澤はそう言いながら、絢巡査長を嘗め回すように見る。

「そうですけど、何か?」

「あ、いや、なんでも」と言う澤の顔は、ほくそ笑んでいた。

「それで、難波塚児さんの捜査状況を聞きに来ました」

「あれ、おかしいな。ハゲ刑事に報告したはずなんだけど」

「そのハゲ刑事が、杜撰な捜査しているって言うから来たんですけど」

「杜撰って。捜査は行っているんですよ」

「そうですか。でも、上から踏み込んだ捜査をしないように止められているんじゃないですか?」

 絢巡査長の問いかけに、澤はバツが悪そうな顔をしながら「そんな訳ないだろ」と答える。

「そうですか。じゃあ、今現在までの捜査状況を報告書にまとめてください」

「分かりました」面倒くさそうに答える澤。

「明日の朝には提出してくださいね」

「明日の朝?」

「はい。お願いしまぁ~す」

 絢巡査長は勝ち誇ったような顔をして、刑事課を後にした。

 一方、一川警部の方はというと聞き込みを続けていた。

 そして、食事を取りながら、個人飲食店で聞き込みを行っていると有益な情報を得ていた。

「ほう、事件の日に変な女性客が来たとですか?」

 一川警部の問いに店の女将は「そうなのよ」と嬉しそうに答える。

「どげん感じやったとですか?」

「何かから逃げるような感じで店に入ってきてね」

「逃げるように」そう答えながら、とんかつを頬張る。

「それでね。水だけ飲んで帰って行ったの。私、ビックリしちゃってね」

「そうですね。その女性ってこん人ですか?」

 一川警部は塚児の浮気相手の写真を見せる

「そう! この子!!」と嬉しそうに答えた。

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